第130話・徹底的に踏み潰すわ!
❝グシャッ!グシャッ!グチュッ!グチュッ!❞
❝ズリズリッ!ジュリリ~!❞
「エイ!エイ!エ~イ!」
「コノ~!ソレ~!これでもかっ!」
足元に展開する機甲部隊を徹底的に踏み潰す正美。
道路には何度も踏みつけられた跡が残り、そこに並んでいた装甲車両は舐めるようにすり潰されて消滅していた。
もちろん、散り散りになった鉄屑や破片に混じって大勢の兵士達の踏み千切られた遺体の肉片も無数に散らばっていた。
装甲部隊を完全に全滅させた彼女は要塞化された山に向かって足蹴りを始めた。
❝ズヴォーン!ジュヴォーン!❞
ブーツのヒール部分に全体重を掛けながら蹴り込んでいく。
斜面に設営された高射砲陣地やトーチカの1つ1つを葬り去っていく彼女。
ブーツのかかとが打ち込まれる度に、対空陣地は周りの木々もろとも踏み砕かれて山の地肌にめり込んでいく。
あとに残されたのは長さ24m、深さ5m以上にも及ぶ巨大な正美の靴底跡だった。
そんな靴跡が山間部にボコボコと刻みつけられていく。
「山全体をわたしの体重で崩してやろうかしら。」
そういいながら山の斜面に足を掛けてよじ登り始めた。
1m程の小さな山だから難なく頂上で仁王立ちになった彼女。
足元には司令部と思しきコンクリート製の建物やアンテナ群、機銃陣地があった。
「よ~し、これがわたしの力だって思い知るがいい!」
❝ジュヴォーン!!❞
「それっ!」
❝ジュッヴォーン!!!❞
正美が両足を揃えながらジャンプして降り立った瞬間、守備隊司令部は巨大な銀色のブーツソールに呑み込まれて地中深くに消え去った。
更に何度も何度もブーツを履いた足を揃えては飛び跳ねる彼女。
山の頂上付近は踏み崩されて変形し、まるで火山が噴火したように凄まじい土煙が辺り一面を覆い尽くしていた。
「ちょっと汚れちゃったけど、ま、いっかァ。」
そういって土埃で汚れたジーパンをパンパンと手ではたき落とす彼女。
もうすでにこの山にあったあらゆる施設は麓のブンカーを除いて完全に踏み潰されて踏み固められていた。
そして、うっそうとした木々もその殆どがブーツのソール部分によって削り取られて土色の地肌がむき出しの状態になっていた。
「ちょっとやり過ぎちゃったけど、ま、いっかァ!」
踏み固めて靴跡だらけになった足元をよく見ると、山の中を行き来するためのトンネルや通路が張り巡らされていることに気付いた。
「何よこれ、もっと壊さなきゃ。」
そういうと今度はブーツのつま先で通路をえぐり取るようにほじくり返し始めた。
シルバーブーツのトゥがグリグリと地中にもぐり込んでいく。
まるでアリの巣でも壊すように、つま先を突き立てて要塞内部をにじり潰す彼女。
「そろそろこっちはこのくらいでいいかな。」
山の上半分をえぐり返して無残な姿に変えた正美。
今度は山の麓から20cmほど突き出した係留ブンカーが並ぶ潜水艦基地に向かって慎重に降り始めた。
❝ジュヴ~!ジュヴォッ!ズヴォッ!❞
そして軽くブンカーの上に足を掛けて海面に降り立った。
❝ヴォシャーン!ヴシャーン!❞
一瞬だったが正美が体重を掛けて乗っかったブンカーは崩れる事なく持ちこたえた。
そして水深20cm程の海面に立つ正美。
彼女の履いているロングブーツは総丈が45cmもあり、筒先は斜めカットになっている。
だからこの程度の水深ならジーンズを濡らすことなく余裕で歩き回ることができた。
「さっきのわたしのジャンピングでどのくらい壊れたかしら?」
そういいながらかがみ込んでブンカーの内部を覗き込む。
ところが山が変形するほど暴れた割にはブンカー内部は無傷で、しかも各ブンカー内部にはUボートが係留されていた。
「何なのよォ~!全然壊れてないじゃん!」
ひと暴れした後で鼻息を荒くして確認してみるとそれは大きな失望に変わった。
「こうなったら、全部引きずり出してぶっ壊してやる!」
失望は怒りとなって潜水艦基地に向けられた。
手前のブンカーにいきなり手を突っ込んで潜水艦を引っ張り出すと、ブンカーにブーツでストンピングを喰らわした。
❝ジュヴォッ!バチャーン!❞
先程は正美の体重にも一瞬耐えたブンカーだったが、今度は渾身の力で踏みつけられて粉々に砕け散った。
更に隣のブンカーからももう1隻Uボートを引きずり出すと、こちらにもヒール打ちを喰らわした。
「死ね!」
❝ズヴォーン!❞
両手に65cm程のUボートを1隻づつ握りしめている正美。
さながら2本の鉄パイプを持ったレディースのような恰好だ。
彼女から数メートル先の海上で8隻の水雷艇が攻撃準備に入っていた事に彼女は気付いていたのだ。
「虫けらどもめ、絶対に許さない!」
すると水雷艇は一斉に巨大な正美に向かって魚雷を発射した。
高速魚雷が正美のシルバーブーツに向かって来る。
❝ブシューン!ブシャーン!❞
彼女が履いているブーツの筒の部分に命中した各魚雷だったが巨大な白バイお姉さんを怒らせただけだった。
「マジでムカついた!」
「わたしのお気に入りのブーツを汚しやがってェ!」
「舐めんじゃねえよ!」
❝ヴォッシャーン!ヴォッシャーン!❞
❝ズヴォーン!ドッカーン!❞
手に持っていた2隻のUボートをまるでバットのように水雷艇に向かって振り下ろした彼女。
凄まじい水しぶきと共に真っ二つになって爆発炎上する水雷艇。
もちろん艇にヒットしたUボートも無残に折れ曲がり正美が掴んでいる部分はギュッと握り潰されていた。
「さあ、どっからでもかかって来い!」
「わたしが相手だ!」
怒りで我を忘れた正美だった。