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BANDIT!  作者: 望田 壱
BANDIT!
14/28

014



 014-1


「・・・っは?!」


 気がつけば、俺はどうやら担がれて何処かに移動中だった。

 なんだろう、あの後からの記憶がないんだけれど?


「・・・む?貴様、目が覚めたか」


 俺を担いで移動していた人物が、その足を止める。

 ・・・王都の、これは立ち並んでる建物の屋根の上を移動してたのか?


「一旦、降ろすぞ?」


「あ?あ、おう・・・??」


 そう言われ、担がれていた肩から降ろされた俺は

自身の足で立ち上がり、ひとまず周囲を見回し、ついで自分の体を

見下ろす・・・なんで上半身裸なんだ?


「その・・・済まぬ、少し力の加減を誤った・・・」


「なっ・・・寝ている間に俺にエロい事をしたんだな?!

 官能小説みたいに!!」


「何を言っているのだ貴様は」



 話を聞くと、どうやら目の前の相手・・・72柱の魔神の一柱、アモンは

自分の力を開放し、思いっきり俺を殴りつけたのだという。

 俺の力を過大評価していたらしく、持っていた剣で防ぐだろうと思っていたところ

剣は折れなかったが、俺の上半身がキレイに吹き飛んで焦ったのだという。

 いや、だから死なないってだけで力は普通の人間と変わらねぇって言ったじゃ

ねぇか、魔神の一撃なんぞ耐え切れる人間が居てたまるか。


「しかし、消し飛んだ貴様の体躯が見る間に再生していったのは・・・

 正直我でも引いたぞ・・・」


「アンタが仕出かした事だろうが・・・で、どこに向かってんだ?」


「をを、そうであった・・・貴様、あの司祭を追うのであろう?

 先ほど我と共に居た者から連絡が来てな・・・あやつ、どうやら

 この国からの逃走を企てているらしい」


 あぁ・・・まじか、めんどくせぇ。

 もうこのままどっかに行ってくれるんならソレも有りかとも思ったけど、

あの手の人間は、放っておくとろくな事をしないからな、逆恨みで。


「しょうがねぇな・・・それじゃ、とっとと幕引きとしますかね」




「っは、っはぁ、っは、ぐ、っはぁ・・・」


 早く、早くこの国から逃げねば。

 なぜだ、なぜ私がこのような、負け犬のように逃げねばならん!


「っく、あの男、ふざけおって!!」


 私をこの教会まで連れてきた魔種は、私が逃げることにも力を貸すかと思えば、

『仕事は査問会が終わるまでって言うてたやん?

 なんでここまで連れてきたんはサービスってことで後は精々頑張ってや』

などと巫山戯た態度で足早に去っていった。


「と、とにかくここを去らねば、一刻も早く!!」


 法衣のままでは目立つため、私は巡教の為の旅装束に着替え

国境を超えるのに必要な手形、路銀を鞄に詰め込むと教会の

裏口より、誰にも見つからぬように出て行く。

 ・・・覚えていろ、公爵も、周囲の者も、私を侮辱した全ての者も。

貴様らには、かならず創造主の罰を与えてやる!!

 まずは南下し、そこに庇護を求めよう。

あそこは教会の教えが浸透し、魔種は立ち入ることすら許されない土地。

 そこの国王に掛け合い、この国を攻めさせるのだ。

 クヒ、クヒヒヒヒ!!許さんぞ、もう跪いて命乞いをしても許さん。

まずはあの小娘だ、公爵の見ている前で犯し、飽きたら豚共にでも犯させてやろう。

それも飽きたら、生きたまま四肢を裂き、生きたまま火刑にしてやる。

 クヒは、くひひヒヒヒ!!


「っぐあ?!な、なんだ?!誰だ」


 あいつらへの責め苦を考えながら移動していると、何かにぶつかった衝撃が。


「いててて・・・なんじゃ、こんな夜道に前も見んと歩いとる馬鹿は誰じゃ!!

