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BANDIT!  作者: 望田 壱
The blade for who?
18/28

003

 

 003-1


 船旅も、4日、5日めになるとさすがに真新しさもなく俺たちは、

客室で倭の国についてからの行動予定を練りなおしていた。


「そういや、今更なんだけど領主サマにお願いして

 城にいる先生ってのと会わせてもらえるようには出来ないのか?」


「……最初は、ボクもそう考えていたんですけどお城に行っても

 先生に会わせてもらうどころか、お城の中にも入れて貰えない状態で……」


 ってことは、完全に接触を避けられてるって事か。

 ……そこまでして、家宝の刀が欲しかった、とは思えないな。

 もっと、別の理由があるとしか……。


「ボク……先生に嫌われてしまったのでしょうか?

 あの方の指導はきちんと守っていましたし、一度も嫌な顔もしなかった、それに……」


「あー、あまりそう考えこまないほうがいいんじゃねぇか?

 何か理由があって、くらいで思っとかねぇとできることもできなくなるぞ?

 ……まっ、会って貰えないって言うなら強引にでも会いに行くしか無いんだろうな」


「……そうですね、うん……クロスケさん、ありがとうございます。

 少し、気分が楽になった気がします」


 珠喜はそういうと、儚げに微笑む。

 ……なんだろうねコイツのこの、妙に達観というか、落ち着いた雰囲気は。



 その日以降は特にこれといった変化もなく、ゆっくりとした

船上での時間も過ぎていき9日めの夜。

 倭の国に着いた後は、この仕事が終わるまでは珠喜の実家である

道場に隣接された屋敷に部屋を用意してくれているのだという。

 宿を探す手間が省けたなぁなどと、ベッドに入って考えていると

 


「……クロスケさん、起きて、ますか……?」


「……どうかしたか?」


 隣のベッドで横になっている珠喜から、そう声を掛けられた。


「今回は、急なお願いにもかかわらず受けていただいてありがとうございます。

 ……本当は、ギルドって所を通さないとクロスケさんのような冒険者の方には

 依頼を出すこともできないんですよね?」


「駄目、ってわけじゃないけどな……ただ、何か問題があった時に

 ギルドを通していると色々と融通が効くってのがある」


 少し目が冴えた俺は、ついでだからとギルドの仕組みを簡単にだが

話してやることにした。


「話に上がったギルド……俺は盗賊ギルドに所属しているんだが、

 そもそもこのギルドって集まりがどういう組織がわかるか?」


「えぇっと……同じ技術をもった人たちの集まり、でしょうか?」


「ん~、まぁ大体そんな感じだ。

 一つのギルドには、大抵その道に通じた奴が集まってる感じだけど

 じゃあ他のギルドに所属したり、依頼を受けたりは出来ないのか?って

 いえばそうでもないんだ」


 盗賊の技術を持ちながらも、商人としての才能を持っている。

そんなやつは商人ギルドと盗賊ギルドを掛け持ちしている。

 また、別種のギルド同士での繋がりも無いわけではなく、特に傭兵ギルドと

商人ギルドは、商隊キャラバンを組むことが多いのでその関係は密接だ。


「へぇ……なんだか、すごいんですね、ギルドって……」


「倭の国には、ギルドってなかったか?」


「はい、ボクの国は個人や、信頼のおける仲間同士で問題がおきたら解決、って

 事が多くて、それでもどうにもならない時は領主様にお願いをするって

 感じですね……」


「ふぅん、今時ギルドのない国ってのも珍しいな」


 そういや、倭の国は他の大陸とは切り離されてるんで独特の文化が

発展したってどっかで見たな。


「まぁ、それなら今回の件は誰にも言えないよなぁ」


「はい、まさか領主様が話を聞いてくれないとは思いませんでしたし、

 その領主様のもとに先生がいることを考えると……」


「だなぁ……そういえば、最初に話をした時から気になってたけど

 アンタの親父さん、俺を知ってるんだったか。

 一体どういう経緯で俺の事を知ることが出来たんだ?」


「……ボクの一族の事なので詳しくは言えないのですが、少し込み入った事情で

 父上は倭国だけでなく大陸の、色々な情報を知ることの出来る立場に在るんです」


「ふーん……それでも、ピンポイントに俺のことを知ってるなんて珍しいな……」


 特に意味もなく、そんな事を呟いたのだが、相手は居心地が悪いのか

ごまかすように顔を伏せる


「……まぁ、いいか……それで親父さんに教えられた通り大陸に渡って

 俺を探しに来たって事か」


「あ、はい……すみません、怪しいですよね?

