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BANDIT!  作者: 望田 壱
The blade for who?
27/28

012



 012-1


 ――瞼に感じられた光に刺激され、閉じていた目をゆっくりと開く。


 見覚えのある天井、ここは……公爵家の屋敷の一室だ。

 起き上がろうとした俺は、左手に温かい重みを感じそっちを見る。

 馴染みのある銀色の髪――


「あり、す?寝てんのか……?」


 俺の左手に縋るように、上体をベッドに預け眠っているアリス。

 つい、もう片方の手でその髪を撫でようとして、違和感に気付く。


「右手、が……ある?」


 そういえば、なんで俺は公爵家の一室で寝てたんだ?

意識を失う直前まで、俺は倭の国の城に居たはずだ……。


 少し考え、俺はアリスを起こさないようにそっとベッドから起き上がると

そのまま部屋を出て、誰か居ないかと公爵家の中を探し始める。



「――をを、クロスケ様っ……お目覚めでございますか」


 しばらく歩き回っていると、屋敷内で何か問題は起きていないか

見て回っていたシルバ爺さんと会うことが出来た。


「ああ、ついさっきな……アリスがいたんだけど起こしちゃ悪いからそのまま

 寝かせてきた。

 ……シルバ爺さん、ここ……公爵さんの屋敷で合ってるよな?」


「はい、左様でございます……何か気になることでもございましたか?」


 俺の質問にも、訝しげな顔をすることもなく答えてくれるシルバに

感謝しつつも、なんで屋敷の一室で寝ていたのか尋ねてみる。


「あぁ、いやな……俺、倭の国に居たと思ったんだけどよ。

 向こうでヘマやらかして、気を失って次に目が覚めたらここにいたからな。

 ……どうやってここに帰ってこれたのかわかるか?」


「…………クロスケ様、今日が何日かお分かりになりますでしょうか?」


「へ、今日か?そうだな……倭の国にいたのが……」


 返された質問に、俺は倭の国まで行くのにかかった日程を逆算し、そこから眠っていたと

思われる日数を加算した大体の日にちを告げる。

 しかし、シルバの反応を見ると俺の中の認識とだいぶ違うらしく


「恐れながらクロスケ様、本日の日付ですが……」



 俺が向こうで倒れたと考えられる日付から、3週間近く経過していた。




 012-2


「そう、か……なんか、迷惑掛けちまってたんだな、済まない」


「いえいえ、とんでもございません。アリスお嬢様の大切な方である

 クロスケ様が倒れられて居たのです、公爵家に仕える者として当然の事を

 させていただいただけでございます……さて、それでは紅茶を入れてきましょう」


 ああ頼む、と厨房に向かったシルバを見送り、俺はソファに座り込む。

 今日は、公爵さん夫妻は公務の為近衛の3人とともに王都に出向いており、

屋敷にいるのはシルバやメイドさん達の他は俺とアリスしか居ないらしい。


 ……糸目の男とゴスロリ服の少女の二人組に運ばれて帰ってきた、か。

はっきりと覚えてないけど、ぶっ倒れる間際に会ったあの二人、だよな。

 向こうは俺の事を知っていたかのような口ぶりだったけど、こっちは

相手を知らない。……名前の知らない相手にまで助けられてたなんて

様になってねぇよなぁ。


「はぁ、もう一度会うことが出来たらしっかり礼をしないとな……」


「をっ、なんやニイちゃん意外と律儀なとこあるなぁ」


 ……いつの間にか、俺との間に一人分程度の間を開け、帽子を被った

男がソファに座っていた。

 なんだコイツ、どっから入って来やがった?


「おいテメェ、って……その糸目、アンタか?俺をここまで

 運んでくれたってのは?」


「んー、正確には運んだんは姐サンでオレは単なる付き添いやけどな?

 大きなお世話やったかもしれんが、ニイちゃん気ぃ失ってたからなぁ」


「いや、なんて言っていいかわかんねぇけど、助かった。

 礼を言う……そういや、もう一人居た気がするんだけど?」


「あぁ、その事なんやけどな……ちょっと、ここじゃ出来ひん

 話やし、表出よか」



「さて、こうやって話してるけど実はそう悠長な事やってる時間

 がないんで手短に話すで」


「時間がない?……いや、わりぃ続けてくれ」


「ん、まずは軽く自己紹介させてもらおか。

 オレはフリオ、ここにはおらん姐さんもやけどちょっとした団体に

 属しとってな?その関係で、倭の国でのニイちゃんの行動は

 ずっと見させてもろてたんや」


「俺の……?」


「せや……斑鳩はんから聞いたやろ?魔神や、契約者って言われとる

 人らを監視しとる組織……それが、オレらが属しとるとこや」


「監視……それは、いつからの話だよ?」


「あぁ、それなんやけど元々はニイちゃんの行動を見るつもりはなかったんよ。

 倭の国の、あの城の城主と組織にちょっとした繋がりがあってな。

 んで、ここ最近その城主さんの評判が悪くなっとってな?

