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BANDIT!  作者: 望田 壱
The blade for who?
16/28

001

クロスケ…………盗賊、契約者

アリス…………公爵令嬢、魔神の血族


珠喜…………異国の剣士

 

 序


 月夜に照らされた、夜空の下。

 周囲に建物の残骸らしき瓦礫が散乱する中で、二つの影が踊る。



「ハッ!セィアッ!ソラァ!くたばれぇっ!!」


「フッ!フンッ!甘いっ!当たらんよっ!!」


 朱と黒の刃が、打ち鳴らされる。

 やがて、より甲高く剣戟の音が高く響き渡ると二つの影は

互いに距離を取る。



「ハァっ、ハァっ……先生さんよ、いい加減観念して帰らねぇか?

 アイツも待ってるんだぜ?」


「フゥっ、ふぅっ……なら、なおさら帰るわけには行かないね……

 この宝刀は、渡せない」


 先生、と呼ばれた男は手に持った朱い刃を構え相手を睨む。

 睨まれた相手……黒い刃を手に、クロスケは半壊した城で目の前の

相手と斬り結ぶこととなった原因を思う。


 はぁっ、目の前の相手を依頼主であるアイツの元へ連れて帰れば

この仕事は終わりじゃなかったのかよ、めんどくせぇ………………




 001-1


 王都直轄の教会に属する司祭が、断頭台送りになるという事件から2ヶ月。


 あの出来事をきっかけに、俺は表向きは変わらず盗賊稼業……

 その影では公爵さんと直に契約を結び様々なうわさ話や、他の領主達の

情報を集める日々。


 隠し子という立場から、事件を経て正式に公爵令嬢して認知されたアリスは

そのまま公爵家に留まるかとおもいきや、俺のところへ押しかけ

殆ど新婚さん的な毎日を送っている……ただいまっていう相手が居るのは

嬉しい物だと最近気づいた。


 盗賊ギルドの連中に『俺、美乳の嫁さん貰ったから!!』と

吹聴してまわったらその大半に心配されるような目つきで

『何か悩みでもあるのか?病院行くか?』などと心配される始末である。



 そうした日々の中、仕事の帰り道。

 日が長くなったとはいえ、今の時間じゃあこの辺りは真っ暗である。


 アリスの待っている我が家へ急いでいると、妙な奴と遭遇した。

 そいつは、十字路のど真ん中で佇んでいる……手に物騒なものを持って。


 逃げたい。

 考えても見ろ、夜道にフードかなんかで顔を隠した奴が手に刀もって

佇んでるんだぞ?誰だって逃げたいって考えるわ。

 けど、そいつの口からでた言葉で俺は関わらざるを得ないのだと気付く。


「……貴方が、夜闇の追撃者シャドウチェイサーですか?」


 吐き出されたのは、透き通る鈴の音のような凛とした声。

 そして、聞こえた単語は俺の元の二つ名。

 俺は、悟られないように懐の短剣へ手を伸ばしつつ様子を探る。


「人違いじゃないか?俺は単なる悪たれバンディットだぜ?

 他を当たった方がいいんじゃねぇか?」


「………………」


 チャキリ、とフードは手に持った刀を構える。

 問答無用かよ。

 くそっ、ここんとこ恨みを買った覚えはない……ないよな?

 いかん、心当たりが多すぎてどれが原因か特定できん。

 大声あげて憲兵でも呼ぶか?……国家権力に泣きつく盗賊ってどうよ?


「っと……っ?!」


 風をきる音が聞こえたので、咄嗟に頭を低くする……さっきまで

俺の首のあった場所を、フードの持つ赤い刃が通り過ぎる。

 随分と綺麗な太刀筋だな……それにありゃ倭刀か?


「っふ!ハッ!」


 短い呼気と同時に、赤い刃が唸りを上げて迫ってくる。

……綺麗な太刀筋なうえ、殺気もないので何が目的なのかがわからない。


「よっ、と!あぶねっ?!……ふぅ、おいおい?一体何の真似だ

 あんた?人違いだって言ってるだろ?」


「……聞いている特徴と一致しています。

 貴方が、夜闇の追撃者シャドウチェイサーで間違いないですよね?」


 わかってるんなら聞くなよ。

 上手いこと言いくるめて誰かに丸投げしようとした計画がパーじゃねぇか。


「貴方の実力……確かめさせて頂きますっ!!」


 ダッ!とフード野郎は一気に間合いを詰めて来る。

 めんどくせぇと思いつつ、迎え撃つためにこっちも短剣を構え腰を落とす。

 ……が、俺の短剣が振るわれることはなかった。


「っぐ?!うぅ…………っ」


 フード野郎が、急に前のめりになりそのまま倒れたのだ。


「……?おい、どしたー……?」


 呼びかけてみたが、うう……と唸るばかりで答えがない。

 警戒は解かずゆっくりと近づき、手の届く範囲まで来た。


「おい……どうした?小石につまづきでもしたか?

