第138話・虐殺された人達の為に
わたし達が向かう先には8m位の高さで、幅40m位のコンクリート製の建物があった。
更に向こう側にも同じサイズの建物が併設されていた。
正面には頑丈そうな鉄扉がある。
❝ギ~!❞
中から2人の黒服を着た兵士が出てきた。
「捕まえて!」と正美が叫ぶ。
彼らがわたし達に気付いて銃を構えるより先に、奈美江と美由紀が2人を羽交い絞めにした。
「おとなしくしろ!」
美由紀が叫びながら力づくで男をねじ伏せる。
「コイツらに案内させるわ。」と言って正美が銃を突きつけた。
観念したのか抵抗を止めて両手を挙げる彼ら。
そんな彼らを先頭に建物の中に入ると、いきなり強烈な悪臭が鼻を衝く。
「ウッ!クサッ!何このニオイ!」
思わず美由紀が叫ぶ。
掃除をしていない公衆便所のような強いアンモニア臭と腐敗臭が混じったような異臭だった。
どうやらこの悪臭は入口入ってすぐ右手の部屋から漂っているようだった。
「そこを開けなさい!」と強い口調で捕虜に命令する正美。
銃口に押されて扉を開けると更に強烈な悪臭がわたし達を包み込む。
みんな手で鼻と口を抑えながら中に入ると、そこは阿鼻叫喚の世界だった。
「酷い!酷すぎる!」と思わず叫ぶ正美。
50㎡ほどの部屋の床には10体の遺体が並べられていた。
どの遺体も全裸で激しく損傷し、その半数は腐敗が進み紫色に変色していた。
「コノ~!」
❝ドスッ!ヴァゴ!ヴァス!❞
「コノヤロ~!」
❝ボコッ!ヴォコ!ヴォス!❞
いきなり捕虜の1人を殴り倒した美由紀。
倒れざまにブーツ蹴りを何度も喰らわす。
遺体が全員女性だった事が彼女を激高させた。
そんな光景を目の当たりにしたもう一人が逃げ出そうとした。
「待て~!」
「逃げんじゃねえよ!」
奈美江がすかさず兵士の頭を掴んで押し倒した。
「覚悟しろ!」
❝ヴァスッ!ヴァスッ!ヴァスッ!❞
普段優しい彼女も怒りに任せて蹴りを打ち込む。
「わたしもっ!」と言いながらわたしも奈美江と一緒に足蹴りに加わる。
「わたしにもやらせて!」
と言いながら美由紀が蹴りを打ち込んでいた男の頭を思いっきり蹴り飛ばす正美。
「エイッ!」
❝ブシュッ~!❞
あまりにも強烈な正美のキックに、兵士の首がヘルメットごと吹っ飛んだ。
そして辺り一面が血の海になった。
そんな光景を見ながらハッと我に返ったわたし。
足元を見ると、わたしと奈美江に全身を踏み砕かれた兵士の遺体が転がっていた。
遺体がまとっている黒服は、わたし達の付けたブーツの靴跡で真っ白になっていた。
ブーツに付着した鮮血を首無し遺体のジャケットで拭う正美。
「こうなったらナチの奴らを皆殺しにするわよ!」
と怒り心頭の正美が宣言する。
全員が顔を見合わせながらうなずいた。
遺体安置室を出たわたし達は更に奥へと進む。
❝ガチャン!❞
❝ババババババババババッ!❞
隣の部屋を開けるのと同時に、中に機関銃を撃ちまくる正美。
電気をつけると潜んでいた兵士3名がハチの巣になっていた。
更に隣の部屋を開けて奪い取った手榴弾を投げ込む奈美江。
❝ヴォーン!❞
凄まじい粉塵が巻き起こる。
中を見ると若い兵士2人が無残な姿で死んでいた。
「いい気味!」
「もっと殺さなきゃ。」と奈美江。
更に進んでいくと観音開きの鉄扉があった。
❝ギィ~!❞
躊躇なく扉を開ける美由紀。
すると中は武器庫だった。
「ウワァ~!すっごい!」
と美由紀が中の銃器類を物色し始める。
弾薬箱の脇に三脚に載った重機関銃があった。
「これ、試してみたい!」
そういうと三脚ごと軽々と持ち上げて廊下に出る彼女。
ちょうどその時廊下の先から足音が聞こえてきた。
❝バタバタバタバタ!❞
完全武装の兵士達がこちらにやって来るのが見えた瞬間だった。
「オリャ~!」
❝ズドドドドドドドドドッ!❞
美由紀が据え付けた重機関銃が火を噴いた。
「死ね~!コノ~!」
❝ズドドドドドドドドドッ!❞
走って来た守備兵達はバタバタと撃ち殺されて倒れていく。
折り重なる死体の上に更に死体が積み上がっていく。
❝ズドドドドドドドドドッ!❞
撃ち倒した死体にも念入りに銃弾を撃ち込む彼女。
瞬く間に十数名の死体の山を築いた。
「あ~、スッキリした。」
と屈託なく笑う美由紀。
「わたしもやりたかった~!」
と奈美江が不満をぶちまける。
「あなたの分もまだいるわよ。」
となだめる正美だった。
わたし達は死んだ兵士達の死体から手榴弾をできるだけたくさん奪い取った。
そして手頃な袋に入れて突き進む。
❝ヴォヴォーン!❞
❝ヴァコーン❞
❝バヴォーン!❞
扉を開ける度にお構いなしに手榴弾を投げ込む奈美江と美由紀。
中に敵がいようがいまいが、とにかく全てを破壊したいわたし達。
恐らく囚人達はかなり厳重な監禁場所にいるはずだ。
それ以外の部屋は全てぶっ壊すつもりだった。
❝ガチャッ!❞
ドアを開けると中は通信室でレシーバーをした2人の通信兵が両手を挙げて立ち上がった。
そこにマシンガンを構えながら入っていく正美。
❝バババッ!❞
❝ババッ!❞
降伏している兵士の頭に銃口を押し付けると、お構いなしに引き金を引く彼女。
たった今頭を撃ち抜かれた可哀想な2人の兵士が床に転がっている。
「もう、容赦しないんだから!」
「ぺッ!」
と撃ち殺した兵士に唾を吐き掛けながらつぶやく彼女。
先程の死体置き場を境にすっかり人格が変わってしまったようだった。