第100話・幸恵の悲惨な末路
身動きできない幸恵の周りに大勢のドイツ兵達が集まり始めていた。
トラックやトレーラーも彼女の巨大な体に横付けしようとしている。
いてもたってもいられないわたしはドイツ兵の群がる幸恵のところに駆け寄った。
そして、足元にいたドイツ兵どもをブーツ脚で思いっきりなぎ払ってやる。
「わたし達を舐めんじゃねェ~よ!」
「ホラ~!!そこをどきなさいよォ!」
「エイエイエ~イッ!」
わたしは叫びながら手当たり次第にドイツ兵達を蹴り飛ばしていく。
憎しみいっぱいのわたしのブーツ蹴りに、集結していたドイツ軍部隊も退散せざる終えなかった。
わたしの強烈なロングブーツ蹴りを喰らった兵士達は細かい肉片となって空高く砕け散っていく。
あっと言う間に100名以上のドイツ兵を葬り去ったわたし。
停車していたトレーラーの荷台に右足を載せて思いっきり体重をかけてやった。
「ホント、ウザイッ!」
❝ジュボ~ン!❞
荷台中央を踏みつけたわたしのブーツが荷台を押し潰しながら地面にめり込んでいく。
トレーラーを牽引していた大型トラックは反動で牽引部分がねじ切れて一回転し、わたしのブーツトゥの上にひっくり返った状態で被さった。
「邪魔くさい!」
❝ヴォ~ン!❞
わたしの右足の甲に乗っかっていたトラックを蹴り上げると、乗り捨てられたトラックをもついでに蹴り散らかすわたし。
すると、上空からまた嫌な爆音がしてきた。
「うるさいハエどもめ!」
とどうする事もできずはるか上空のヘリ部隊を見つめるわたし。
4機編隊のヘリ部隊は旋回し始め、わたし達に向かって攻撃態勢を整えたようだった。
わたしはとっさにまたあの薬剤を散布されたらマズイと思った。
そこでわたしは近くに建っていた10階建てのビルの前にやって来ると外壁を蹴り崩し始めた。
「早く隠れなきゃ、え~い!もっと崩れろっつ~の!」
❝ジュヴォ!ジュヴォ!ジュボッ!❞
わたしのブーツのつま先がビルの外壁を蹴り砕いていく。
そして各フロアが丸見えの状態になると今度はロング手袋をはめた手で各フロアを乱暴に叩き落とすわたし。
❝ヴァッシャーン!ヴッシャ~ン!❞
程なく前面の外壁と各フロアが崩れ落ちた張りぼて状態のビルが出来上がった。
「これでいいわ。」
そういうとわたしは早速中が空洞状態になったビルにしゃがんだ体勢で身を隠した。
案の定ヘリ部隊は例のグリーンの液体の詰まったタンクを投下してきた。
ちょうどわたしの数メートル上空で破裂し毒素タップリの飛沫が飛んでくる。
無防備な幸恵の顔が再び緑色に染まった。
必死に起き上がろうとしていた彼女は激しく苦しみ始めた。
それを見たドイツ兵達は再び彼女に群がり始める。
どこからともなく湧いて出てくる彼ら。
彼女の顔の下に数名の兵士達がやって来た瞬間だった。
❝ゲヴォッ!ゴボゴボッ!!❞
幸恵の口から大量の茶色い液体が放出された。
ネバついた嘔吐物がドイツ兵達を呑み込み、ひどい悪臭が立ち込めていた。
彼女のゲロにまみれた兵士達はすでに息絶えていたようだった。
調子に乗ってやって来たドイツ兵どもを道連れに再びぐったりと倒れこむ彼女。
幸恵の動きが無い事を確認したのか全身防護服に身を包んだ特殊部隊の一団がやって来て、彼女の口元に近づいていく。
「ってか、何をするつもりなのかしら?」
とその光景を見つめ続けるわたし。
すると指揮官と思しき先頭の兵士が半開きになった幸恵の口の中へと入っていく。
彼の後に4名の兵士が続いた。
彼らはそれぞれが火炎放射器やら重機関銃を携帯している。
そして背中にはタンクを背負っていた。
力尽きて特殊部隊の兵士達を噛み砕く事もできない様子の幸恵。
「どうしよう!このまま彼女を置いていく訳にもいかないし・・。」
「でも、わたしまであの液体を浴びたらシャレにならないし・・。」
そんな事を考えていたら上空にグリーンの閃光が走った。
「時間だわ、戻らないと・・。」
そういうとわたしは空洞になったビルの中でしゃがんだ状態から一気に立ち上がった。
❝ヴォバ~ン!❞
わたしの頭と両手が辛うじて残っていた3面の外壁と天井を突き破り粉々に倒壊させた。
瀕死の幸恵を抱き起こして連れて帰ろうとしたが時空の扉がだんだん薄くなっていくのが見えた。
❝このままでは、わたしまで取り残されてしまう。❞
そう思ったわたしは幸恵を置いたまま扉を開けて中に入った。
「幸恵さ~ん!」
「必ず助けに来ますから~!」
そういい残すとわたしは扉を閉めた。
かすかに彼女がうなずく仕草をしたのが見えた気がした。
後ろ髪を引かれる思いでいつもの公園に戻ってきたわたし。
もうどうしたらいいのかわからないままとりあえず自分の部屋に戻った。
そして落ち着いてよく考えてみた。
そういえば以前里奈子が奴らに捕まった時も救出に成功した。
だから次回のトリップでも今回行った時代に合わせてトリップすればよいのだ。
ただし今度はあの液体を浴びないようにわたしも防護服を着ていかなければならない。
それにしても幸恵の体調が心配だ。
そして彼女の体内に入っていった兵士達の事も気になって仕方がなかった。