第141話・冷酷非道なジーパンレディース達
❝ガァ~ッべッ!❞
彫りの深い美人で中東系の女性が思いっきり喉を鳴らしながら男の顔に唾を引っ掛けた。
「イェ~!」
❝ヴァスッ!ボコッ!バコッ!❞
ひと際大きな痰唾で濡れた男の顔に、強烈な女のブーツ蹴りが打ち込まれる。
女性が履いている茶色いロングブーツは泥で汚れていたが男の血で更にベトベトになっていた。
そんな光景をニヤつきながら見つめる周りの女性達。
美しいブロンドヘアーの女性も喉を鳴らしながら痰唾を吐き掛けた。
❝カァ~!ぺッぺッ!❞
そして黒いロングブーツで男の右手を踏みにじった。
ぶっといヒールが親指と人差し指を踏み砕き血が飛び散る。
同じようなリンチがその隣でも展開し、3人のナチどもがレディース達に囲まれていたぶられていた。
❝ドスッ!ドスッ!ヴォコッ!❞
女達が打ち込むブーツ蹴りの鈍い音が響き渡る。
そんな私刑を横目に見ながらリリアと残りのレディース達は指令室内を破壊し始めた。
コンピューターや制御盤を鉄パイプやイスで殴りつけて破壊し、書類棚をひっくり返した。
20人のレディース達が暴れれば部屋の中はメチャクチャになる。
わたし達はそんな彼女達の破壊活動を見守るだけだった。
「アイツらどうなったかなあ?」
と言って美由紀がリンチの現場に向かう。
わたし達も興味本位でついて行く。
入口付近にやって来ると若い女性達が飛び跳ねている。
足元に転がる3人の男達は散々蹴りつけられて息も絶え絶えだった。
そんな彼らの腹部や胸に女達のストンピングが炸裂する。
❝ヴシュ!ヴシュ!ヴァス!❞
男達の着ている黒い制服は女達の靴跡で真っ白に汚れ、胸の辺りに付いている勲章や略章はへしゃげてズタズタになっていた。
更に両手は踏み砕かれてペシャンコに潰れ、鼻は陥没し両目はつま先蹴りで潰されていた。
口からはどす黒い血が流れている。
❝グリッ!グリッ!❞
そんな哀れな男の口にアジア系の女が5cm幅で6cm丈のヒールを無理矢理ねじ込み始めた。
彼女の履いているダークブラウンのロングブーツは相当履き込んでいるらしく、所々が変色しソールの部分はどす黒く汚れていた。
何事かをつぶやきながら足元を見つめつつ、ヒールを男の口の中に突っ込んで体重を掛け始めた。
男の前歯はヒールを打ち込んだ際にへし折られていた。
「ヘーイ、ヘーイ!」
と叫びながら“グリグリ”と彼女のヒールが喰い込んでいく。
やがて泥にまみれた女のヒールは男の喉の奥に突き刺さった状態になった。
それでも止めない彼女。
突然苦しみ始めた男はすぐに動かなくなった。
どうやら窒息死したらしい。
「フン!」
と言って死んだ男の顔を軽く踏みにじってその場を離れる彼女。
隣でも女達のストンピングの集中打によって全身の骨を踏み砕かれた男がグッタリとして動かなくなっていた。
最後に残った男は、女達の執拗な踏みにじり責めを受けていたが、まだ息はあった。
そんな時だった。
3人のレディース達がガソリンと思しき液体の入ったジュリカンを持ってやって来た。
どうやらボイラー室を見つけてそこから調達してきたらしい。
中東系の美人がそのジュリカンを受け取ると、まだ息のあった男に掛け始めた。
❝トクトクトクトク!❞
「Die !(死ね)」
と言ってライターで火をつけた。
❝ジュヴォ!❞
全身火だるまになって悶え苦しむ男を見て笑いが止まらないレディース達。
さすがに目の前で人が焼き殺されるのを見て気持ちがいいとは思わないわたし達。
そんな修羅場を気にする事もなく、リリア達は部屋中にガソリンを撒き始めていた。
「みんな、引き上げるわよ!」とリリアが英語で指示するのと同時に先ほどの中東系の女が火をつけた。
❝ジュヴォ~!!❞
凄まじい勢いで炎が噴き上がり、わたし達は急いでその場から立ち去った。
メラメラと火が指令室をあっと言う間に覆い尽くした。
もはやこの施設内に生き残っているナチはいなかったろう。
この施設から隣の建物を通って廊下を進むわたし達。
正面玄関が近づくにつれて腐敗臭が漂ってきた。
あの女性達の死体が安置されていた部屋である。
開いた扉からわたし達が惨殺した兵士の遺体が見えた。
「わたし達が仇を取ってやったの。」
と美由紀が言う。
その言葉を聞いて微笑むリリアだった。
収容所の外に出るとコンクリートの建物が黒煙に包まれていた。
そんな中リリアがゆっくりとした口調で話し始めた。
「驚いたでしょ!わたし達の事。」
「それにわたし達の格好も。」
「何だかわたし達と同じでちょっとびっくりしたわ。」
と応えるわたし。
「実はわたし達にとって、あなた達ジーパンレディーは特別な存在なんです。」
「あなた達がどんな世界からやって来たのかは知らないけど・・。」
「こちらの世界では70年前に突然現れた巨大なジーパンレディーによって町が壊滅したのは有名な話なんです。」
「それから10年前と30年前にも突然現れて、ナチスの町を次々と破壊しました。」
「それって、あなた達ですよね?」
「ナチを相手に大暴れするジーパンレディーにみんな心酔しているんです。」
「あなた達ジーパンレディーは、わたし達にとっては本当に憧れの的なんです。」
「だからみんなあなた達を真似して、ジーパンにロングブーツインスタイルなんですよ。」
「ナチスに抵抗するレディース達が、このゲルマニアの中で武装蜂起して闘っているんです。」
リリアの口から次々に飛び出す信じられないような話にリリンズのメンバーよりも、むしろわたしの方が釘付け状態だった。