 ・・・ん?お主・・・昼間あった司祭とやらではないか・・・?」


 みると、私の前には尻餅をつき、腰をさすっているジジイが居た。


「っく!!ええい、私の邪魔をするな!貴様のような死にかけのジジイに

 かまってる暇なぞ無いのだ!!」


 足早に立ち去ろうとする私を、そのジジイは呼び止めた。


「またんかぁ!貴様、人を突き飛ばしておきながら謝らんとはどのような

 教育を受けてきたのじゃ!!教会の司祭たる者がそれで良いのか!!」


 な、なぜだ・・・なぜ私が、この私がこんなジジイにまで虚仮に

されなければならぬ・・・なぜ、この私が・・・


「・・・る、さい・・・」


「んむぅ?なんじゃ、言いたいことがあるならば申してみよ!!」


「五月蝿い!!ウルサイ、うるさい!!」


 私は、振り返ると同時にジジイを殴りつける。

 

「ウゴっ?!な、何をするんじゃお主は!!」


「ウルサイ!!私に指図するな!!私を見下すな!!私は偉いんだ!!

 私は、代弁者なのだぞ!!」


 何度も殴りつける、当然だ、私は創造主の代弁者であり選ばれた人間なのだ。

 そんな私に指図するなど、許されるべきではないのだ!!


「ッグ、ぅぅ・・・」


「っはぁー!っはぁー!!、ふ、ふん!!私に意見するなど創造主に

 唾する行為!!これで済んだのだ、感謝するんだな!!」


 うずくまるジジイを一瞥し、私は再び立ち去ろうとする。



「まぁ待てよ・・・そんなに急いでどこに行くんだ、よっと!」


「っへ?!っぐぁ・・・っ?!」


 立ち去ろうとした私は肩を掴まれ、振り向いた瞬間に思い切り頬を殴られる。


「っぎぃ、だ、だれっ、だれだ・・・っ?!っひ、ぃ?!き、きさま、貴様!!」


「ほら、大丈夫かよ爺さん・・・あ~、結構こっぴどくやられちまったな?」


 この私を殴ったのは、あの時王宮で私に刃を突きつけた大罪人だった。

その罪人は、私が罰したジジイを助け起こしている。


「っは?!そ、そうだ貴様!!貴様は金さえ払えばなんでもするんだろう?!

 私を、私を南の王国へ連れて行く大役を与えてやろう!!はやくしろ!!」


「・・・あんな事言ってるけど、どうすりゃいいんだ、『国王陛下』、

 あの司祭、国を捨てて他国に行きたいらしいぜ?」


「いつつつ・・・あー、ひどい目に合ったわい・・・決まっておろう、

 お忍びとはいえ、儂に手を上げたんじゃ、その罪、死を持って

 償わせてやるわい」




 014-2


 そこからの展開は早いものだった。

 俺は司祭だった男を縛り上げ、王宮の憲兵に突き出す。

 その際、お忍びで来ていた国王陛下に手を上げていた事も忘れずに。


 翌朝、王都はそれはもう大騒ぎだった。

 昨日の、公爵家に対する査問会があったかと思えば次の日は

王都直轄の教会の司祭が、裁判にかけられるというとんでもない事態に。


 国の大臣と結託して、地方の領主一族を無実の罪で取り潰した事が

発覚したことで、司祭と大臣は揃ってその位を剥奪、大臣は追放刑。

 司祭は、教会の本山より破門状が出され裁判終了時にはただの人となっていた。


 何より、国王陛下に手を上げたということで、情状酌量の余地なく

議会一致で死刑の判決が下される。


 ギロチンにかけられるその最後まで、司祭だった男は自らの正当性を

訴え、魔種の根絶を謳っていたが無慈悲に落とされる刃に、その生涯を終えた。



「・・・まっ、これにて俺の受けた仕事は完遂、って事で。

 公爵さんの思っていた結末とはちょっと違うかもしんないけどな」


「いや、これで良かったのだろう・・・あの男が

 何を考えていたか、どのような思考をしていたかを公に出来たのだ。

 ただ闇に葬るよりも最善の結末だろう・・・クロスケ君、ありがとう」


 俺は今、公爵家の屋敷・・・公爵さんの執務室で司祭の最後を

公爵さんと話していた。


「さて、そうなると君には報酬を渡さねばな。

 何か望みはあるかな?本音をいうと、口止めというのも考慮して

 多少は多めに金額を言ってもらっても構わない」


「ははっ、意外と抜け目ないな公爵さん?

