第128話・こうなったら、徹底的に暴れてやる!
重巡に両足で飛び乗った正美。
艦中央部を踏み潰されてモクモクと煙が噴き上がる中、彼女の美脚はぴったりとかかとをつけた状態でスラリと伸びていた。
少し中腰になって破壊を免れた艦橋内部を覗き見る彼女。
彼女の与えた凄まじい衝撃で艦橋内部には多くの兵士が倒れていた。
更に前方の甲板を見ると多くの小人達が倒れたりうずくまったりしながら救助を待っていた。
「ウソでしょ? どうして避難しなかったの?」
「わたしの力、見てなかったのかしら。」
クレーンやトーチカを破壊して自らの圧倒的な力を見せつけたつもりだったが、彼らには全く理解されていなかった。
「随分たくさん殺しちゃったんだ、わたし。」
そう思うと巨大な体に反して気まずい気分になる。
「もうこうなったら、徹底的に暴れてわたしの恐ろしさを思い知らせてやらなきゃ。」
そう心に決めた彼女は吹っ切れたように艦橋を両手でガッチリと掴んだ。
「悪いけど、避難しなかった人はみんな死んでもらいます。」
❝ズヴォーン!❞
黒煙の中でピカピカに光る彼女のシルバーロング手袋が艦橋を引き千切った。
そして、胸に押し当てると抱き締めるように両手で揉みくちゃにし始めた。
❝グシュグシュグジュ~!❞
❝パラパラパラパラ、ガッシャーン!❞
中の乗組員もろとも粉々に粉砕された艦橋は彼女の足元に散り散りバラバラになって降り注いだ。
「わたしの警告を無視した罰よ!」
❝ズゴーン!ズボーン!❞
鉄屑や粉塵でグシャグシャになった艦中央部からゆっくりと前方に進み始めた彼女。
❝グシュッ!ズッゴーン!❞
❝グジュッ!バッゴーン!❞
艦橋が剥ぎ取られて大きく開いた穴にブーツのつま先を突っ込んでは蹴り上げながら進む。
彼女が足を振り上げる度に艦内の部品や甲板が巨大なブーツのヴァンプ部分によって吹き飛ばされ、空中高く舞い上がる。
優しい性格の正美が、今や容赦の微塵も感じられない程の破壊神と化していた。
艦中央部から艦首にかけてグチャグチャに蹴り砕いた彼女。
もう完全に使い物にならない状態だったが艦後方部はまだ無傷の状態だった。
「わたし的にはまだまだ壊し足りないかも。」
そういうと艦首の部分から思いっきりジャンプした。
❝ジュッヴォーン!!❞
今度は艦後方部を全て踏みつけられるように右足のかかとを左足のつま先に付けるようにしながら着地した。
またまた凄まじい轟音と共に後甲板は踏み抜かれて、前のめりになったような姿勢で降り立った彼女。
「やったね!」
艦を粉々に踏み砕いてガッツポーズをする。
艦上構造物を含めて甲板など艦体を覆っていたすべてのものを踏み砕いた彼女。
もはや破壊し尽されて哀れな姿をさらす重巡洋艦だったが、あくなき破壊への気持ちが彼女に更なるアイデアを思いつかせた。
「トドメはバーベキューにしてやるわ。」
ドックの近くに設置してあった燃料タンクに目をつけた彼女。
ドックの縁をつま先でほじくり返しながらタンクからドック内に向かうような溝を作った。
巨大な彼女にとっては造作もない作業である。
「土いじりみたいで面白いな。」
ブーツを泥で汚しながらもお構いなしに溝になった部分を踏みつけては固めていく。
そしてドックの縁に足を掛けてタンクの脇に上がった。
「見てなさい!」
❝ブシュッ!❞
タンクの側面を軽く蹴りつけると中の重油が漏れ始めた。
そして彼女が作った溝を伝ってドック内に流れ込み出したのだ。
「これで準備完了だわ。あとは火をつけなくちゃ。」
「どうしようかなァ。」
辺りを見回すと、ちょうど燃料タンク群のそばに乗り捨てられたタイガー戦車が1両停まっているのを見つけた。
しゃがみ込んだ正美は砲塔を無造作に引き剥がし、つま先を軽く戦車内部に突き立てた。
❝シュヴォッ!❞
中の弾薬が爆発して燃え上がった。
「よし!」
「あとはコイツを投げ込めばいいんだわ。」
燃え上がった戦車を掴み上げると躊躇なくドック内に投げ込む彼女。
❝ジュヴォ~!❞
一瞬でもの凄い勢いの炎に包まれるドック内。
よく見ればあっちこっちで火だるまになった小人達が大勢あえいでいるのがわかった。
「可哀想だけど、わたし力を見せつけなければいけないの。」
「だから死にたくなければすぐに避難しなさい!」
火の海と化した軍艦用ドックをしり目に、2隻のUボートが置かれている小振りなドックに向かう彼女。
今度は幅60cm、長さ約1m位のくぼんだ部分に置かれた整備中の2隻の潜水艦に目をつけた。
「こんなもの、わたしが来たからにはペチャンコにしてやるんだから。」
そういいながらドック内に足を踏み入れた彼女、いきなり右側のUボートを踏みつけた。
❝グシャ~!ギュリギュリッ!❞
踏みつけるのと同時に全体重を掛けてにじり回す。
「わたしの力を思い知れ~!」
「二度と悪い事ができないようにしてやるわァ!」
「さあ、抵抗できるものならかかってきなさい!」
「わたしが相手になってあげる!」
❝ギュリ~!ジュリジュリジュリッ!❞
灰色に塗装された艦は踏みつけられた中央部がペシャンコに潰れてくの字に折れ曲がっていく。
足をゆっくり上げる、どす黒い靴底模様がくっきりと刻まれた靴跡がグシャリと潰した踏みの凄まじさを物語っていた。
「トドメよ!」
「イェ~イ!」
❝グジュ~!グシャッ!グシャッ!❞
大股開きで前後の残った部分を両足で踏みつけ始める彼女。
軍艦と違って独特の踏み応えがあって病みつきになりそうだ。
「なんか、もの凄くイイ感じなんですけどォ~!」
「この踏み応え、たまらないわァ!」
「マジでサイコーな気分かも!」
シャウトしながら恍惚に浸る彼女だった。