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恋姫竜神記  作者: DGK
3/40

并州より

終が麒麟と出会ってから2年後。



~???~


草原の草が風になびきさらさらと音を立てている。

ここは、終しか知らない秘密の場所である。

辺りには脛の高さほどの短い草が青々と茂っている。

そして、その草原の中央には約14丈(40m)ほどの大きな木がある。

終は、その木に体を預けてのんびりと寝転がっていた。


「やっぱり、ここは落ちつくな。」

終は、青い空を眺めながらそう言った。


約半年前、麒麟と共に遠乗りに出かけた時に偶然ここを見つけたのであった。

それ以来、ここは彼の休息場所兼ね鍛錬場所となっていた。

ちなみに前の鍛錬場所である広場は、付近に雷が落ちたことに加え

野党らしき集団もしばしば目撃されていることによって母に

行くことを止められていた。


「うん?」

終が、空を眺めながら木にもたれかかっていると

彼の前に相棒である麒麟の顔が現れた。


「もう、そんな時間か?」

終が、そう聞くと麒麟はぶるんと頭を振った。


「よし、帰るか。」

終は、そういうと麒麟の頭を2、3度撫でて背中に跨った。



~常山の村~


「あ、終にぃ!」

終が、村に帰ってくると真っ先に出迎えてくれたのは妹分である星であった。

「よう星。今帰ってきたぞ。」

終は、麒麟の上から右手を上げながら星に言った。



「母上が、俺を呼んでる?」

「うん。」

星としばらく話していると彼女は、縁が自分に用があるのだと言った。


「大事な話があるみたいだったよ。」

「そうか、わかった。ありがとな、星。」

そう言うと終は、麒麟を走らせた。


終が、家に帰ってくると縁が玄関で彼を待っていた。

「母上、ただいま帰りました。」

「やっと帰って来たか、いったいどこに行ってたんだ?」

麒麟から下馬して帰りを告げた息子に、縁はそう聞いた。


「いつもの場所です。それ以上は言えません。」

「・・・まあ、危険なところでなければいいのだがな。」

縁は、息子の平気そうな顔を見ながらそう言った。


「ところで、俺に何か用があるんですか?」

「ああ、そうだった。」

そう言うと机の上から何かをとってきた。


「紙、ですか?」

縁が手に持ってきたのは文字の書いてある白い紙だった。


「并州にいる私の親友からの手紙だ。」

縁は、懐かしむようにその手紙を持っていた。


「紙を使うなんて、よほどの身分の方なのでしょう。」

終は、その紙を見ながらそう言った。


「それで、その手紙と俺を呼んだのとどういった関係があるんですか?」

「実を言うとな、この手紙は私の力を貸してほしいと言った内容が書いてあってな。

明日には、并州に向かおうと思っているのだ。」

縁は、終と目を合わせた。


「だが、おまえをここに置いて行くのが少々、というよりはかなり心配でな。

まなに頼もうかとも思ったのだが・・・」

そう言うと縁は、はあとため息を吐いた。

ちなみに愛というのは趙華の真名である。


「お前は基本じっとしていられない男だからな。

もしかすると迷惑をかけてしまうかもしれない。」

縁がそう言うと終は口をとがらせた。


「ひどいですね。俺がいつ人に迷惑をかけましたか。」

終がそういうと縁は意地が悪い笑みを顔に浮かべた。


「いきなり姿を消して村の人たちに迷惑をかけたのは誰だ?

そしてひょっこり出てきたと思ったら私たちがどれだけ苦労して探したかも知らずに

『ただいま、皆してなにしてるの?』と言って村の人たちの苦労を無に帰したのは?