 ・・・今回、報酬はいらねぇよ、ただ・・・あって欲しい人物がいるんだ」


「私にか?・・・君がそう言う事は、恐らく私にとっても重要な人物なのだろうな」


「ああ、重要も最重要、もうコレ以上ないってくらいのな」


 相手はもう呼んでるんだ、着いてきてくれと部屋を出る。

 公爵さんもまた、何か感じたのか何も言わずに俺についてくる。



 そうして、屋敷の裏庭に出た所で、俺は軽く右手を挙げる

 その合図に、目の前に一人の魔神・・・アモンが、姿を表す。


「・・・?クロスケ君、この魔種の方は一体・・・?」


「ん、紹介するぜ?こっちはアーランド公爵家当主、グランドリア公だ」


 俺の紹介に、とりあえず公爵さんはアモンに礼をする。

 礼をしながら、その顔には困惑しか浮かんでいない。


「んで、こっちが72柱の魔神が1柱、アモン。

 ・・・アリスの母さん、イシューさんの父親、らしい」


 アモンもまた、公爵さんに礼を返す。

 ・・・その目には、剣呑な光を宿して。


「こ、これはこれは・・・イシューのお父上でしたか(意訳:昔、娘を捨てた男が

 今更父親ツラして何のようだ、アァん?)」


「・・・貴様が我が娘を娶ったニンゲンか(意訳:小僧、我の知らぬ間に愛娘を

 拐かしおって、覚悟はできているのだろうな?)」


「・・・出来れば、一度挨拶に行きたいと思っていたところです(意訳:っは、イシューを

 泣かした頑固親父のツラを拝みたかったが手間が省けたな)」


「我もまた、一度娘を娶った相手がどのような者なのか会いたいと思っていた

 (意訳:それはこちらのセリフだゴルァア!)」


 ・・・・・・・


「いい度胸してんなコルァア!!イシュー連れ帰るってんなら覚悟しとけよ

 ゴルァアア!!(意訳:ははは、そうだイシューに会って行かれますか?

 あいつも喜ぶと思います)」


「アァん?!ニンゲン、吐いたツバは飲むなよゴルァァ!!テメェ、男

 見せんかったらどうなるかわかってるだろうなァァ!!

 (意訳:う、む・・・そうだな、久しぶりに愛娘の顔を見るとするか)」



「公爵さんもアモンも、本音と建前が逆だから」




 014-3


 その後は、血で血を争う親子闘争勃発かと思えばそうでもなく

なんだかよくわからないうちに昼食会という流れになっていた。


 印象的だったのは、アモンとアリスの邂逅の一場面。



「・・・すまぬ、お主には、非道な事をした。

 許せとは言わぬ、如何様にも罵るがいい・・・」


「そ、そんな?!顔を上げて下さい!

 ・・・その、わたしのお祖父様、なんですよね・・・?

 あの時、わたしが悲しみに暮れている間、誰かが見守って

 いたと感じていましたが・・・貴方だったんですね・・・」


「・・・我が連れ去ったのだ、お主が我が孫と知ってから、

 あの部屋より連れ出せる機会などいくらでもあった・・・

 にも関わらず、我はただ見ることしかしなかった・・・」


「・・・確かに、わたしは怖い思いをたくさんしました。

 一度は、クロスケを喪ったと思い、絶望に沈みかけました。

 ・・・けれども、それでもわたしは負けなかった。

 お父様やお母様方、クロスケの想い・・・なにより、

 わたしの中にも流れる、お祖父様の血で、乗りきれたのだと思います。

 それに、こうして謝っていただきましたよね?

