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BANDIT!  作者: 望田 壱
BANDIT!
11/28

011



 011-1


 通常は裁判等で使われるホールの座席は、今日の査問会に呼ばれた者、

呼ばれはしなかったが興味があった者、この査問会を通して自らの利益を

手にせんとする者、様々な思惑でひしめき合っていた。


 今、わたしが座っている席は裁判では罪を犯した人、

裁かれる人が座る場所。

 向かい合うようにして、反対側にはあの司祭が座っている。

柔和な表情を浮かべてはいるけれど、その目は相手を見下すかの

ような、負の感情が見え隠れする色で染まっている。


 ・・・こいつみたいな、性格が腐ってる人なんかには絶対に屈して

やるもんですか・・・っ!


 わたしやあの司祭が座る席より一段高い、アーチ状になった壇上には

真ん中の席を除き、この国の重要な役職についている人達が座っている。

 ・・・そのうちの何人かは、司祭と同じ目の色をさせて。


 この人達を相手に、わたしは一人戦おうとしている。

 例えてしまうならば、国一つ相手にしようとしている。

 ・・・そう考えて、なんだか急に可笑しくなってきて思わず

噴き出しそうになるが、ギリギリ我慢する。

 ・・・なんだか、ものすごい大事になっちゃったなぁ・・・

クロスケ、生きてるなら顔ぐらい見せなさいよ・・・寂しいじゃない。


 けれども、心細いわけじゃない。

 お父様も言ってた・・・わたしにだって味方はいる。

 だから、わたしは国を相手にしてもやってやるって思えるんだから。


「皆様、ご静粛に・・・陛下が入廷されます、ご静粛に・・・」


 壇上に座っている偉い人の一人が、そう宣言するとホール内は

シン・・・っと静まり返る。


 暫くして、壇上横の扉が開いたかと思えば、白金の鎧に身を包んだ騎士に先導され

その頭には王冠を冠り、純白のローブを肩にかけたおじいさんが入って来た。

 その豪華さに、わたしは失礼と思いながらも目が釘付けになってしまう。

 そんなわたしの、不躾な視線に気づいたのかおじいさん、いや王様は

ちらりとこちらを見たかと思うと、ちろりと舌を出してウィンクしてきた。

 ・・・え?わたし、王様と会ったことなんて会ったっけ?


「陛下・・・あまりそこかしこで色目を振りまかないで下さい、胸糞悪い」


「ひょっ?!いいじゃろいいじゃろ・・・あんなめんこい娘なんじゃちょっとくらい」


 お付きの騎士と王様の会話が聞こえてきた。

 なぜだろうか、周りの人は気づいてないようで、わたしだけにその会話が

聞こえてくる。


「陛下がそんなだから、王妃がカリカリしているのです。

 ちったぁ自重しろこの耄碌ジジイ」


「王子、最近わしに冷たすぎやせんかの・・・?」


 あぁ・・・あの二人って親子なんだ・・・

 周りの人は本当に聞こえていないのか、王様が席につくまで微動だにしなかった。



「・・・これで、すべて揃いましたね?

 それでは、これよりアーランド公爵家と、その関係者への査問会を

 開廷いたします」


 そして、司祭の一声で・・・わたしの戦いは始まりを告げる。




「・・・くっ、すぐ其処に娘が居るというのにも関わらず、このように

 見ていることしか出来ないとは・・・不甲斐ない・・・」


 グランドリア公は、目の前で繰り広げられる舌戦にただただ歯噛みするばかりであった。

 いまはまだ、拮抗しているが状況が悪い。

 司祭以外にも、おそらくは大臣の中にも何人かはこちらの失脚を

狙っている輩がいるのだろう。

 ・・・今はまだ、キュアリス自身の事やイシューの事には触れられては居ない。

が、それも時間の問題だ・・・司祭は、もっとも効果的なタイミングを狙っているだろう。


「・・・失礼、公爵様、ですね?」


 司祭の息がかかっている警備兵によって監視されているため、身動きの

取れないアーランド公の横に、帽子を目深に被った男性が座る。


「む・・・っ?!君は・・・」


「そのままで・・・丁度この席が空いていて良かった。

 ・・・あの子、すこし気圧されていますね」


「・・・ああ、あの司祭だけでも厄介なのだが、それ以上に

 大臣共が肩入れしているのが響いている。

 ・・・君は、無事だったんだな・・・」


「・・・えぇ、どうにか命だけは・・・」


「・・・娘の力に、なってやってはくれないか?」


「そのつもりです・・・けれど、私の出番はもう少し後になりますけどね」




 011-2



「ですから、わたしがお仕えさせて頂いている公爵家の皆様はこれまで一度も

 王家にたいし悪い感情は抱いていませんし、謀反などとありえません!

