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BANDIT!  作者: 望田 壱
The blade for who?
24/28

009


 009-1


 はぁっ、はぁっ、はぁっ。

 少女は走る、城への道を。

 一瞬だけ感じた、自分や父と同じ力の存在を目指して。


 きっと、あの人だ。

 初めて会った時から、どこか自分に近い気がしてた。

 だから惹かれた。


 目の前から去った時は、悲しかった。

 置いていかれたと思って。

 けれど、それは勘違いだった。

 あの人は、自分の為に何かをしようとしている。


 ……行かなきゃ、行って確かめなきゃ。




「…………」


 その手に持った、朱い刃は確実に相手の心臓を貫いている。

 不死とはいえ、ここを破壊されてはもう再生することはないだろう。


 ……組織で叩きこまれた、バケモノ共を屠る為の基本的であり尤も

効果的な方法を採ったにすぎない。

 しかし、その基本的な事で地面に倒れ伏すソレはピクリともしない。


「……念のため、だ」


 グリッ。

 手に持った刃をひねり、貫いた心臓を更に破壊し尽くしてから引き抜く。

 元からの色なのか、相手の血なのかわからないほどに、その刃は紅い。


 ……思ったほど、手応えがなかったな。

 契約者、それも謎に包まれた黒の剣を携えた相手と聞いてはいたが

こんなものなのか?


「考えるのは後だ……次はあの二人を始末しないと……」


 僕の自由はない。

 早く、終わらせてここから去らないと。

 あの子が、来る前に。


 

 ゴフっ、ぐ、ぅっ……



「っ?!」


 たった今、自分が終わらせたはずのモノを見る。



「ッグ、が、はっ……っぐぁ……」



 なぜ、そんな苦しそうな声を出す?…………君は、止まったはずだ。



「っゴフッ、っぐぇ……が、っ……ウグッ」



 ビチャリ、と音を立てソレは朱い塊を吐き出す。

 ばかな、ありえない、苦しむって事は、苦しみを感じるって事は。


「生きてる、だと……ありえないっ!!」


「っぐ……っるせ、ぇ……勝手に、死なせんじゃねぇ……」




 くっそ、息する度に激痛かよ……胸ん中で何かがジクジクとしてやがる。

 ぶっ壊された心臓が再生してんのか、嫌な感覚だな……


「なぜ、君は生きていられるんだ……っ!!僕は、確かに君の心臓を

 破壊したはずだ……っ!」


「あぁン?っつ、ぅ……再生してるからに決まってんだろうがよ、先生さん」


「ありえない……君は、何を言っているのかわかっているのか?!

 不死といえど、その生体活動の根幹を為す心臓を破壊されたら活動を

 停止するのが常識だっ!!

 それを、破壊されても再生されるだと?!」


 斑鳩は、一度倒れた俺がこうして生きている事に納得が行かないらしく

否定を繰り返している……んな事言われても知るか、生きてるもんは生きてんだよ。


 瓦礫に寄りかかりつつ、どうにか立ち上がる。

 ……っち、回復錠の効果は心臓の再生で切れたか……まだフラつきやがる。


「……なんで、君が動けるのかは知らない、理解しようとも思わない。

 動くというのなら……動かなくなるまで、再生するというなら再生出来なくなるまで

 斬るだけだっ!!」


 そう言って、斑鳩が抜き身の刃で斬りかかってくる。

 まだ立ってるのがやっとの俺は、そこから飛び退くことなど出来るはずもなく

手に持った短剣で刃を逸らすのが精々だ。


「っち、クソッ!ちったぁ加減しろってんだっ……ぅぐっ?!」


 タイミングがずれたのか、ずらされたのか。

 それまで相手の剣戟を逸らしていた短剣が手元から弾き飛ばされた……やべぇっ!


「ッフ!今度こそこれで終わりだ!!」


 短剣を弾き飛ばしたその刃は、胴を薙ごうと迫るっ。


「っクソがァ!!終わってたまるかァっ!!」


 俺はとっさに腰に佩いていた黒の剣を握り、引きぬいたその刀身で

朱い刃を防ぐ……っ!!