 それなら、わたしからは何もありません・・・」


「・・・ありがとう、そう言ってもらえるのであれば、

 こうしてお主の前に姿を見せた甲斐があったというもの・・・

 我が血と、わが孫に感謝する」


 と、そんな見ている周囲が思わず涙ぐみそうになる事もあったかと思えば



「初めまして?ワタシ、アリア」


「・・・む、う、む?」


「申し訳ございません、アモン様・・・わたくし公爵夫人を名乗らせていただいている

 ニーナと申します・・・貴方の娘であるイシューとは、同じ殿方を愛した者同士

 仲良くさせていただいております。

 ・・・こちらは、わたくしの娘で、アリアと申します」


「む、そうであったか・・・我はアモン、72柱の魔神が1柱で・・・」


「アモンは、アリス姉様のお爺ちゃん?」


「あ、うむ・・・うむ、そうである、我はイ・スの父であり、キュアリスの

 祖父であるな・・・」


「そう・・・それじゃ、アリアの御爺様??」


「うむ?!・・・ん?そう、なるのか・・・?んむ?」


 皆が、幼女の言葉に翻弄されている魔神を、生暖かい目で見守っていると

なにやらホール内が薄ら寒い空気に包まれる。

 なんだなんだと、その空気の発生源らしき場所を見るとそこには・・・


「・・・アリアお嬢様・・・お嬢様の爺はこのシルバでございまするぞ・・・

 それをなぜ・・・あのような外見年齢20前半のなんちゃってジジイに

 御爺様などと・・・」


 シルバ爺さんが、こうなんか執事がしていけないような表情でなんか言っていた。

・・・年寄りのレ◯プ目とか初めて見たぞ、俺は。




 そんな騒がしい一日も終え、夜になり俺はまた、公爵さんの

執務室に呼ばれていた


「んで、話ってなんだよ?」


「何を言っているのだきみ・・・え?あ、う、うむ・・・」


 いや、さすがにそう何回も同じネタはしねぇよ。


「・・・クロスケ君、私の下で働いてみないか?」


「んう?・・・えーっと、どういう事だよ?」


 切りだされた話に、俺は理解が追いつかず聞き返す。

 えーっと、俺に屋敷勤めでもしろっていうのか?


「うむ、まぁその、な・・・理由は、どうしようもない親心なんだよ。

 キュアリスは、君の元に嫁ぐともう決めているようでな、それ自体に

 反対はしない・・・が、なんというかな、君の職が気になるわけなのだよ」


「あぁ・・・ま、確かになぁ。

 自分の娘の男が盗賊とか、そら不安だよな。

 けれど、そうは言っても俺は屋敷での仕事なんざ何一つわかんねぇよ?」


 今更、そういった大人しい仕事ってのも何か違うしな。

 などと考えると公爵さんはいやいや、と首を振る。


「表向き、君には盗賊を続けてもらっても構わない。ギルドとの

 兼ね合いもあるだろう。

 ・・・私が欲しいのは、君の本職・・・夜闇の追撃者シャドウチェイサー

 としての能力なのだよ」


「あー・・・そういう事、ね。

 ・・・今回の事絡みでかよ?」


「そういう事だ・・・公爵という立場上、政敵が多くてな。

 今回は上手くいったが、次回はそうとは限らない。

 あの時、幸いにも有耶無耶で終わったが、いつ何時、

 イシューやキュアリスの事で難癖を付けられるかわかったものではない。

 ・・・だからこそ、君には私の懐刀となって欲しいのだよ」


 無論、あくまでも私の勝手な意見だ、断ってくれても構わないと公爵さん。

 ・・・けれど、アリスの事を考えるとここで断るわけにも行かないだろうな。


「・・・はぁ、最初から俺がどう答えるかわかってんだろ?

 ったく、ほんと抜け目ない公爵様だぜ・・・

 一つだけ、条件がある」


「何かね?出来る限りの要求には答えよう。

 なにせ、あのシャドウチェイサーを引き込めるのだ・・・

 コレは先行投資といってもいい」


「それそれ。その大げさな二つ名、やめてくんねぇかな?

 ・・・元々、少しばかり他人より要領よくやってたら、いつの間にか

 その結果に尾ひれがついて付けられた名前なんでね。

 ・・・正直、その二つ名を付けられるほど大したタマでもないんだわ」


 これは本音の話。こう、ギルド内でもなんか知らないけど

生きた伝説だったり、あいつはすげぇとか言われるだけで恥ずかしくなる。

 どうにかしてその二つ名を払拭しようと真剣に考えたぐらいだ。


「ふむ?・・・しかし、やはり何かしら二つ名を持っていなければ

 格好がつかないのではないのか?」


「どういう思考だよそれ・・・んじゃ、公爵さんのセンスに任せるよ。

 俺みたいなヤツにピッタリなのを頼むぜ?」


「う~む・・・これは責任重大だな・・・そうだな、こういうのはどうかな?」


 その性格の悪さに図太い精神、傍若無人さにちなんで、


 荒くれ男バンディットというのはどうだろう、と。

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