 要領を得ない話ですし……」


 怪しいって言われたらたしかに怪しいが……まぁ盗賊一本で活動してた頃は

 それなりに遺跡荒らしもしてたしなぁ……そういう意味じゃ、

 他国に名がしれててもおかしくはない、のか


「あの、クロスケさん?どうかしましたか……?」


「いや、そういう事情があるんなら俺の事を探しに来たってことに

 説明はついたし、問題はねぇよ」


「そ、そうでしたか……あの、クロスケさん?そろそろ夜も遅いし

 寝ませんか?」


「ん、それもそうだな。

 何もなければ目が覚めたら到着だろうし、寝るか」


「は、はい……その、おやすみなさい」




 003-2



「ぐあぁぁ……昨日に限ってなんだよあの揺れは……」


「お、落ち着いて下さいクロスケさん?!ほら、とりあえず下船する他の方の

 ご迷惑ですから、移動しましょう」


 夜中、少し海が荒れていたらしく揺れた船内での夢見は最悪だった。

 幼少の頃、健全な肉体に健全な武力は宿るとかわけの分からない論理展開で

魔獣が跋扈する森に一週間、放り出された事を夢にみた。

 ……あれ、よく生きてたなぁ俺。


「く、クロスケさん……まるで魔獣の跋扈する森に一週間放置された

 幼子のような顔になってますよ?!」


「見てたの?!」


「いえ、なんとなくそんな気がしただけです……」


「びっくりするわぁ……ちなみにそれ、まんま夢で見た内容」


「そ、そうなんですか?……クロスケさん、もしかして

 幼少の頃、ご家庭で問題があって盗賊になられたとか……」


「いやいや、問題なんてない普通の家族……ならガキを

 魔獣の森に放置しないよな、やっぱり問題あったかもしれん」


「あ、あはは……じょ、冗談ですよクロスケさん?そんな

 本気にとらないで下さい。

 ……そういえば初めてお会いした時、ボクの太刀筋をあっさりと

 躱していましたがなにか武術でもされていたんですか?」


「んー?……いや、正式にコレやってたってのはないな。

 ガキの頃から、チャンバラごっこの延長で親父や兄貴に

 剣の振り方を教えてもらってあとは我流、だな」


 地元に帰ってきたことで、珠喜の表情は幾分和らいでいる。

 やはり、外国に出るということで緊張していたのだろうか。


「まっ、それはそうと……とりあえず、予定してた通り一度アンタの

 家っていう、道場にいくんだろ?ここから近いのか?」


「あ、はいっ……そうですね、ここからだと半日も掛かりませんよ?

 山一つ越えた所に町があって、そこに道場を構えてますから」


「ふーん…………ん?」


 山を越える?ああ、あれだろ倭の国ではちょっとした小高い丘を

山って言うんだなそうだろうそうに決まっている。


「それでは、暗くならない内にクロスケさん、行きましょう!!」


 そんなに家に帰れる事が嬉しいのか、俺の手を引っ張りグイグイを歩き出す。

行こうとしているその方角には……


「……うん、あれは丘だ、ちょっとどころか相当高いが丘なんだ。

 所々岩肌見えてたり、人が歩ける道あんのかよって雰囲気だが丘だ」


「あはは、クロスケさん……あちらに見えるのは丘ではなく山ですよ?

 あの山を越えたらすぐですから、行きましょう」



「だりぃー、疲れたぁー、歩きたくねぇー」


「……クロスケさん、その、本当に大丈夫ですか?」


 その言葉に、俺はどうにか手を振り返す。

 おかしい、いくら山歩きは慣れてないといってもこの消耗は異常だ。


「はあぁぁぁ……なぁ……この山、ってなんか特殊な場所だったりするか……?」


「この山ですか?……あぁ、そういえばこの山って今でも巫女達の

 修行場になってたりしますね」


「……巫女さんってなんぞ?」


「そうですね……巫女というのは倭の国では、死者の魂を鎮め、死後の国へ正しく

 導く役目を持っているんです。

 この山には結界が貼られてまして死んだ後、迷ってしまって救いを

 求めている魂が呼び寄せられているんです」


「ふぅん……教会の神父、シスターみたいなもんか」


 どうでもいいけれど、シスターって言葉の響き……

いろいろ妄想が捗るよね。背徳とか調教とか。

 ……こんどアリスにシスターの衣装でも着てもらおう。


「なのでこの山は巫女達の修行場になっているんですが、ただ

 結界に呼び寄せただけでは、中には危険な魂も存在します。

 そういった荒ぶる魂を押さえつけるための力場も形成されていますね」


 あぁ……つまり、不死の呪いを受けている俺は、死者として

認識されてんのか、この山に。

 んで、結界と力場が作用してここまで消耗させられてると。

……めんどくせぇ。


「でも、クロスケさんがそこまでお疲れになるのは妙ですね?

 ……ま、まさかクロスケさん?!」


「な、なんだよ……?」


「もしかして、亡者の類い……とかではありませんよね?」


 ……自分ではちゃんとした人間と思ってるけど今の話聞いて

この怠さだとちょっと自信なくすな。


「もし、そうなら……た、たいへんだ!!このままじゃクロスケさんが

 成仏しちゃう?!クロスケさん、急いで山を降りましょう!!」


「いやいや、成仏なんてしないからね?人間だからね、俺?」


 なんか、とんでもない方向に勘違いされているフシがある。



「あ、あははは、じ、冗談、冗談ですよクロスケさん!