 何か問題が起きる前に対処するんが目的であの城にオレがおってん」


「ふぅん……ん?にしては、俺のこと前から知ってるような感じだよな?」


「ニイちゃん、少し前に王都でデカイ騒ぎ起こしたやろ?」


「王都で……あぁ、あのくそ司祭の事か」


 糸目、フリオにそう問われ以前関わった事件を思い出す。


「あんときな、直接ニイちゃんとは顔合わせんかったけどオレも

 あの場にはおってんで?そんときは、司祭さんに雇われてたんやけどな」


 そういや、王宮での査問会の時クソ司祭が逃げようとしてたのに手を

貸してたのがいたが……そうか、コイツその時のヤツか。


「まぁそういうことや。理解してもろたとこで話とばすで?

 倭の国でニイちゃん見つけてからは、半分仕事半分趣味で見てたんやけどな。

 ニイちゃんがあの一族と関わってるの分かってから、ちょうどえぇと思って、

 今回あの一族の、魔神の継承の儀式を担当する姐サンを呼んだってん」


「姐サン?……ああ、ひょっとしてあの食い逃げゴスロリ少女か?

 でも姐サン?……え、もしかしてあの見た目で歳食ってるとか?」


「それ、本人の前で言わんほうがええで?

 姐サン、なんでもどこぞの森に住む"神森の民エルフ"の姫さんらしくてな。

 あれで400ちょいやねん」


 人は見かけによらない、って事か。いや、違うな。

 エルフっていや、たしか魔導に対しての知識や技術が半端ない人種

だったよな?

 ……じゃあ、俺をここまで運んだってのも?


「そのエルフの食い逃げ姫が、アンタと一緒にここまで運んでくれたってことか?」


「せや、ニイちゃんが倭の国で倒れた後すぐにな?

