第129話・潜水艦基地を全滅させるわたし
❝グシュッ!グシュッ!グシャッ!❞
何度も何度も踏みつける正美。
足元に転がる70cmほどのUボートは完全にペシャンコになっていた。
グレーの艦体にはどす黒い互い違いのライン模様が無数に付いていた。
それは正美が履いているシルバーロングブーツの靴底の跡だった。
「あ~、スッキリした。」
「今度はオマエの番だゾ!」
そういうと隣のUボートをいきなり掴み上げた。
両手でしっかりと艦を握りしめて、艦中央部の突き出した艦橋部分をマジマジと見つめている。
「誰もいないよね。」
そういいながら艦橋部分を右手でガッチリと掴んだ。
「これでもか~!」
❝グチャッ!❞
彼女の強力な握力が艦橋を握りつぶした。
「思った程硬くないんだ。」
そしてそのまま引き千切ろうとしたが中々外れない。
「結構しぶといわねェ、コノォ~!」
❝ジュヴォッ!❞
再度力いっぱい握りしめて引っ張ったら、しぶとかった艦橋もスッポリともげた。
グシャリと潰れた艦橋を投げ捨てると、もげた穴から中を覗き見る彼女。
すると中には大勢の整備兵がいた。
巨大な正美の瞳が大きく開いた穴から中を覗き込む。
「あれだけ暴れたのに、どうして避難しなかったのよ?」
「こうなったら、みんなわたしの為に死んでもらうわ。」
「君たちを逃がす時間なんてないのよ。だから、ごめんなさ~い!」
❝グジュグジュ、グジグジ~!❞
中の乗員に謝罪しつつ、指を無理矢理突っ込んでほじくり返す彼女。
艦内の隔壁を突き破って銀色に輝く手袋の指先が乗員を押しつぶしながらグイグイと侵入し始めた。
ブリッジ下の操舵室をはじめ主要な部分は、あらかた彼女のフィンガーアタックによって引っ掻き回されてグジャグジャになっていた。
「これって、結構快感かも。」
そういって一旦艦内から指を引き抜くと、今度は残った艦首と艦尾の部分をガッチリと握りしめた。
「思い知れ~!イェイ!」
❝ブシュッ!ジュヴォッ!❞
渾身の力を両手に込めて握りしめると、一瞬で押し潰された艦首と艦尾。
それと同時に中の魚雷が内部で爆発を起こした。
❝ヴォヴォーン!❞
「イェ~イ!ちょっとスリリングかも!」
爆発した部分を握りしめていたシルバー手袋が黒く汚れたが全く気にしない彼女だった。
彼女が握りつぶした部分には彼女の指型がくっきりと残り、握りの強力さを物語っていた。
「トドメよ、ソレッ!」
❝ジュヴァッ!❞
殆ど全壊状態の艦の中央部をジーパン膝に叩き付ける彼女。
一瞬でへの字に折れ曲がった艦をまるでブーメランのようにブンカーの方に向かって投げつけた。
❝ジャッヴォーン!❞
❝ゴボゴボゴボゴボ~!❞
ブンカーの手前で待機中だった2隻の水雷艇を巻き添えにしながら海中に沈んでいく哀れなUボート。
「さあ、もっとかかって来い!」
「正義の味方、わたし正美が相手になるわ!」
そう叫びながら山間部の麓にコンクリートで構築されたトンネル状のブンカー基地に向かっていく正美。
約1m程の小高い丘に建設されたこの潜水艦基地はその麓に10基の係留ブンカーを備えていた。
そして山の斜面には機関砲を備えたトーチカや対空砲の陣地が幾つも築かれ、頂上には司令部と思しき建物もあった。
この山全体が完全に要塞化されていた。
正美がドック内で大暴れしている間に戦車や装甲車、歩兵部隊がブンカー脇の道路に集結して巨大な白バイお姉さんを攻撃しようと準備を完了していた。
そんな光景を目の当たりにした彼女は俄然やる気満々になっていた。
「こうなったら、わたしの女子力を思い知らせてやるんだから!」
❝ズヴォ~ン!ズヴォ~ン!ズヴォ~ン!❞
ドイツ軍部隊を驚かすために、わざと膝を叩く上げて大地を踏みしめる彼女。
光輝くシルバーロングブーツが地面に踏み下ろされる度に轟音が響き渡り地面がボッコリと陥没する。
ところがそれでもドイツ軍守備隊は逃げだすどころか正美に向かって照準を合わせ始めていた。
❝バーン!バーン!ババババババッ!❞
ドイツ軍の一斉射撃が始まった。
オレンジ色の無数の砲火が彼女に向かって降り注ぐ。
ところが彼らの集中砲撃も正美のジーパンやブルーのジャケットをわずかに黒く汚す程度で全く効力が無かった。
「どう?わかったでしょ。」
「わたしにはそんなものは通用しないの。」
「今度はわたしの番だからね!」
「覚悟しなさい!エイッ!」
❝ジュヴォ~ン!ジュヴォ~ン!ズシ~ン!❞
足元の道路に一列に並ぶ機甲部隊を片っ端から踏み潰し始める彼女。
もはや美しく輝いていたシルバーブーツも靴全体が爆発跡や粉塵でどす黒く汚れ始めていた。
それでも小刻みに足を踏み鳴らしながら逃げ惑うドイツ兵どもを巻き添えに、汚れたブーツのソールが徹底的に部隊を踏み荒らしていく。
「これでもか!エ~イ!エ~イ!ソレ~!」
❝ズヴーン!ズヴォーン!ズブーン!❞
彼女の両足が激しく装甲部隊を踏み散らかしている間に、彼女の両手が山間部上方の対空砲陣地に襲い掛かる。
「こんなものォ!許さない!」
「ソリャ~!エ~イ!」
巨大なシルバーロング手袋が対空砲を鷲掴みにしてはグチャリと握りつぶしては放り投げる。
運悪く大砲と一緒に掴まれた砲兵は握りつぶされるか空中高く放り投げられていく。
「こんなもの、まだまだ序の口なんだからねェ!」
守備隊の殲滅に両手両足を使って暴れ回る正美。
可哀想な守備隊が全滅するのは時間の問題だった。