表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

ナノマシンについて(初級編)

 様々な作品に登場するナノマシンですが、そのほとんどが人間の体内で活動しています。その概念を初めて取り上げたのは米国の物理学者リチャード・ファインマン。命名したのは東京理科大学の谷口紀男氏であります(理科大すげー)。

主な役割はこちら。



①人間の体内の状態をチェックし、どこかに送信する。

②発信機。

③自己増殖して怪我を治す。

④個人認証システムとか。

⑤人間の臓機能の肩代わりをする。



 このいずれもが人間の体内、主に血中で活動します。そのため、ナノマシンは人間の毛細血管で詰まったりしないよう、ナノメートルサイズでなければなりません。毛細血管がだいたい5~10マイクロメートルなので、発信機になるだけだったら500ナノメートルぐらい小さければよいでしょうか。(1マイクロメートルが1ミリメートルの1000分の1。1ナノメートルがそのさらに1000分の1)。


 ノロウイルスが25~35ナノメートルなので、ここまで小さくすれば細胞とかにも入れそうです。


 とはいえ、そんなに小さい機械を作ることは、ほぼ不可能といっても過言ではありません。通常の機械の部品は、多くの場合より大きな材料から削り出したり切り出したりして作るものですが、500ナノメートルともなるとヤスリで削った削りくずよりも小さいです(そのため最新のICなどはまた別の製造方法が用いられているのですが、それは上級編で触れます)。


 というか小さくすぎて肉眼では見えません。



 職人「目に見えねえんじゃ完成したか分かりようがねえよ」



 そこで、現在注目されているナノマシン製作の概念として「分子機械」というものがあります。かなりざっくりした言い方になりますが、要するに「人工的にウイルスを合成する」という手法です。


 それ危なくね? と思った方もいるでしょう。しかし、その話は割と難しい分野に入ってくるので、上級編にて説明します。


 ウイルスといえば、人間の体内に入り込み、様々な症状を引き起こす人類にとっての天敵のようなものですが、利用できればかなり有用です。


 少し脱線しますが、ウイルスがなぜ生物に寄生しなければならないか、という話をします。もともとウイルスは、自分たちだけで仲間を増やすことができないのです。そこで、他の生物の体に入り込み、生物のタンパク質を製造するシステムに割り込んで、自分の複製を作ってもらうのです。この間、自分たちが生きやすいようにその辺の環境を変えたり、エネルギーを得るためにその辺のものを食い散らかしたりするため、感染した生物に悪影響を及ぼします。これが危険なので、感染した生物のほうも免疫などで追い出そうとします。ノロウイルスに感染すると猛烈に吐くのは、だいたいこのためです。


 もし、このウイルスが病気の代わりに体内で通信用の電波を発したり、健康状態をチェックしたりすると、それは様々なSFに登場するナノマシンそのものです。


 しかし、そのためには「特定の電波を発生させる化学反応」を起こさなければならず、これがまた難しいのです。そもそもそんな異物を体が受け入れるわけもなく、拒絶反応も大きな課題の一つとなります。



医者「電波とか放ったら人体に熱とか溜まるだろ……それに免疫が黙ってねえよ」

化学屋「そもそもそんな出力の高い電波出せねえよ……人体が吸収するし……」

生物学者「複数のナノマシンの相互ネットワークとかで……」



黒葉「つまりいろんな分野の技術が結集しないと無理」



 「分子機械」がマシーン的なナノマシンよりも有利な点は、ウイルスがタンパク質の塊であるために、化学合成によって作ることができるということと、ウイルスに近いために人体からエネルギーを取り出して使うことができるということです。また自己増殖できれば、半永久的に活動が可能です。


 もし、現実に「分子機械」型のナノマシンが実用化されたら、世界はどうなるのか。いきなりですが、正直に言って不明です(ズゴー)。


 狙った場所に薬となる化学物質を届けられる分子機械ができたら、病気の治療がより的確になりますし、ガン細胞を化学的に直接攻撃することも可能となります。もしそれが外界と相互通信可能だったら、より多くの病気を治すことも可能です。


 分子機械によって、人体の器官のさらに深いところを調査することができるようになるでしょう。脳などはその最たるものです。


 メタルギアソリッドみたいに、狙った人物を殺害するウイルスも、ナノマシンの一種です。


 と、このようにナノマシンは説明したらきりがないほど様々なことを引き起こしかねないのです。可能性が多すぎて予測不能です。


 みなさんも、ナノマシンによって何が起こるのか、考えてみるといいのではないでしょうか。もしかしたら、そこからユニークな世界観が生まれるかもしれませんよ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
久しぶりに読み返して思いついたんだけど、血管とか細胞の中に潜り込んでると外との通信が出来ない(電波が吸収される)なら、電波塔の様なモノを作ればいいじゃない。 今は微細な針を刺して血中糖度を常にモニタリ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