 いや、あの……その、すみませんでした……」


 ようやく山を越え下山する道へ入るに従い、体力の消耗は緩やかになった。


「まったく、ひでぇ話だよな……山歩きはあんま慣れてないから疲れたんだよ。

 大体、俺みたいなちょーイカす男がどうやって亡者にみえるよ?」


「えぇっと……アリスさん、居たじゃないですか?」


「ああ、アイツがどうにかしたか?」


「いえ、なんだかすごく育ちのよさそうな方に見えたのでその……

 なにか悪い魔法にでもかかっているのかと思いまして……」


「あぁ……たしかに魔法にはかかってるかもな……

 俺との、恋の魔法ってやつにサっ!」


 キラっ!と、星なんか飛ばしてみた


「あ、いまのなんか少しイラってしました」


 ここ何日かずっと行動を共にしてるせいか珠喜は俺に対し

遠慮がなくなってきている。

 ……こいつ、口調は柔らかいんだけど時々えぐってくるな。


「まぁそれは冗談なんですけど……あ、ほら見えて来ましたよ?

 あそこに見えるのが、ボクの道場のある街です」


「をー、結構栄えてんなぁ……

 遠くに見える、湖のほとりにたってんのが領主の城か?

 大陸のソレとは随分様式が違うんだな」


「はい、とくにあのお城は倭の国でもその外見と風景が合ってて

 わざわざお城を見に来るためだけに訪れる方も多いんですよ」


「へぇ……今度は仕事抜きで観光として来てみてぇなぁ」


「あはは、機会があれば是非っ」


 答えながらも、そいつは遠くに見える城から視線を外すことはなかった。

 しばらくそうしていたが、やがて行きましょうと、俺は珠喜に

先導され街へ向かうことにする。




 003-3


 町に入り、行き交う人々の喧騒を聞きながら歩き続け

大きな門の前にたどり着く。

 その内側からは、道場の弟子、とでも言えばいいのだろうか。

 鋭い掛け声とともに、硬いものを打ち付け合う音が聞こえてくる


「はぁ……こう、アンタの話だけ聞いた限りだと、もっと

 陰鬱な雰囲気にでもなってるかとも思ったけど、そうでもないんだな」


「はい、御神刀や先生の事は、門下生の方達には隠してありますから。

 ……皆、良い人ばかりなので、話が知れたら領主様のところに

 直談判しに行きかねませんから」


 だから、内密に解決する必要があるんです、と。


 門を潜り、そのまま正面の玄関とおもわれるところには向かわず脇に

進む……と、そこには


「……をを、珠喜さま!!」


 筋骨隆々とした、いかにも戦士といった風貌の男が上半身をはだけ

おそらくは稽古でにじみ出た汗を拭っていた。


「ただいま戻りました、隼さん!!」


「よくお戻りになられましたな、珠喜さま……と、このような格好で

 申し訳ございませんっ」


「あはは、ボクは慣れているので大丈夫ですよ?」


「……そういえば、そちらの方は?」


 隼、と呼ばれたその男は警戒するような目つきで俺を睨んでくる。

 ……ガタイの割りには鈍重な雰囲気がないな。


「えっと、クロスケさんは旅先でボクが護衛をお願いした方でして……」


「珠喜さまが、護衛を……?」


「と、とにかく父上にも挨拶をしてきますね?

 行きましょう、クロスケさんっ」


「お、おう?」


 いまだ、睨むような視線のソイツを置いて俺は手を引かれ

屋敷へと上がり込む……あ、靴脱がなきゃ駄目なのね。



「その、すみませんでしたクロスケさん……隼さん、昔から道場の

 師範代として居る方なんですが、ちょっと頑固な方でして」


「あー、なるほどなぁ、俺みたいな不真面目な奴がアンタと一緒に

 行動してたってのが気に喰わないんだな」


「あ、いえ……それだけでも無いと思うのですが、まぁいいか……

 それより、今からボクの父上に会って頂きます」


「ああ、アンタの親父さんは事情は知ってるんだな」


「はい、今回の事でも父上が上手く隠してくれているおかげで

 表面上はなにも問題がないように振るまえてます」


「さっきの隼さんは?」


「あの人は、道場の師範代とはいっても、あくまで外の方なので

 巻き込むわけには……」


「そうか……確かに、話聞いただけで城にカチコミかけそうだしなぁ」


「あははは……ん、着きました……父上、ボクです、戻りました」


 膝を付き傅くような体勢で部屋の中に呼びかけると


「…………入れ」


 と、聞いただけでずしりとくるような、重厚感のある声が聞こえてくる。

その声に従い、その扉を横に引くと中に居たのは



「……よく参られたな、客人よ……拙者が、今代の一族の当主、朱忌……

 いや、アモン風に言うのであれば"72柱が魔神の一柱、バルバトス"だ」


 燃えるような真紅の髪に、瞳はエメラルドグリーン、その肌は

赤銅色の、"鬼"が、居た。

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