 ここの屋敷の事はオレが知ってたから転移で飛べたしな。

 ついでに、ニイちゃんの治療やら何やらでも姐サンが珍しくやる気出してなぁ」


「……それは、黒の剣絡みでってところか?」


「んー、当たらずといえども遠からずって事にしとくわ。

 ところで、ニイちゃん……その黒の剣、今どうなってるかわかるか?」


 その言葉に、倭の国で倒れる直前の事を思い出し俺は

包帯で包まれた右手、喰われたはずのソレを見る。


「聞くけど……俺の右手、どうなってたんだ?」


「予想はついとるかもしれんけど、ニイちゃんが黒の剣リベリオンの二重起動

 なんて無茶しよるからそこで魔力が過剰になって暴走。

 ……黒の剣に接触してた右手は文字通り"喰われた"状態やった」


「そう、だよな……いや、うっすらと覚えてたからそれはいいんだ。

 けど、じゃあなんでコレは、右手はあるんだ?再生でもしたのか?」


「……姐サンの受け売りやけど、ニイちゃんの不死性は黒の剣と契約した

 代償の呪いやろ?それは、大抵の怪我やったら再生するけど呪いを

 課した黒の剣自体からのダメージは再生できんて言うてたわ」


「そう、なのか?じゃあこの喰われたはずの右手がある理由に

 説明がつかねぇぞ?」


 俺の言葉に、フリオは何かを逡巡した後に口を開く。


「ソレな……正確にはニイちゃん本来の腕とはちゃうねん。

 なんていったらいいんかな……手っ取り早く言うとそれは

 黒の剣の残骸を核に、アリスちゃんの魔力と姐サンの術式で手の

 カタチに固定してるようなもんや」


「アリスの魔力?!ってどういうこった?アイツ、魔導の魔の字も

 知らねぇだろ?」


「そこは、なぁ……ニイちゃんが寝とる間に色々あったんよ。

 そんときに、アリスちゃんが姐サンから魔導適正ある言われて指導

 受けてな……」



 ニイちゃんの事、助けたい言うて必死にやってたで?と聞いて俺は

ここに居ないアリスと、まだ名前すら知らないエルフの少女に深く感謝する。

 ……くそ、どんだけ借りを作りまくってるんだ俺は。




 012-3


「……ん、わりぃ。頭ん中整理できたし、続き頼む」


「わかった……んで、さっき黒の剣の残骸や言うたけどまぁ、

 そんときはニイちゃんの腕と黒の剣とか完全に同化してもうてたわけよ。

 それも、眠っとるニイちゃんの魔力を微量ながら奪い続けるいうオマケ付きで。

 そのままやと、いつまでたってもニイちゃんは目覚めんって分かってなぁ」


 俺自身は、ぶっ倒れて寝てただけだと思ったんだけどそうではなかったらしい。

こうも、周囲に迷惑ばかりかけてたと知ると会う人全てに土下座したくなる。


「んで、黒の剣の力を引き剥がすっていうか移すための依り代を作る

 のに必要な材料をアリスちゃんと、姐サンとオレで探しに行ったんやけど

 向かった場所がちょっと問題あってなぁ……」


「……もしかして、そのエルフの姐サンがここに居ない理由ってのは」


「そうや……その場所ってのが"教会"の管轄、それも許可なしやと

 入れん巡礼地に指定されとる場所でな。

 ただでさえそんなややこしい場所やのに、オレや姐サンの属しとるトコは

 その性質上教会と対立しとってな」


 そう言って、言葉を切ったフリオを前に俺は考え、話の内容から

そのエルフの姫さんや、アリスの性格からやりそうな事を思いついてしまう。


「無断で押し入った上に、教会側と派手にやらかした……ってとこか」


「そういうことや。

 ニイちゃんの治療が終わった後ぐらいからかな、オレんとこの上から

 ものごっつい追求されてな。

 ……姐サンを教会に差し出して沈静化しよう言うたけったくそ悪いハゲが

 やらかしてくれたおかげで、姐サンは教会の総本山に囚われの身ってわけや」


「そう、か……」


「――別に、今話をしたからって、ニイちゃんに助けに行け言うわけやないで。

 それこそ、あんさんがぶっ倒れてる間にオレらが勝手にしたことや。

 アリスちゃんのお父さん、公爵さんも庇おうとしてくれたしな。

 けど、なんとかせんと黒の剣の事がバレてしまうってなって姐さんがな」


「バレるって……黒の剣って、そこまでやばかったのか?」


「オレらの組織からすると、例外過ぎた遺物アーティファクトの一つってだけやけど

 教会からしたら、それこそ聖騎士の一団派遣しかねん代物らしいわ。

 ……教会にも契約者がおるけどソイツが持ってるんは"聖剣"そのものやしな」


「おい……んな奴らに捕まってるって相当やばいんじゃないのかよ?」


「ヤバイ、やろなぁ。

 けど、姐サンが来なくていいて言うてたんや……自分一人で済む問題なら

 そうするべき言うてな。

 そういや、ニイちゃん宛に言伝あるんやったわ。

『アンタ、アリスみたいないい娘が居るんじゃない。

 ワタシが折角助けてあげたんだから、感謝しつつその娘泣かさないように!

 それと、あんみつごちそうさまでした』、やって」


「……ごちそうさまってなんだごちそうさまって。

 強引に自分の食った分払わせといてそれはひでぇだろ」


 はぁ、とため息を付きもう一度、包帯に包まれた右腕を見る。

 ……ここまで恩を受けたまま、何も返さないでいいのか?

 フリオの言ったとおり相手が勝手にした事と、結果だけ享受していいのか?


「なぁ、もしも教会の総本山まで押し入って、黒の剣の事まで

 バレたらどうなるんだ?」


「……少なくとも、教会から追っ手はかかるやろな。

 教会の分布とその信奉者、どの王国にもその教義が根付いとると考えたら

 公共機関も使いづらくなるって考えたほうがええやろ。

 最悪、国そのものから狙われるハメになるな」


「だよなぁ……はぁ、めんどくせぇ……」


「言うたやろ?こっちが勝手にした事やし、わざわざ教会に出向いて

 姐サン助けよみたいな、めんどいことはせんでええって」


 その言葉に俺は、自嘲気味に笑いながら



「――国や教会から付きまとわれるのがめんどくさそうって言ったんだ。

 けれど、助けてもらった借りは返さねぇとな」

次の更新で、区切りという意味での完結となります。

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