 何度も言っているように、どうしてわたしのような小娘にそのような

 事をお聞きになるのでしょうか?!」


 おかしい。

 あの小娘の心は間違いなく折れたはず。

 にも関わらず、今までの一度も弱みを見せず、あろうことか

わたしに食って掛かるようなその態度。


 ・・・ちっ、せめてもの情けと公爵と面会させたのが裏目にでたか。

 まぁいい・・・ならばもう一度その跳ねっ返りな態度をねじ伏せてやる。


「ほぅ・・・それは妙な話ですね?」


「・・・何がでしょうか?」


「いえいえ、わたしが確認した限りの話ですと・・・

 貴女は、グランドリア公の実子とお聞きしたのですが?」


 私の一言に、小娘の顔にわずかに焦燥が見て取れる。

 クックック、ただのメイドで押し通せると思っていたのか、舐められたものだ。


 そしてその一言でホール内にもざわめきが広がる。


「司祭よ、それは本当か・・・?」


「あのアーランド公が隠し子などと・・・」


「やはり公も男であった、ということか・・・」


 傍聴席で身動きの取れない公爵を、ある者は興味深い表情で。

 またある者は醜聞を追求したげな、下卑た表情で見つめる。

 様々な視線に晒された公爵は・・・静かに、目を閉じたまま

微動だにしない・・・気に入らない、もっと憔悴したらどうなんだ?

 そんな、聖人君子のような化けの皮、いますぐにでも剥がしてくれる。


「・・・司祭よ、それは本当の話なのか・・・?」


 とうとう、陛下がこちらの話に食らいつく!

 これだ、このタイミングを待っていたんだ私は!!


「ええ、真実でございます陛下。

 ・・・それだけではございません、陛下よ!

 そこの小娘、あろうことか魔種の血を引いているのでございます!!」


 私が宣言すると、ホール内は凍りつく。

 先程まで、気に入らない態度で私に反論を繰り返していた小娘もまた、

何も言えないのか口を真一文字に閉じ、私を睨んでくる。

 あはははは、そうだ、その表情だ!!

 悔しいだろう、隠そうとしていた事実を晒されてさぞ悔しかろう!!


「なんと・・・魔種との子供とな・・・」


「はい、その通りでございます陛下よ。

 これは由々しき事態ですぞ?なにせ、王家の血筋に魔種の血が

 入るなど言語道断っ!!」


「そうですぞ国王陛下よ、これはアーランド公だけの問題ではなく

 下手をしますと国を揺るがしかねない問題となります。

 早々に手を打ったほうが良いのでは・・・?」


 ここぞとばかりに、大臣も私に賛同し追撃を行う。


「うぅむ・・・しかしのぅ、公爵が公表しなかった、と言うことは

 そこな娘を世継ぎと考えていたわけではないんじゃろう?

 確かに、隠し子どころかそれが魔種との間にできた娘という

 のは驚きじゃが、そこまで重く考えることかのぅ?」


「あまい!!陛下、楽観過ぎです。

 良いですか、そもそも魔種というのは古来より、人々を堕落させんと

 暗躍する、文字通り魔の種族です・・・

 それが、王家の血筋に加わるなど許されるべきでは・・・」


「お待ちください!!・・・王様、わたしの発言を許していただけませんか?」


 私の発言を遮り、小娘がしゃしゃり出てくる。

 ふんっ、今更この状況で何をしようというのか・・・

まあいい、精々足掻くといい、ははははは!!!