その後どこに行ってたのかを聞いたら

『わからない、なんとなく散歩してただけだよ?』

とかふざけたことを言ったのは誰だったかな~。

ああ、他にもこれと同じようなことを半年前に」

「すいません、俺が悪かったです。もう勘弁してください。」

終は、縁の話を聞くと頭を抱えながらそう言った。



「とにかく、お前をここに置いていくと并州に向かうとき不安になるんだ。

憂いを残したまま行くのは、なるべく避けたい。」


「だから俺を并州まで連れて行くことにする。といったところですか。」

縁は、終がそう言うとは思わず驚いた表情で彼を見た。


「さすがにここまで言われたら、だいたいそんなところだろうな~

ってわかっちゃいますよ。」

終は、笑いながらそう言った。


「はぁ、本当に賢い息子を持つのは疲れる。

さっきも言ったが、明日には并州に向かう。今のうちに準備をしておけ。」

「はい。でも一つだけ確認してもいいですか。」

縁は、なんだといったような表情で息子を見た。


「明日、并州に向かうといいましたけど

そこに行けるだけの準備はしてありますよね。」

それを聞くと縁は、呆れ顔で終を見た。


「何を聞くかと思ったら、お前は私をなんだと思っているんだ。

出かける準備くらいならとうにできている。」

そう言って縁は、部屋の奥にあった大きめの荷物と

いつもは壁に掛けてある、腰にさした三本の小刀を見せた。


「母上、それは?」

「道中賊が襲って来ないとは限らないからな。護身用だ。」

そう言うと縁は、腰にさしているうちの一本を抜いた。


ひゅっと風を切る音が聞こえた。


「うむ、やはり体は覚えているものだな。」

縁は、流れるような動作で刀を鞘に納めた。


終は、その一連の動作に見惚れていた。

縁が描いた銀の軌跡は誰が見ても並みの武人ではないとわからせるものがあった。


「ん?どうした終。」

縁は、ぼ~っとした表情で自分を見ている息子に聞いた。


「・・・いえ、なんでもありません。」

終は、そう言うと外にでようとした。


「どこにいくんだ?」

縁がそう聞くと終は、口元に笑みを浮かべながら言った。


「星にしばらく会えないこと伝えにいくんですよ。

こういうのは自分の口で伝えなきゃいけませんからね。」



~村の中央~


「・・・と言うわけでだ。ちょっと出かけることになった。」


終が星に母の話を一通りして自分も母と一緒に并州に行くと説明した。

時刻はだいたい昼すこし前くらいである。


「・・・どうしても行かなきゃいけないの?」


「あの感じだと、母上は俺を引きずってでも連れて行く気だったな。」

終のその言葉を聞くと星は俯いた。


「いつ、帰ってくるの?」

星は、元気の無い声でそう聞いた。


「さあな、それは俺にはわからん。」

終は、俯いている自分の妹分に笑いかけた。


「なあに、心配することはないさ。ちょっと并州まで母上と一緒にいくだけだ。

一生帰って来なくなるとかそういうのじゃねぇよ。

いつ帰ってくるかはわからねぇけど、いつかは必ず帰ってくる。」


終がそう言うと星は顔をあげた。

まだ心配そうな顔をしている。


「でも外には盗賊とか獣とか危険がいっぱいあるんでしょ?」

星は不安そうにそう聞いた。


「それも大丈夫だ。俺も母上も自分の身を守るための術くらい持っている。」

終は、縁の描いた銀の軌跡を思い出した。


「特に母上は、俺も一緒に守れるくらいの余裕がありそうだったからな。」


終は、ニカリと笑うと星の頭に手を置いた。

「とにかくだ。心配しなくてもいいってことだよ。」


そう言って終は、星の頭を撫でた。


「それにな、これは俺にとって良い機会だと思うんだよ。」


星は、終を見て首をかしげた。

「どういうこと?」


終は、星の頭から手を離すと空を見上げた。

「星、俺いつかこの村を出て旅に出てみようと思っているんだ。」


星は、終の言葉に目を見開いた。


「ずっと前から考えていたんだよ。この村の外に出ていろいろなものを見て、聞いて、

感じてみたいって。でも外に出るには、俺はまだ知識不足だ。だから母上と共に并州に

行き、その過程で旅をするのに必要な様々な知識を学ぶつもりなんだ。」


終は、ゆっくりと目を閉じた。


「どこまでも続く青空、果てまで続く大地、そしてそこを駆ける一人と一匹。」


そこまで言うと終は、星を見てニカリと笑った。


「な、想像してみるとなんか格好良くないか?」


星は、目をキラキラと輝かせながら終を見ていた。


「うん!すっごく!」

そう元気良く星は頷いた。


「うん、やっぱ星には元気な姿が一番似合うな。」

そう言って終は、再び星の頭を撫でた。



ひとしきり星の頭を撫でると終は彼女の頭から手を離した。


「ねぇ、終兄ぃ。」


「なんだ?」


「私が今よりもう少しだけ大きくなったら。その時は・・・」


星は、顔を上げて終を見た。


「その時は、私も一緒に連いて行っていいですか?」


終は、自分を見上げながらそう言った妹分に微笑えんだ。


「ああ、もちろんだ。」







~并州~


「・・・」


少女は、空を見ていた。

いや、見ていると言うにはあまりにも無感情な目をしていた。

ただ頭を上に向けているだけと言ってもよかった。


「ここにいたのか。」

少女は、ゆっくりと後ろを振り返った。


そこには、黄の色が少し混じった長い白髪をもった女性が立っていた。

彼女達が立っているのは、并州の城壁の上である。


「・・・」

少女は、自分の後ろにいる人物が誰なのか確認すると

体を城壁の外に向け再び空を見上げた。


「なんだ?空に何かあるのか?」

女性は、そう言うと少女の隣に立った。

そして少女と同じように空を見上げた。


「なあ、いったい何を見ているんだ?」

女性は、隣にいた少女に問いかけた。


「ん?」

だが女性が自分の隣を見たときにはすでに少女はいなくなっていた。


「・・・ふぅ。」

女性は、ため息を吐くと城壁の上から城内を見た。

賑やかとまではいかなくともそれなりに大きい城下町がそこにあった。


「・・様!」


「うん?」

誰かが呼ぶ声が聞こえた。

女性は、城壁の上から身を乗り出して下を見た。


「丁原様!そのようなところにおいででしたか!」

「おう、どうしたんだ?」

そう言って女性。


丁原は、自分を呼んだ人物に問いかけた。

体に鎧を着用し額から滝のような汗を流した屈強な武将である。


「どうしたんだではありませぬ!領内に入った異民族の討伐の会議があるのですぞ!

早急に城にお戻りください!」

その武人は、顔を真っ赤にしながら大声でそう呼び掛けた。


「ああ、わかったわかった。すぐに行くよ。」

女性は、城壁の外を一瞥すると城に向かって駆けて行った。

自分で小説書いてみて改めて気がつきました。

小説を書くのは難しいものだと。

早く次の話来ないかなと読む側に立っていた自分に説教したいです。

さて、次の話でヒロインの一人が登場します。

いったい誰なのかは、読んでからのお楽しみです。

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