第132話・わたし達の街破壊を味わうがいい!
わたし達から見てわずか7~8m四方に広がる港町。
町のこちら側の軍事施設は、既にシルバーリリンズによって破壊し尽くされていた。
そんな街中も、すでにわたし達が通った後やナチス本部ビル周辺はメチャメチャになっていた。
犠牲者を出さないように配慮してきた正美だったが、強大な破壊力を持つ彼女達に歯向かう非力な小人どもでさえも、自分たちを馬鹿にしていると思い始めていた。
「この町どうします?」と美由紀が尋ねる。
❝ジュリッ!❞
足元に建っていた教会をいきなり踏みにじった正美。
「今度はこの町を徹底的にぶっ壊すわよ。」と言った。
「住民達は既に避難して、誰もいないはずよ。」とわたし。
「わたし達をオンナだと思って甘く見てるコイツらに、教えてやるのよ。」と正美が強い口調で言った。
「ホントですよね。こんなちっちゃな戦車なんか並べちゃって。」
「わたし達の事、馬鹿にしてますよね。」と奈美江が言う。
「わたし達、オンナを怒らせるとコワいってこと、教えてやりましょう!」と美由紀が続けた。
「こうなったら、わたし達で徹底的に踏み潰してやるのよ!」
「街の端から行進していきましょ。」と正美が指示。
めぼしいビルも5~6階建て位のものが立ち並んでいる程度のこじんまりとした港町の前に、銀色に輝く巨大なロングブーツが6本とわたしのアイボリー系レインブーツが2本並んでいた。
「みんなで、歌いながら行進しましょ!」とわたし。
「わたしに合わせて下さい。」
そういうと、わたしはいつものようにリンリンソングを歌い始めた。
「ハロー!ダーリン!」
「♪イェ~イ!」
「♪りんりんりりん♪りんりんりりんりん♪巨大なわ~たし達♪!イェイ!《ズシ~ン》!」
「♪りんりんりりん♪りんりんりりんりん♪ジ~パン女子のわ~たし達♪!イェイ!《ズシ~ン》!」
「♪りんりんりりん♪りんりんりりんりん♪わたし達はリリンズよ!♪イェイ!《ズシ~ン》!」
この有名な歌はリリンズのメンバーを勢いづかせた。
「わたし、この歌知ってます!」と奈美恵。
「わたしも!」と美由紀。
❝ズヴォーン!ズッボーン!ズッシーン!❞
4人の巨大女子が♪りんりんりりん♪と歌いながら、街を襲い始めた。
膝を高くあげて、足元の建物を手当たり次第に踏み潰す巨大女子。
自分の受け持ちエリアは大体2m分位だ。
だから♪リンリン♪と口ずさみながらまず手前のブロックを踏み潰してから、両サイドの残ったエリアはなぎ払うようにブーツを滑らせる。
「♪街にいきなり現れた!<ィェィ、ィェィ>♪」
「♪かなり巨大なわたし達!<ィェィ、ィェィ>♪」
「♪使い古しのジーパンに!<ィェィ、ィェィ>♪」
「♪ロングブーツのわたし達!<ィェィ、ィェィ>♪」
歌を続けるわたし、他のメンバーは♪りんりんりりん♪と歌いながら壊しまくっている。
❝ズヴォッ!グジュッ!ヴォヴォーン!❞
4人の巨大女子の黄色い歌声に包まれながら、街は焦土と化していく。
もはやわたし達を攻撃してくるドイツ軍部隊もいない。
正に、わたし達のやりたい放題の状態だった。
足元をよ~く見てみると、避難したと思っていた一般住民達が逃げ惑っているのがわかった。
暴れ慣れているわたしは、常に冷静な眼差しで細かい部分を見ることができる。
しかし、リリンズのメンバーは正美も含めてそんな事に全く気付く事もなく、容赦のない破壊を続けていた。
❝ヴォゴッ!ヴォコッ!❞
❝ジュリジュリッ!❞
❝ジュヴォーン!ズボーン!❞
「わたし達って甘くないの!」
❝ジュッガーン!❞
「だからわたしは、こうするの!」
❝ヴァッゴーン!❞
正美が叫びながら商店街を踏み潰し始めた。
銀色に光る美しいシルバーロングブーツに包まれた美由紀の美脚が、住宅街を粉々に踏み砕きながら暴れ回る。
❝ジュヴッ!ジュブッ!ズリズリッ!❞
ガソリンスタンドに右足を突っ込んだ奈美江が容赦なく蹴り上げる。
「リンリン、キ~ック!エイ!」
❝ジュヴォ~!パラパラパラ!❞
給油設備をにじり潰したブーツ脚はレストハウスを蹴散らしながら空中高く舞い上がる。
スタンドのガソリンが爆発して彼女の足元は火の海になった。
「やったね!」
燃え盛る建物を蹴り上げては残骸が飛び散り、火は更に広がっていく。
「これがわたし達リリンズの実力だってこと、わかったかよ!」
裏返った声でシャウトする奈美江。
わたしも足元をチョロチョロと逃げ惑う小人達をひと思いに踏み殺しながら破壊を続ける。
街の半分以上を踏み荒らしながら、わたし達の街破壊も最終段階に入っていた。
「最後にみんなで気合を入れてトドメを刺すわよ!」
「それじゃあ、わたしが合図を出すわね。」と正美が言った。
「ナチを滅ぼす愛と正義の女の戦士は~!」
「せ~の!」
「わたし達っ!」
❝ズッヴォーン!❞
「わたし達っ!」
❝ズッヴァーン!❞
「わたし達っ!」
❝ヴァッゴーン!❞
「わたし達っ!」
❝ズッガーン!❞
正美の合図に合わせて、わたし達は渾身の力を込めて足元の家々を両足で踏み砕いた。
全員が絶叫に近い声で「わたし達!」と叫びながらである。
こうしてわたし達による街破壊はわずか10分程で終わった。
振り返ると、原型を留めている建物は全く無く無数の瓦礫が散らばり、あちこちで火災が起こっていた。
「さっき律子さんが歌っていた曲って、フィンガーファイブですよね?」と正美が聞いてきた。
「そうなの、わたしと友達が暴れる時の定番曲なの。」と応えるわたし。
「じゃあ、わたし達リリンズも何か替え歌でも作ろうかしら。」と正美。
「面白そう、歌いながらぶっ壊すのって気分爽快って感じです。」と美由紀。
「それじゃあ、次回の任務までにわたし達で考えておきますね。」と奈美江が言った。
今回は密度の濃い破壊だった。
最後はわたしも加わって徹底的に暴れたから、この港町は文字通り消滅した。
もはや正美の中から小人達への優しさは消え失せていた。