 ちょっとぐらいなら、やり直してもいいぞ?」


 11行くらい前なら、やり直しも効くだろうと親切心を出してみた。

 ……が、返ってきた言葉は


「……お、おなかすきました…………」



 001-2


「あ、クロスケおかえりんこ~」


「はいはいただいまんぐろーぶただいまんぐろーぶ」


「ぶーっ!クロスケ最近冷たい!!出会った頃の情熱的な

 クロスケは何処にいってしまったの?!」


「最初からこんなんだろうが、前作の001最初からおさらいしてこい」


 帰った途端、子犬のようにじゃれついてくるアリスを躱しながら

ソファーに、担いでいた荷物を適当に放り出す。


「んきゅっ?!…………」


 声を出したソレを見たアリスは、俺から一歩距離を取り


「クロスケ……自首するなら今のうちだよ?

 わたし、貴方の帰り待ってるから……っ」


「何盛大に勘違い起こしてやがる、絡まれたんだよこのフード野郎に」


 アリスに紅茶ーと頼み俺は、担いでいたフード野郎を放り出したソファーの向かい側

に腰を下ろす。

 ……しっかしなんなんだこいつは一体?

実力を試すだの、腹減っただの……俺を探してたような感じだったけど。


「はい、紅茶……砂糖2杯とミルクたっぷりでよかったんだよね?

 ……で、この人は?」


「おう、あんがとさん……さぁ?なんか俺を探してたみたいで、いきなり

 斬りかかられた」


 俺の隣に座ったアリスは、ふーんといいながら珈琲をすする。

……こいつ、よくブラックなんか飲めるな。


「……この人、変わった服着てるよね、大陸側だとあまりみない感じの」


「そういやそうだな……前合わせの服って、倭の辺りの人間かこいつ」


 ますます謎だ……倭の国なんざ東方の、さらに海を渡った向こうの国。

そんなところから、わざわざ俺を探しに来た?


「そういえば、この人って男?女?」


 聞かれ、そういえばフードで顔隠してるからわからんかったなと俺は……

呼吸で上下する、そのなだらかな胸を見る。


「男だな、間違いねぇ」


「胸を見て判断するんじゃねぇ……女の人だったらどうするのよ?」


 ふむ、それもそうか……俺は、フード野郎のかぶっているフードを

おもむろに剥ぎ取り、その寝顔を確認してみる。


「あら、こうして見ると可愛い顔してるじゃない?」


 出てきたその容姿は……燃えるように紅く、長い髪に褐色の肌。

 その身に纏っている衣服が倭服のためかオリエンタルな雰囲気が

醸しだされている。

 気を失い、眠っているそいつの顔は、幼さが残るが意思の強そうな

けれども可憐さを失っていない目元に長い睫毛、細く整えられた眉。

 この容姿で、さっき聞いたあの声、か……マニア受けしそうだな

コイツ。


「クロスケ、あくどいよ顔があくどい」


「ああめんご、こいついくらで売れるかなって考えちった」


「外道め」


「褒めんなよ、照れるじゃ無いか」


 まぁ、冗談はさておき……どうするかね、コイツ。

 縛っとかないと、目を覚ました時にまた襲い掛かられてもかなわんしなぁ。

 

 などと考えていると、ソファーに寝かせてあるソイツは身動ぎし

目を覚ました。


「んう……ここ、は……?」


「あ、起きたんだ?大丈夫?どこかおかしなとこはない?」


「動くなよ?おかしな真似してみろ、窓からほっぽり出すからな?」


「うぇえ?!な、なんですかいきなりほっぽり出すとか?!

 ……あれ、そういえば貴方はさっきの……」


 ちっ、思い出したか……しょうがねぇ、意識刈り取って路上に放置

でもしとくか。


「はいはい、クロスケ外道なこと考えないっ。

 ……あなたも、何か事情があるのかもしれないけれど荒事はここでは

 ご法度よ?いい?」


「あ、はい……あの、夜闇の追撃者シャドウチェイサーですよね、貴方が……」


 俺の元二つ名を聞いた瞬間、アリスがプッ!と吹き出す……こいつっ!


「あーっ……話なら後で聞いてやらんこともないから今は……」


「すみません!夜闇の追撃者シャドウチェイサー!!貴方の力をお借りしたいんです!

