第135話・収容所で大暴れのわたし達!
2人のパトロール兵を倒して正面ゲートに向かうわたし達。
私服のわたし以外は制服姿のリリンズ3人だから、遠目にはそれ程怪しい雰囲気はなかった。
「このまま、ゲートまで行くんですか?」
と少し不安そうな奈美江が言った。
「ドイツ人は制服姿に弱いから、わたしが捕虜のフリをするわ。」
「正美さんはわたしに銃を突き付けて下さい。」
わたしの指示に従って、正美がマシンガンを構えながらわたしの背後に立った。
「でもわたし達、ジーパンですよ?」
と美由紀が怪訝そうな顔で聞く。
「遠目にはわからないわよ!」
と言って不安そうな2人を黙らせる。
さすがに、こちらの世界の兵士達より少し大きいサイズだとはいえ、銃で撃たれたら、という不安感がリリンズの3人に万延していた。
リーダー格の正美だけが弱音を吐く訳にはいかないので、キリッとした表情だったが、内心はきっと不安なのだろう。
先程2人の若い兵士を殺させなかったのも、そんな心理が働いていたのかもしれない。
しばらく歩くと徐々にゲートが見えてきた。
ゲート脇の歩哨小屋に3名。
その脇の土のうを積んだ機銃陣地に3名の兵士がいた。
そんな中、わたしが両手を挙げて、リリンズの3人が銃を構えて堂々とゲートに向かって歩いていた。
誰も怪しいなんて思わず、遠目に見ても女子4人だから、ゲートのドイツ兵達もこちらを向いてニヤついているのがすぐに分かった。
「チッ!アイツら、思い知らせてやる。」と舌打ちする美由紀。
ブルーのジャケットにネイビーブルーのジーンズ、白いヘルメットを被りシルバーのロング手袋とロングブーツをまとった女子3人組は、どこかの治安部隊員のように見えたのかもしれない。
わたしは、いつものように濃い赤系のチェック柄のシャツに、手にはアイボリーホワイトの革製ロング手袋にジーパンにダークブラウンのロングブーツ姿だった。
ゲートから10m位の所までやってくると、歩哨小屋の兵士が何やらこちらに叫び始めた。
ニヤついた顔をしているから大方 ❝お前らどこから来た?❞ みたいなことを言っているのだろう。
機銃座の3名も土のうの上に座った状態でこちらを見て笑っている。
「わたしと正美さんは小屋の3人を、奈美江さん達は機銃陣地の3人をやっつけて!」
と小声で指示するわたし。
3人ともわずかに、それでいてしっかりとうなずいた。
正面ゲート前にやって来ると、ニヤついた3人と更に機銃陣地の3人までもがわたし達の方に向かって近づいてくる。
すると彼らの表情がみるみる内に引きつりだした。
遠目にはよく分からなかったようだが、明らかにわたし達のサイズが一回り大きいと認識したようだった。
1人の兵士が銃に手を掛けようとした瞬間だった。
「今よ!」
わたしの合図でドイツ兵どもに襲い掛かるわたし達。
「コノヤロ~!」
❝ドスッ!ヴァゴッ!❞
いきなり長身の美由紀が手前の兵士に回し蹴りを浴びせると、奈美江が左手の兵士の頭を両手で掴んで腹に強烈な膝蹴りをブッ込んだ。
放心状態のもう一人の頭にも美由紀のブーツ蹴りがさく裂する。
「オリャ~!」
❝パコーン!❞
ヘルメットが吹っ飛んで弾き飛ばされる兵士。
わたしは近寄って来た兵士の頭をロング手袋をはめた手で思いっきりひっぱたいてやった。
「オラッ!」
❝バシーン!❞
正美も2人の兵士のそれぞれの頭を左右の手で掴みながら頭同士を打ち付けた。
「え~い!」
❝ガシャッ!❞
ヘルメットがへしゃげ曲がって倒れる2人。
わたしがひっぱたいた兵士も2m位飛ばされた。
どうもわたし達の腕力は尋常ではないらしい。
一瞬で気を失った歩哨小屋の3人に機銃陣地の3名。
仰向けに倒れた1人の兵士にストンピングを始めた美由紀。
「コノッ!コノッ!コノッ!」
❝ヴァスッ!ヴァスッ!ヴァスッ!❞
40cm以上の美由紀のブーツが兵士の体に無慈悲に打ち込まれる。
先程のニヤついた表情が余程彼女のカンに障ったのだろう。
「ホント、ムカつく!」
❝ドスッ!ドスッ!ドスッ!❞
「その辺で止めて!」
正美が止めたが遅かった。
男の体は完全に踏み砕かれてグシャグシャになっていた。
鮮血にまみれる美由紀のシルバーブーツ。
ゲートから中に入ろうとしたわたし達を強烈なライトが照らした。
ゲートから20m程の所に建っている監視塔からサーチライトで照らされたのだ。
❝ドドドドドドドドッ!❞
機銃座の機関銃が火を噴く。
とっさに機銃にしがみついた奈美江が監視塔に向かって発砲したのだ。
サーチライトが砕け散り、監視塔の兵士2人が撃ち落されて地面に叩きつけられた。
「やったね!」とガッツポーズの奈美江。
「わたし、人を撃ち殺したの初めて!」と興奮気味に叫ぶ彼女。
❝ウ~~、ウ~~!❞
収容所内に警報が鳴り響く。
「奈美江はそこで援護して!」
と正美が指示する。
わたし達はそれぞれ奪い取ったマシンガンとマガジンケースを手に、手前の収容棟に向かって走り出していた。
向こうの方から10名の警備兵がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
次の瞬間
❝ババババババババッ!❞
彼らに向かって正美のマシンガンが火を噴く。
半数以上の兵士が最初の一撃でバタバタとなぎ倒された。
「もう、やるしかないわ!」
正美の一言で、わたしと美由紀の機関銃もお構いなしに火を噴いた。
❝ババババババババッ!❞
残りの兵士達もなぎ倒され、収容棟から出てきた兵士3人も葬り去った。
こうなったら、思いっきり暴れるしかない。