第105話・復讐に燃えるわたしの破壊力!
いよいよ今日はトリップデーだ。
わたしは洗濯したコスチュームを着ていつもの公園に向かう。
紺系のチェックのシャツにお気に入りのスキニージーンズ。
ゴシゴシ洗ったから前よりも色落ちして、使用感がたっぷりとにじみ出ていてイイ感じだ。
そして白いレインブーツと手にはロングタイプの白いゴム手袋。
ブーツも手袋も洗ったから少しテカッている。
それでも手袋に付着した黒い汚れはうっすらと残ったままだった。
チェック柄シャツの上には青いナイロン製のジャケットを着て袖をゴム手袋にインさせた。
もちろんシャツの裾は出しままだ。
この青いジャケットに白いロング手袋が色鮮やかに映えまくっている。
口にはすっぽりと覆うエロい感じのピンクのマスクに目にはゴーグルを、頭にはロングタイプの茶髪のウイッグを被った。
これなら頭に何か引っかかってもウイッグを捨ててくれば良いのだ。
わたしは手鏡を取り出して呪文を唱え時空の扉を呼び出した。
そしてあの時代のあの場所、わたしと幸恵がトリップした時と場所を一生懸命にイメージして次の扉を開けた。
扉を開けた瞬間、わたしの期待は失望へと変わった。
元気な幸恵さんやもう1人のわたしに会えるものだとばかり思っていたが、実際に目に飛び込んできた光景は破壊されてメチャクチャになった街だった。
2人の姿は見えずとりあえず瓦礫が散乱した街中に降りてみるわたし。
少し歩くと破壊されたビルの前に真っ黒に焼け焦げた幸恵と思しき遺体を見つけた。
「やっぱりダメか・・。」
やはり、いくらイメージしても自分が1つの時代にダブって存在する事はできない様だった。
わたしがトリップしたのは丁度わたしが前回のトリップで戻ってきた直後だったのである。
これでは幸恵を救いだすどころか状況は何も変わらない。
そう思うと無性に怒りが込み上げてきたわたしだった。
「何よ!こんなものォ~!!」
❝ズッゴ~ン!ギュリギュリッ!!❞
わたしは怒りに任せて傍らに建っていた10階建ての無傷のビルに強烈な蹴りを打ち込んだ。
そして軸足で道路をしたたか踏みにじってやった。
洗ったばかりのピカピカのレインブーツがビルの中層階をもろに直撃し、一瞬でビルを真っ二つに切り裂いた。
ブーツの直撃を免れた上層階は一旦空中に浮きあがると破壊された瓦礫の山に向かって落っこってきた。
わずか数秒でビル一棟を丸ごと血祭りにあげたわたしだったが、こんなもので怒りが治まるはずもなくナチの奴らを探して歩き出した。
「出てこ~い!わたしが皆殺しにしてやるんだからァ~!」
❝ズシーン!ズシーン!ズシーン!❞
大股で膝に力を込めて地面を踏みつけるわたし。
一歩また一歩と歩くたびに凄まじい土煙が立ち上り、地面に巨大なレインブーツの靴底模様が刻み付けられていく。
とにかく暴れたいわたしは道路からわざと小振りなビルや建物が立ち並ぶエリアへと入っていく。
ピカピカにテカッていた純白のレインブーツも泥で汚れてすっかり黒ずんでいる。
適当な高さのビルを見つけるとお構いなしにゴム手袋をはめた手で叩き壊すわたし。
「許せないっ!エイッ!」
❝ボカーン!❞
するとわたしの視線の先にうっすらと飛行場らしき広いスペースが見えてきた。
わたしのサイズで約20m位先である。
「あの忌々しいヘリ部隊の基地だわ!ぶっ壊してやる!!」
そう思うといてもたってもいられなくなり走り出すわたし。
地面に何があろうがお構いなしに突き進むわたし。
❝ズシーン!ズシーン!ジュヴォーン!ズヴォーン!❞
飛行場までの間にアパート群やら変電施設があったみたいだが、わたし自身よく覚えていない位メチャクチャに踏みつぶしながら飛行場の手前までやってきた。
この飛行場、やはり航空機用ではなくへり部隊用の駐機場で、30機ほどの機体が並んでいた。
そして格納庫に管制塔に一通りの軍事施設が揃っていた。
突然街中に現れたかなり巨大なわたし。
あっと言う間に中心街からここまで破壊の限りを尽くしながらやって来た。
なのでナチのやつらもわたしを迎撃するヒマすらなかったと見える。
滑走路の脇に20数両の戦車や装甲車が集結し始めた。
大量の歩兵部隊も基地建物から出てきて整列し始めていた。
❝呑気な奴ら!思い知らせてやるっ!❞
「いいことっ!わたしが怒るとど~なるか、見てなさい!!」
戦車隊の前に躍り出たわたしは渾身の力を込めて1両目の戦車を蹴り上げる。
❝バクーン!!❞
蹴り上げられた戦車は真ん中から引きちぎれて吹っ飛んでった~。
その瞬間わたしの目にヘリ部隊のパイロット達が急いでヘリに乗り込もうとする姿が飛び込んできた。
「あいつらめっ!」
一番憎々しい奴らを見つけてしまったわたし。
戦車隊をいたぶるのを止めて、パイロット達の方に向かってダッシュした。
すでにヘリの回転翼が回り始めていたが、わたしの怒りのブーツ蹴りがさく裂した。
「ソリャ~ッ!!」
❝パキーン!カラカラカラッ!ブシューッ!❞
わたしのレインブーツが滑走準備に入っていたヘリ3機をまとめて瞬殺した。
わたし自身が❝ジーン!❞としびれるほどの蹴り応えを感じた瞬間に、粉々になった3機の破片が空中高く舞い上がった。
今まさに搭乗しようとしていた機体を破壊されたパイロット達は、顔を引きつらせながらその場に立ち尽くすしかなかった。
そんな彼らを見下ろしていたのは、怒りに震える巨大ヒロインのわたしだった。