 気のせいだろうか、その柄を握り鞘から引きぬいた時点で

身体の負担が軽くなった気がする。


「くっ!!……それが黒の剣か……禍々しいまでの黒……っ!!」


 防がれても尚、手に持った刃で黒の剣ごと俺を薙ごうとしていた

斑鳩は、急に間合いを離したかと思うとその場で何かを確かめるように

手を開いたり閉じたりしている。


「(魔力を……喰われた?)……本物を見るのは初めてだけれど、それでも

 戦況は変わっていないよ、僕が未だ有利なことに変わりはない」


「……出来れば、コイツは使わずに済ませたかったんだけどな

 そうも言ってられないか……」


 俺は、逆手に握りしめた黒の剣リベリオンを前に突き出す。


「っ?!何かわからないが、君に行動は起こさせないっ!!」


「ハッ、焦んなよ先生ェ!!……"障壁、展開シールド・セット"!!」


 抜き身だった宝刀を納刀し、先ほどと同じ構えで詰めてくる斑鳩を見た俺は

腰のポーチから簡易魔導符スクロールを取り出し、キーを唱える!


 ギャリっ!!ギチギチギチ……っ


 俺の周囲に短時間ながらも強力な障壁が発生し、直前まで迫っていた

朱い刃を防いでくれる。


「くっ?!障壁か、チィっ!!!」


 斬っ!斬っ!と斑鳩は障壁を切り裂こうとするが、時間を代価にしてその防御力を

あげた特別製なので魔神相手でも多少持つという、製作者のお墨付きだ。


「わりぃな、先生……少しばっか待っててくれよ?

 『拘束術式解放、強化レベル抑制解除……

  黒の剣リベリオン、起動……汝が贄を、喰らい尽くせ……』っ!!!」


 設定キーの詠唱完了と同時に、周囲に漂う魔力が一気に黒の剣を通じ、

俺へと流れこんでくる。

 ……前回使った時よりも、収束するスピードと量が上がってる?




 009-2


「あれ、が……黒の剣リベリオン……?」


「みたいやね……オレも初めて見るけど、なんやろなアレ……」


 フリオの言葉には反応せず、少女は眼下の現象……黒の剣の発動を凝視する。


「嘘、周囲の魔力を収束、循環させてる……違う、あれは……喰らってる?」


「……姐さん、どうしたん?」


「ちょっと黙ってて!気が散る!!」


 話しかけてきた相手を一喝して黙らせ、なおも少女は思考に没頭する。

 魔導を極め、深淵を覗いた自分ですら解らない……アレは、なんだ?


「……フリオ、今張ってある結界の上に、更に結界を重ねがけして」


「ええけど……何かわかったん?」


「解らない、解らないけど……今、ここで黒の剣の存在が上に知られる事は

 避けたほうがいいと思うの」




 ギリッ!ギチッ……パリィィィン!!


「よしっ、貰ったァ、ハァァッ!!!」


 障壁の破られる音が響いたと同時に、朱い刃が俺の首を刎ねようと

その剣閃を閃かせるっ!


「そうは行くかってんだ、っラァっ!!!」


 が、その刃を黒の剣リベリオンで防ぎそのまま、斑鳩を

蹴り飛ばした。


「くっ?!……なるほど、さっきの魔力の収束は、自己の強化というわけだね」


 俺の蹴りを、宝刀をとっさに盾にすることで防ぎ蹴られた勢いに乗って

間合いを離される。


「そういうこった、コレやると加減が難しいから使いたくなかったんだけどな。

 ここまできたらそうも言ってられねぇ……痛い目みんのは覚悟しとけよ、先生ェ!!」


 姿勢を低く保ち、這うような姿勢で間合いを詰めていく。

 相手は、斬撃を飛ばしつつ間合いを離そうとするが、今の俺なら

多少の傷は無視出来る……っ!!


「ッフ!!そこだっ!!」


「食らうかよっ!ッハ、そこぉ!!」


 地を這うように疾走る俺を狙い相手の朱い剣閃が迫るが、一瞬だけ飛び上がり回避。

そのまま身体をひねり、勢いのままにたたっ斬る!!


「っセィっ!!雑な攻撃で僕に当たると思うなぁっ!!"影刀"!」


 気合い一閃、先ほど見せた"音よりも疾い斬撃"が牙を剥いて迫り来るっ!


「ォォォオオオオオ!!っ根性ォォォォ!!!」


 迫るその剣閃に、俺はあえて左手を突き出した。


 ゾブリっ!!


「っぐぅぅ、いってぇェェ!!」


 黒の剣の強化で再生するとはいえ、痛いものは痛い。

 けど、これで僅かにでもその刃は止めれた!!


