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BANDIT!  作者: 望田 壱
The blade for who?
21/28

006


 006-1


「ボクと、先生の関係……ですか?」


 飯のあと、道場の練習風景を見物していた俺は稽古が終わると

同時に、充てがわれた部屋へ帰り訪ねてきた珠喜に、気になっていた

事を聞いた。


「あぁ、下世話な話かもしんないけれど、剣の道の師弟つっても

 男と女だ……そこに何かあっても不思議じゃないだろ?

 もしかしたら、そのあたりのことで斑鳩が家宝の刀を

 持ちだした理由があるかもしれないしな」


「そう、ですか……多分、クロスケさんが考えているとおりです」


「……男女の仲だった、って事でいいんだな?」


「はい……はじめは互いに、剣の腕を磨く仲間であると共に師弟でも

 あったわけなのですが……先生の優しさに触れているうちに、

 気がつけばあの人を好きになっていたボクがいました……」


 皆に隠れて逢瀬を続けた事。

 互いに手を繋ぐだけで、幸せになれた事。

 斑鳩と過ごした日々を、思い出しながらなのかゆっくりと

珠喜は語っている。


「このまま、幸せな日々が続けばいいな……なんて思ってました。

 ……先生が、父上を斬り伏せ御神刀の一振りを持ちだして

 しまわれるまでは……」


「……それは、急にだったのか?

 何か前兆みたいな物や、きっかけはなかったのか?」


「前兆や、きっかけですか?……いえ、思い当たることは……

 ただ、先生が刀を持ち出す少し前に、ボクが一族の力を継承する

 儀式についての話が上がってたくらいです……けどそれだって

 その事を知っているのはボクや父上くらいでしたし……」


「……そういや、斑鳩から珠喜に伝言があったな。

 『僕にはもう構うな、君はそのままの君で居てくれ』、だとよ」


「先生が……その言葉をボクに……?」


「ああ……さて、ちょっと街に出て甘いもんでも食ってくる」


「あ、はい、あまり遅くならないようにしてくださいね?」


 わかった、んじゃな……と俺は適当に返し、部屋を出る。

 ……しかし、一体あの斑鳩ってのは何が目的で、行動を起こしたんだ?



「……ボクは、そのままのボクで、か……」





 006-2


「……なぁ、斑鳩はん……そろそろ諦めへん?」


「フリオか……僕はもう、"組織"とは関係無いはずだ。

 君の忠告に耳を貸すことはないよ」


 薄暗い通路の中。

 地下牢の格子を挟んで、男二人が言葉を交わす。



「はぁ……あのなぁ、あんさんが組織から抜けたいうても、本部はそれを

 認めてないんやで?せやからまだ斑鳩はんは組織の人間や」


「……だからといって、あの子に魔神としての力を宿らせ、新しい監視対象

 にするというのか君は……女の子を四六時中監視するなんて、

 趣味が悪いと思うよ」


「あぁ、もう……誤算やったわ、まさかあんさんほどのお人が、

 監視対象の娘はんに惚れてまうなんて……

 それどころか、魔神としての能力を次世代へ渡すために必要な

 触媒をギッてまうなんか何考えとんのや……」


「どうとでも言うといいよ、フリオ……

 あの子は、魔神なんかにするべきじゃない……普通の、魔種の女の子として

 一生を過ごして行くべきなんだ。

 それを、組織が管理しやすいと言うだけで魔神に仕立て上げるのは間違っている」


「……それ言うんなら他の魔神や、その血族はどうなるんや?

 あんさん、それと同じ事を他の魔神にも言ってやれるんか?」


「話題をすり替えるな、フリオ。

 僕は、ただあの子には魔神になってもらいたくないだけだ」


「他はどうでもええっちゅうんかい!」


「他は関係ない!!」


 互いの意思と言葉がすれ違い、噛み合わない事に苛立ち衝突する。


「……はぁ、本当になにやってんのや斑鳩はん……

 明日になれば、姐さんもきて儀式は始まるんやで?

