第1話・不思議な世界の扉を開けて
わたしは藤森律子、東京の食品会社に勤める32歳の独身フリーター。
結婚したいなんて思わないし、面白い事など無い単調な毎日を送っている。
そして今日は雨。
仕事を終えたわたしは最近買った白いレインブーツを履いて帰路につく。
外はすっかり暗くなっている。
以前わたしは都内の銀行に勤めていたけど人間関係に嫌気がさして辞めた。
そして今は自由気ままにアルバイトをしている。
残業も無いしスーツを着る必要もないし、仕事は食品倉庫の中での作業だからジーパンでOK。
だからわたしはいつもお気に入りのジーパンを履いている。
何年も前に買ったこのわたしのジーンズ、紺色のスキニー系で全体的に色落ちしていてわたし的にはイイ感じ。
このお気に入りのジーパンにロングブーツをインして履くのがわたし流。
今日は雨だから白いレインブーツをジーンズにインしてちょっとオシャレなわたし。
わたしは身長が164cmで体重が50kgの中肉中背って感じ、髪は長めで容姿にはちょっとは自信があるけど30歳を越えてからは恋愛とは縁遠くなった。
そんなわたしの楽しみは家でレンタルDVDを見る事。
特撮系の映画は大好きだ。
今思えば子供の頃から戦隊ものにハマッてたっけ。
だからわたしがいつもブーツインスタイルなのは戦隊もののヒロインのコスプレに影響されていたのかもしれない。
いつかわたしだって悪を相手に大暴れするヒロインになりたい!
なんて空想したりして、何か面白いことないかなあ!っていつもフラストレーションが溜まっていく。
そんなわたしに人生の転機が訪れた。
雨の中家路を急ぐわたしは公園の階段で足を滑らせて転んでしまった。
転んだ拍子に地面に手をついてしまい手のひらが少しすりむけた。
そして傘の柄が顔に当たって少し痛みを感じた。幸い周りには誰もいなかったのでこの恥ずかしい惨状を見られなくてよかった。
身だしなみを整えたかったわたしは公園の屋根のあるベンチまで走って行った。
髪の毛も雨で濡れてしまい服も少し汚れたのでベンチに座ってハンカチで汚れをふき取る。
そして、バッグから手鏡を取り出して顔に傷が無いか確認した。
そういえばこの手鏡、昔マケドニアを旅行した時にガラクタ市で買ったもの。
鏡の縁の模様が美しくアンティークな感じなのでいつも携帯している。
そして何の気なしに鏡の裏面を見たら何やら文字が書いてある事に気づいた。
アルファベットのような、でもちょっと違うこれはキリル文字だ。
学生の頃ロシア語を少し勉強したことがあるので読めそうだ。
少し興味がわいてきたわたしは試しにこの短い呪文のような文字を声をだしてつぶやいてみた。
❝ヴァルヴィア・ヌーツェ・ダンヴェレ❞と読めた。
意味は良くわからなかったが次の瞬間鏡から緑色の閃光が発せられ数メートル先を照らし出している。
非常に奇妙な光景だった。
目を凝らして光の照らし出す先を見ると古めかしい扉がある。
夢か現かハッキリしないままわたしはその扉に向かって歩き出していた。
そして思い切ってその扉を開けて中に入っていくわたし。
扉の先は暗い通路のようになっている。
そして薄暗い闇の数メートル先にもう一つの扉があった。
単調な毎日に飽き飽きしていたわたしは”えーい、どうにでもなれ!”と叫んでその扉を開けた。
そして向こうの世界に足を踏み入れた。
そこに広がっていたのは・・・・。