 夜闇の追撃者シャドウチェイサーである貴方の力が!!」


 ソイツがその二つ名を連呼する度に、顔を横にそむけているアリスの肩が震える。

 ……よく聞くと小声で"ひぎぃ!!"、"もうだめぇ、それ以上言わないで"と

呟いている……くそっ、自分から名乗ってたわけじゃないのになんだこの公開処刑。


「お願いです、夜闇の追撃者シャドウチェイサー!!ボクの話を!!」


「……ごめん、俺のことはクロスケって呼んで構わないからその単語は

 もう口に出さないんで……ってか言うな」


「あ、はい」



「……んで、俺を探してたのはいいけど、さっきはなんで襲いかかってきたんだ?

 なんか実力がどうのこうの言ってたが……」


「ふぁい……ひふは……」


「いや、口の中のモン飲み込んでから喋れ」


「っく、んっ……っはぁ、はい、実は貴方にお願いしたいことが在るんですが」


「あー、言ってたな……ひょっとして仕事の依頼か?それも依頼する相手の

 実力を確認しねぇといけないほどの厄介な……他を当たれ」


「そんなっ?!お願いです、話だけでも聞いてくれませんか?!

 それにボク、貴方だけを頼りに海を渡ったんです、ここで断られたら……」


「……はぁ、そもそもどこで俺の話を聞いたんだ?自慢じゃないが、裏の世界じゃ

 それなりに名は通ってるつもりだけど、それでも倭の国にまで噂が

 行ってるような動きはしてないつもりだぞ?」


「それは……父上が、貴方の事を知っていまして……ボクの抱えている問題は

 貴方でしたら適役だろうと……それで……」


 それだけ言うと、今にも泣き出しそうな顔で俯いてしまう。

 ……ここまで言われて話も聞かないってんじゃさすがにダメか。


「ったく、めんどくせぇ……いいぜ、聞くだけ聞いてやる。

 話してみろ、お前が俺に頼みたいって事を」



 001-3



 ソイツの話の内容は、重いっちゃあ重いがまぁ、有り得そうな

話ではあった。


「えーっと、整理するわね?

 貴方の家は、元々大きな道場を開いてて、流派としても有名だけど

 何よりも有名だったのが、家宝だった二振りの対となった刀、ね?」


「はい、その通りです。

 ……道場を開いた初代の頃から、ボクの家に伝わる御神刀で

 お祖父さんも、父さんも大事にしてました……」




「けれどもその大事な刀を、あなたの先生が持ちだして領主様の元に

 行ってしまったと」


「……はい、先生はとても高潔な方で、誰からも尊敬される方なんです。

 もちろんボクも尊敬してましたし、その……あ、いえコレは関係ないですね……」


「う~ん……その先生が、どうして貴方の道場で家宝とされている刀を

 持っていったのか理由は?」


「それが、どうしてそのような事をされたのか誰も知らなくて……

 それに、止めようとした父上も先生に斬られてしまい……

 幸いにも傷は浅かったのですが、大事を取って療養しています」


「そっか……そういえば、貴方が持っているあの刀は?」


「……先生は、二振りのうち片方だけを持っていかれたのです。

 なぜ、そちらを持っていかれたのかも不明で……」


 その時のことを思い出したのか、ソイツははぁ……と溜息をつき

意気消沈する。


 アリスは苦笑いの表情で、どうしようと視線で俺に問いかけてくる。

……そんな目するなよ、わぁったよ、ったく……


「…………あぁ、めんどくせぇ……

 その領主サマってのは、御神刀だったか?それを

 持った先生さんってのを、何も言わずに迎え入れたのか?」


「……はい、それにどこか歓迎している節がありました……

 今思うと、もしかして先生は領主様に何か言われ、持っていったのかも……」


「どうだろうな、それは実際に調べねぇとわかんねぇな……

 アリス、お前はどうする?ついてくるか?」


「うん?……うん、付いて行きたいけど、また危ないことになって

 クロスケの足を引っ張っちゃうのは嫌だし、お父様の所で待ってる」


「……お前なら意地でもついてくって言いそうなもんだけどな?」


「本音はね?でも、クロスケなら絶対帰ってくるって信じてるから。

 ……ちゃんと帰ってきてよ?」


「状況にもよるけど、そう危ないことにはなんねぇだろ、多分。

 そういや、アンタ名前はなんていうんだ?」


 俺は、まだ名前も聞いてないことを思い出しソイツに尋ねる。

……おい、やアンタだと誰が何喋ってるかわかんねぇしな。


「あ、ボクですか?ぼくは、珠喜シュキって言います。

 宝珠の珠に、喜びってかいて、珠喜です」


 ふぅん、珠喜シュキ、ねぇ……なんとも中性的な名前だこと。


 にしても、倭の国か……厄介事になんなきゃいいけどなぁ。


元々第二章としてアップしていたのを改訂していく内に、随分短くなりそうなのでまとめることにしました。

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