「っく?!君はバカか、己の腕を囮にして"影刀"を止めるなんて?!」


「バカで悪かったな……っ!!オラ、喰らえぇぇっ!」


 この止め方は予想外だったのか、動揺する斑鳩に俺は黒の剣を下から

すくい上げる様にぶん回し、術式もへったくれもない魔力と剣圧の混じった

衝撃波を叩きつけてやった。


「ぐあぁっ?!っく、面白い真似をするねっ!!」


「ハッ、この前殴り合いでみた、魔神の一撃がヒントでな……上手く出来てよかったぜ」


 斑鳩の攻撃が線ならば、こっちは面の攻撃でせめてやる。

 相手が、その疾さで攻めてくるんならこっちは力でゴリ推してやらァ!!


「これこそ……っ!力こそパワー!!」


「意味が被っている!!……しかし、さっきまで死に体だった君が黒の剣を

 握った途端、今の僕と拮抗するまでになるなんてね……君、本当に人間かい?」


「同じ事、前にも聞かれたよ……俺は人間だよ、死なない、死ねないだけのな。

 先生さん、アンタも今言ったろ?俺は、コイツの力を借りてるから

 こうして立っていられるだけなんだよ」


「……例外過ぎた遺物は、所有者を自ら選ぶ。

 君は、黒の剣に選ばれたからこそ、そうして力を振るえる……

 謙遜する必要はないよ」


「?なんだよ、急に」


「……フフッ、この戦いの結末がどうなるかわからないが、これから先……

 君がそれを持ったまま進むのであるならば……君と同じ"契約者"には

 気をつけろ……彼らもまた、選ばれた存在だ」


「あン?……先生、あんた一体何を知ってるんだ?」


「……あまり時間がない、手短に教えてあげるよ。

 僕は、ある組織に属している……あの道場の世話になるずっと前からね。

 その組織……珠喜やその父のような魔神、君みたいに契約者となった者を

 監視している……いや、管理されているといったほうがいいか」


「……あまり趣味のいい話じゃねぇな」


「今となっては、僕も監視される側に回るのかもね……ここで勝てたらの

 話だけれど」


 わずかにだが、斑鳩の表情が曇る……まるで自分はここで終わるのだとでも

言いたげな、さみしげな笑みを浮かべる。


「ハッ、陰気くせぇぜ先生、んなことより続きだ……

 あんたぶん殴って、さっさと連れ帰らないと俺も仕事を終わらせられないんでね」


「……くっくっ、あまだ諦めていなかったのか君は……

 いいだろう、さっきも言ったが僕も負ける気はない、君を倒し僕は進む!」




 009-3



「あぁ……どないしよ、姐サン……これでオレら、あのニイちゃんに

 組織の人間やねんって自己紹介できんくなったで?」


「大丈夫、いざとなったらフリオに全部なすりつけてワタシは逃げ切るから」


「ひどっ?!……にしても、黒の剣を起動させた状態で安定しとるな……」


「えぇ……けれど、なぜ黒の剣と契約した代償が不死の呪いなのか

 理解したわ……アレは、自分の持主を己が能力に適するように変質させてるのね……」


 月夜の下、剣舞を再開した黒と朱。

 片や魔人、片や不死の人間……どちらも、元は人間。


「……ねぇ、フリオ?疑問に思わない?」


「ん?何がやの、姐サン?」


「どうして、契約者には人間だけが選ばれるのか……

 その力を制御出来るというのであれば魔種にだって契約者が居ていいはずよね?」


「あー……言われたらたしかにそうやな。

 組織で管理できてる契約者はどれも人間やし……

 "教会"におる契約者も、人間やったっけ?」


「そうよ……それに、契約者が得た力は、使いようによっては単騎で魔神と

 戦える能力……これって」



『そこまでだ』



「「?!」」



 上空に浮かぶこの結界には、少女とフリオの二人しか居ない。

 にも関わらず、響いた第三者の声。



『……さすがだな、"深淵の魔女"、僅かな情報から

 そこまで解き明かすとは……だがまだ早い……まだ、気づかせる訳にはいかない」


 現れたのは、赤銅色の肌に碧の瞳を持った朱い魔神、バルバトス。


「貴方、この国の……っ!?」


 ドサリ、と音がした方をみるとフリオが倒れている。


「心配ない、記憶を消したと同時に眠ってもらっただけだ」


「……何を、考えているのかしら、貴方は?」


 バルバトスは何も言わず、少女の頭に手をかざす。



「……時が来れば、貴様は自力でまた答えに辿り着くだろう。

 今はまだその時ではない……それではな」


 つぶやかれた言葉と同時、少女の意識は暗転し、闇に落ちた。

 

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