 その時に、そのバルバトスの宝刀をあんさんが持っとるままやったら

 何が起こるか……」


「何も起こらないさ……儀式は失敗し、あの子に魔神としての能力は

 引き継がれない。

 ……それさえ終われば、この宝刀は返してやるさ」


「それやと意味が無いんやっちゅうに……まぁえぇ。

 また後でくるさかい、ちゃんと考えてや」


「来ても一緒だ……そういえば、昼間ここに来た人だけど

 アレは組織の差し金なのかな?」


「?……この城には俺とあんさん以外は組織の関係者はおらんで?」


「いや、どうも忍び込んで来たらしい……名は、クロスケ……

 と言っていたかな」


「?!……そうか、それなら斑鳩はんはそうして手に持ってる宝刀、

 返してもらえるかもしれんな」


「……どういうことだ?」


「……ここに来たっちゅうそのクロスケって人な……

 72柱のアモンとやり合っても生きとる、"契約者"やで」


「なっ……そう、か……ふふっ、また来るとも言っていたな彼……

 この刀を狙ってくるか……そうか……」




 地下牢で斑鳩と話をした後、フリオはその開いているかどうか

分からない糸目で眼前に広がる風景を眺めていると

その背後の空間が大きくゆらぎ……やがて紫電を纏った真っ暗な孔が広がる。

 

 孔の中より、唐突にニュっと突き出たのは年代を感じさせる金属製の杖。

次に、その杖を握る白磁のような指先が見え始めた。

 次第に、その手の主が全身を現し始めると同時に孔は少しずつ閉じていき・・・


「……フリオ、"黒の剣リベリオン"が見つかったというのは

 本当なのかしら?」


 現れたのは、流れるような金糸の髪に、金色の瞳。

 全体的にフリルをあしらった紫のドレスを纏った少女。


「ををー、姐さん到着したんか、早かったなぁ」


「その胡散臭い口調をやめなさい、この糸目」


 ファサぁ、と顔にかかったその金髪を優雅にかきあげながら

尊大な態度でフリオに言葉をかける。


「そないな事をいうたかて、これがオレやし」


「……まぁいいわ。それで?黒の剣の契約者がこの国に

 居るのは本当?」


「ああ、それなんやけど……姐さんて、今回のこの国におる

 魔神の、継承の儀の担当になっとるやろ?」


「?えぇ、暇してたらあのハゲにお願いされたから向こう3ヶ月の

 休暇と引き換えに、受けてあげたけれどそれが何か?」


「うん……実はな?継承の儀の対象になっとる魔神……バルバトスの

 宝刀をな、斑鳩はんがギッてしもた挙句に返さんとか言うてんねん」


「はぁ?!斑鳩って、倭国支部の"影刀の斑鳩"よね?

 ……どうしてそんなことになってるのよ?」


「……それが、どうもバルバトスの跡継ぎに惚れてもうたらしくてなぁ。

 その子に、魔神としての生をさせるわけにはいかん言うて……」


「呆れた……で、それと黒の剣の契約者と何の関係があるのよ?」


「そこなんやけど、魔神の一族もさすがに宝刀が無いままだとアカン

 言うて、宝刀の奪還を依頼したらしくてな……それが契約者やねん」


「あぁ、そういう事なのね……ソイツ、今何処にいるのよ?」


「ん?あぁ、さっき使い魔からの情報やと街の甘味屋さんあたりに

 おるんちゃうかな?」


「……そう、ちょっとソイツの顔でも見に行ってくる」


「はいな、ごゆっくり~」


 言葉通り、町に降りていく少女を見送るとフリオは立ち上がり

帽子を片手で抑えながらひとりごちる。


「はぁ……組織から受けた、ここの支配体制の立て直しとか

 難儀な仕事やなおもてたけど、けっこうおもろなってきたなぁ……」



 

 006-3


 甘味屋であんみつを食いながら、俺はあの斑鳩先生からどうやって

御神刀を返してもらうか考える。


「……付き合ってたっつー話だし、それに別れ際のあの言葉……

 珠喜に関する事が原因な気はするんだけどなぁ」


 そういえば、魔神の力を継承する儀式、ねぇ……。

 つつけるとしたらその辺りか?


「……いろいろ情報が足んねぇな……もうちょい核心に迫れる何かが

 欲しいとこだな……」


「ちょっと?アナタそこをどいてくれないかしら?ジャマ」


「んあ?」


 すぐ後ろで声がしたので振り向くと、アリスの腹違いの妹であるアリアと同じくらいか、

少し上くらいの少女が仁王立ちでこちら、っていうか俺を睨んでいた。

 ……すげーフリフリしてる……ゴスロリってやつか?


「聞こえなかったのかしら?ワタシはどきなさいといったのよ?

 ……何かしら、そのギラギラした目で視姦しないでくれるかしら?」


 えっ、なんで初対面の相手に罵られてんの俺?

 そんな、少女に罵られて喜ぶ趣味とか無いんだけど?


