第125話・わたし達、かなりフラストレーション溜まってるの!
奈美江と美由紀のひと暴れによって、軍港に停泊していた艦船の殆どが破壊された。
「ちょうど1隻づつ残ってるよ!」と奈美江が一番端に接岸されている2隻の駆逐艦を指さした。
「あれで何か面白い事やろうよ!」と美由紀が歩き出す。
❝ズシーン!ズシーン!❞
巨大な白バイ女子の2人が桟橋の端にやって来た。
「わたし達って、剣道やってるんで~す!」と美由紀が言った。
すると2人がおもむろに足元の駆逐艦を一隻づつ引っ張り上げた。
艦の後甲板を両手で握りしめて構える2人。
さながら1m程の艦艇を竹刀に見立てて剣道でも始める風だった。
「エイッ!」
❝ゴーン!❞
美由紀に向かって艦をゆっくりと振り下ろす奈美江。
美由紀は振り下ろされた艦を自分で握りしめている船体を斜めにしてかわす。
船体同士がぶつかり合うと不気味な衝撃音が鳴り響いた。
2人ともふざけながら艦艇を使った剣道ごっこを始めたようだった。
「えい!」
❝ガーン!❞
2人ともかなり手加減してやり合っているから艦と艦がぶつかり合っても少しへしゃげる程度だが中に乗っている水兵達はたまったものではない。
艦同士がぶつかる度に水兵達が細かい船体部品と共に空中にばら撒かれた。
ほんのちょっと剣道ごっこをやっただけなのに艦橋や煙突などの構造物はグシャリと潰れ無残な姿をさらしていた。
2人がそんな風にふざけている間に桟橋付近の倉庫群の前にドイツ軍守備隊が到着して攻撃準備を始めていた。
タイガー重戦車が20両に装甲車が10両、88mm砲が10門にトラック部隊が約20台。
歩兵部隊も約500名程が配置についていた。
そんな事お構いなしにふざけている2人だったが、奈美江が足元の部隊に気付いた。
「何よこれ?わたし達に攻撃するつもりなの?」
「わたし達リリンズに逆らうなんて、ありえない!」
と美由紀が手を止めて叫んだ。
「律子さん!コイツらはわたし達に任せて下さい!」
奈美江がそういうと機甲部隊の前に躍り出た2人。
手にはもちろんボコボコになった駆逐艦を携えている。
「いいこと!わたし達に向かって一発でも発砲したら許さないからね!」
「そんなもので、わたし達を倒せるとでも思ってるの?」と美由紀が言いながら艦艇を頭の上でグルグル回し始めた。
❝ビューン!ビューン!ビューン!❞
すると美由紀の忠告にも関わらず部隊は一斉に砲撃を始めた。
❝ズーン!ズーン!ズーン!❞
彼らの撃つ弾は2人の白バイ女子のブーツの筒の部分に当たってさく裂し、エナメルシルバーの表皮を薄黒く汚した。
それだけでも2人の欲求不満女子を激高させるのには十分だった。
「ナニすんのよ!コイツら!!」
「許さない!!ソレッ!!」
❝ジュッヴォーン!❞
足元の戦車隊に向かって手に持った駆逐艦をまるで鉄パイプのように思いっきり振り下ろす奈美江。
一瞬で3両のタイガー戦車と数十名の擲弾兵が押し潰された。
更に美由紀が怒りの一撃を斜め上から残った部隊に浴びせる。
「エ~イ!」
❝ジュッヴァーン!❞
5両の戦車と5門の高射砲と砲兵達がボコボコの船体でなぎ払われた。
「イェ~イ!」
とVサインを出す美由紀。
地面に叩き付けられた2隻の駆逐艦はへの字に折れ曲がり、すでに彼女達の武器としての役目を終えているようだった。
「こんなものォ!」
❝ヴィ~ン!ジャッヴォーン!❞
使い物にならなくなった艦を海に向かって投げ捨てる奈美江。
「ソレッ!」
❝ズッガーン!❞
❝ヴォヴォーン!❞
美由紀も市街地に向かって思いっきり投げつけた。
数棟のビルと商店街が炎に包まれた。
「どうせ後でみんなぶっ壊すんだからいいよね!」と全く悪びれない様子の美由紀だった。
「残りはみんな踏んづけちゃおうよ!」と奈美江が言った。
「コイツらと、この倉庫みたいなのと、全部まとめてやっちゃわない?」
と美由紀が言った。
そして彼女達の一撃で混乱するドイツ軍部隊の前に仁王立ちになった2人。
彼らを睨みつけながら奈美江が叫んだ。
「マジでムカついてる白バイ女子は!」
「せ~の!」
「わたし達!!」
❝ズヴーン!❞
「わたし達!!」
❝ズヴーン!❞
「わたし達!!」
❝ズヴーン!❞
「わたし達!!」
❝ズヴォーン!❞
奈美江の合図で2人揃って❝わたし達!❞と叫びながら足元の部隊に強烈な踏みを打ち込む2人。
踏みつける度に地面が深く陥没して辺り一帯を揺らす。
もはや装甲部隊も彼女達のシルバーブーツストンピングの前では紙くず同然だった。
更に興奮した2人
今度は美由紀がグチャグチャになったドイツ軍部隊の後方の倉庫群に足を踏み下ろした。
「オンナのくせになんて、二度と言わせないからね!」
❝ジュッヴォーン!ジュッヴォーン!❞
倉庫の天井を踏み抜いて粉砕する美由紀。
更に街中に響き渡る声でシャウトする彼女。
「この町をぶっ壊す、リリンズ女子の美由紀っていうのはァ」
「この、」
「わたし!!」
❝ジュッガーン!❞
「わたしっ!!」
❝ジュッガーン!❞
「わたしっ!!」
❝ジュッヴォーン!❞
「わたしィ!!」
❝ズッガーン!❞
裏返った声でツバを飛ばしながら怒り心頭になって倉庫群を粉々に踏み潰す美由紀だった。
奈美江が部隊を完全に葬り去っている間に美由紀は全ての港湾倉庫を瓦礫に変えた。
「やったねェ~!気分爽快って感じ!」
散々破壊の限りを尽くしてストレスを発散したのか、喜びに満ちた表情になった美由紀だった。