第103話・わたし達のキャットファイト・ラウンド2と意外な結末!
体中に走る激痛をこらえながらやっとの事で立ち上がったわたし。
幸恵と反対方向にあるターミナル駅に向かって歩き出す。
ゆっくりと近づいてくる幸恵と歩調を合わせるようにターミナル正面に建つ駅舎の建物に向かうわたし。
フラフラした足取りで駅舎の前までやってくると足元に並んでいた数台のバスを思わず踏みつけてしまった。
❝グシュッ!ジュヴッ!❞
30cm位の大きさのバスをグシャリと踏みつけたまでは良かったが、その隣に停まっていた別のバスにレインブーツのつま先が引っかかった。
「イヤだっ、もう!」
❝ズンッ!ズンッ!ズヴォ~ン!❞
引っかかった右足を軸に目の前の駅舎ビルに倒れ込むわたし。
でも左足の踏ん張りが効いたから何とか顔面からビルに突っ込む事は避けられた。
それでもビルに覆いかぶさるような情けない恰好になってしまった。
少し勢いを付けて倒れ込んだから右足のブーツのつま先はエントランスを蹴り抜いてメチャクチャにしていたし、ロング手袋をはめた両手はビルの屋根の部分を突き刺すように破壊していた。
そして、ふと後ろを振り向くと幸恵がわたしに向かって突進してくるのが目に入った。
「ウリャ~!!」
❝ズブン!ズブン!ズブン!ズブン!❞
両足に渾身の力を込めて加速する彼女。
足元の車やバスや街路樹などが粉々に踏み砕かれて両サイドに飛び散っていく。
「何なのよ~!」
すぐに身動きできないわたしは恐怖で体が凍り付いた。
するといきなりジャンプした彼女。
わたしに向かって凄まじいブーツキックを浴びせてきた。
彼女の右足のブーツの靴底模様がハッキリと見えた瞬間だった、わたしの腹部に強烈な痛みが突き刺さった。
❝ジュッヴォ~ン!!❞
あまりの衝撃に声も出ないわたし。
彼女のブーツキックがわたしのお腹を直撃するのと同時に駅舎のビルは一瞬で爆砕した。
粉々に砕け散ったビルの瓦礫とモクモクと立ちのぼる真っ白な煙の中で、わたしはホコリまみれになって地面に倒れ込み幸恵は仁王立ちになっていた。
「カッ、カ~ッペッ!」と痰唾を吐き散らす彼女。
わたしも口の中がジャリジャリとしていたので唾を吐いてしまう。
そして煙の中でしばし勝ち誇ったようにこちらを見下ろしている真っ赤な眼光の幸恵。
❝この機を逃してはいけない!❞と思ったわたしはお腹の痛みを我慢しながらゴロゴロと転がり始める。
「エ~イ!」
❝グシャ!グシャ!グシャ!グシュン!!❞
真っ白に汚れまくったわたしの巨体がターミナル駅のプラットホームを次々と粉砕しながら列車が停車しているホーム手前で止まった。
❝これで叩きのめしてやるっ!❞
そう思ったわたしは停車していた急行列車の車両を掴むと幸恵に向かって投げつけた。
「これでも喰らえっ!ソレッ!」
約60cm位の長さの車両は幸恵の顔面にもろに命中した。
❝ブシュッ!❞
列車がヒットした瞬間、黄色い体液とどす黒い血が彼女の顔面から飛び散った。
だが決して倒れない彼女。
わたしは更に手当たり次第に列車を掴んでは次々に投げつけてやる。
「これでもかっ!エイッ!ソレッ!」
❝シュヴァーン!シュブーン!❞
❝ジュヴッ!パコーン!❞
2本目の列車は彼女の胸を直撃したが3本目は手で叩き落とされた。
わたしはプラットホームを踏みにじりながら立ち上がった。
そして、しゃがみ込んで2つの車両を両手で掴み上げた。
「このやろう~!」
そう叫びながら幸恵に襲い掛かるわたし。
右手の車両を彼女の顔面に突き立ててやった。
更に左手の車両を脇腹のあたりに突き刺すわたし。
しかし、所詮は小人達の作った列車など強力な武器になるはずもなく彼女に大きなダメージを与える事はできなかった。
逆にわたしにいきなり抱き着いて来た彼女。
凄まじい腕力でわたしの体を締め上げてきた。
「ウゥ~!やめて~!!」
わたしは痛みに耐えかねてか細い声で思わず叫ぶ。
そして腰砕けになって抱き着いた幸恵と共に足元の列車群の中に倒れ込んだ。
❝ズッヴォーン!❞
プラットホームやら停車中の列車をグシャグシャに押しつぶしながらターミナル中を転げまわるわたし達。
「うわっ、何この臭い!」
と幸恵の口から吐き出されてくる強烈な悪臭に思わずむせ返るわたし。
清掃されていない公衆便所のような強烈なアンモニア臭がわたしの鼻を襲う。
彼女の体内から噴出してくるとんでもない腐敗臭だった。
そして締め上げられたまま意識を失いそうになった時だった。
突然体が楽になった。
急に彼女の腕から力が抜けてきたようだった。
❝何が起こったのかしら?❞と思った瞬間、彼女の体がわたしから離れていく。
転がり回っていた勢いでわたしはホーム横の小振りな建物を押しつぶしてやっと止まった。
幸恵の方を見ると口から白い煙が出ていた。
その煙はだんだん勢いを増していく。
胸のあたりを両手で掻きむしりながら苦しみもだえる彼女。
次の瞬間、信じられない光景を目の当たりにしたわたしだった。