「……うん?アナタよく見たら……」


「……なんだよ?」


「いえ、なんでもないわ……何?なにか言ってもらえると思って?

 ワタシみたいな美少女に声を掛けられただけでもありがたく思いなさいよっ」


 言いながら、ゴスロリの少女は俺の隣に座り、ちらりと

こちらを見ると


「……店主!ワタシにもコレと同じ物をいただけるかしら?」


「コレって……いや、なんなんだよほんとに」


 しばらく、そのゴスロリ少女と隣り合って座る。

アレ以降はとくに絡まれる事もなかったのだが、あんみつ二杯目を

頼もうとすると、くい、くいっとインナーの裾を引っ張られそっちを見る。


「……何かようか?」


「あ……ふ、ふんっ!何か構ってほしそうな顔をしてたから

 少し気を引いてあげただけよっ!」


「はぁ?……あー、なんだ、暇、なのか?」


「……コホンっ、そ、そうね……暇だから、アナタの話でも

 聞いてあげようかしら?!」


「あン?……俺が話すのか……

 うーん…………例えば、大事なモンを相手に取られて、それを返せっつっても

 返さないって言われたらどうするよ、お嬢様」


「お、お嬢様だって……んんっ!そ、そうね……

 その取られたものを、相手から返したくなるように仕向ければいいんじゃないかしら?」


「例えばどうやって?」


「そうね……実はその取られたものを持ってるだけですごく良くないことが

 起きるとか、それがないと困る人が居ると言って、罪悪感に働きかけて

 返すように仕向けるとか?」


「んー、なるほど……珠喜の話と上手く合わせればいけないこともないか……?

 いや、あんがとなお嬢様、こう光明が見えた気がする」


 俺は、そう言ってゴスロリ少女の柔らかそうな金髪を撫でる。

……と思ったら、その手を払いのけられた。


「ありゃ?」


「き、気安くワタシの頭を撫でないでよね?!

 このっ、ヴァーカ!!」


 そう言い残すと、少女は一目散に店を出てあっという間に逃げ去る。


「なんだぁ……?

 まぁ、いいか……おっちゃーん、勘定ーっ」


「あいよっ……はい、こんだけね?」


「はいはいっと……ん?おっちゃん、これ間違ってね?

 俺二杯しか食ってないけど三杯分になってるぜ?」


「何いってんだよあんちゃん、そこに皿3個あるだろ?」


「何って…………あ」


 あのガキ、食い逃げしやがった?!




「を、戻ったんかいな姐さん?」


「フリオ……やばい、超ヤバイ」


「……なにがやばいんよ、姐さん」


「"黒の剣リベリオン"の契約者に会ってきたの。

 ……ヤバイ、超好み。ああいうワイルド系たまんない、こうなんて言えばいいの?

 付き合ってあげてもいいって思った」


「えー……姐さん、そんな惚れっぽかったっけ?」


「数百年生きてきたけど、あそこまでドストライクなタイプ居なかったのよ……

 彼、名前なんていうの?」


「ニイちゃんの名前か?……たしか、クロスケいう名前やったとおもうで?」


「クロスケって言うのね、そう……ウフフフフ、いい名前じゃない……

 決めたわよ、フリオ!あの契約者、ワタシのものにするから!」


「はぁ…………(これ、魔神の孫娘はんのこと言うたらどうなるんやろか)」


「フフッ、アンタに呼ばれてめんどくさいって思いつつ来たけれど、

 今は感謝してるわよ、フリオ?」


「さよか……感謝されてんなら、オレの仕事を手伝ってほしいとこなんやけど」


「いいわよ?今は気分がイイんだから、ワタシ……で、何を

 どう手伝えっていうのかしら」


「(ほんまに気分ええんや……)それなんやけどな、斑鳩はんを説得しよと

 おもてな……ついでに、あのニイちゃんの腕試しや」


「ニイちゃんって……契約者のクロスケ

 ……なんだか嫌な予感しかしないんだけれど、でも……

 実際、黒の剣がどういうものか見てみたい気もするわね」


「せやろ?……それで、斑鳩はんにはあのニイちゃんとちょっと

 ガチでってもらおとおもてな……そんで姐さんに言って貰いたいねん」


「……ワタシに何を言わせたいのよ?」


 ゴスロリの少女にそう問われると、フリオはその糸目を

楽しそうに曲げ



「……簡単や、"契約者クロスケに打ち勝てば、継承の儀式は

 行わない"、そう言うてもろたらええねん」


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