 まさかあの場面で、わたしやお母様の事を出されるなんて・・・っ

もし、これがお父様に勇気をもらう前だったらあそこで終わっていただろう。

 事実を突きつけられ、何も言えなくなったわたしが、其処にいたはず。

 ・・・けれども、今は違う、うん・・・わたしは胸を張って言える。


「王様、まずはこれまで黙っていたことをお許し下さい。

 ・・・確かにわたしは、お父様・・・グランドリア公爵の娘です」


 ますはそこまで言うと、王様の反応を伺う。

 わたしと視線が合った王様は、続けなさいと頷いてくれた。


「・・・そして、司祭様の言った通り、わたしのお母様は・・・魔種、です」


 うっ、やっぱりちょっと怖い・・・でも止めない。

 ここで止めちゃったら、お父様やお母様、みんなを貶めることになる。


「・・・しかし、それが何だというのでしょうか?」


 わたしの発言に、場が凍りついた。


「なっ?!」


「その娘、現状を理解してないのか?!」


「恐れ多い・・・」


 偉い人達は、口々にそう呟く、中には怒声に近い言葉をわたしに投げかける人も。

・・・ここまで来たんだもの、やりきってやるんだから!!


「・・・確かに、お父様は人間、お母様は魔種です。

 ですが、二人が互いに想い合い・・・愛し合った結果、わたしは生まれました。

 そこに、なにか問題はあるでしょうか?」



 わたしの言葉に、司祭の顔は激昂に染まる。


「こ、この小娘ぇ!!いや、小娘の姿をした魔種め何を言うかと思えば!!

 きさ、貴様の存在そのものに問題があるに決まっているだろうが!!」


 おやおやぁ?司祭様ったら、口調が崩れてきてますよ?

 ・・・その激昂っぷりに、かえってわたしは冷静な思考ができる。


「今は司祭様とはお話していません、王様とお話をしているんです。

 ・・・王様、どうでしょうか?

 ただ、男と女が愛し合っただけなのに、ここまで問題になるでしょうか?」


「ふむ、それは・・・ならんの?

 問題にはならんな?いや、確かに男と女が好き合ったんじゃ、そら

 子供だって出来るわな」


 ひょっひょっひょ、と王様はその格好に似合わずとても気さくに

そう言った・・・うん、わたしは間違ったことを言ってない。


「なっ?!へ、陛下、陛下はそれでよろしいので?

 いや、仮にそうだとしてもそれではアーランド公が娘の存在を

 隠した理由がありませんぞ?!」


「なぁに、公は王宮では堅物で通っておる。

 大方、そんな自分が妻以外のおなごに手を出したと揶揄される

 のが恥ずかしかったんじゃろ、のぅ?」


 王様は、そう言うと傍聴席で固まっているお父様に尋ねる。


「あ、その・・・実は・・・」


「うん?なんじゃお主らしくもない・・・何かあるのであれば申してみよ」


「はっ!・・・実は、そこの私の娘、キュアリスの母の方が先でして・・・

 その、王の実子であるニーナの方が、後なのです・・・」


「あっ・・・そ、そうなんか・・・うん、そりゃあ言いにくいわな・・・」


 ホールが、微妙な空気に包まれた。

 気のせいか、お父様がちょっと縮こまってる気もする・・・気のせいだよね?


「っふ、ふざけるなぁ!!!」


 っ?!

 ホール内に、急な怒声が響き渡りそちらを見ると怒りの表情を浮かべた

司祭が立ち上がっていた。


「ふざけるな、貴様らぁ!!愛し合っただと?!魔の者と愛し合う等と

 反吐がでる!!いいか、貴様ら魔種は忌み嫌われるべき種なのだ!!

 創造主の意に反し、魔を身にまとう、そのような存在が愛などと語るな!!」


「・・・なぜ?どうして魔種だから、言うだけでそこまで言われなくては

 いけないのでしょうか?」


「決まっている!!貴様ら魔種は、人々を堕落させる闇の化身だからだ!!

 魔の体現者だからだ!!

 小娘、お前も本当は恨んでるのだろう?なぜ、自分に魔種の血が

 流れているのかと、なぜ母親が魔種なのかと!!!」


「いえ・・・わたしは自分の中に魔種の血が流れている事を一度も恨んでは

 いません・・・お母様を恨んだことなど一度もありません」


「・・・な、なに?」


「わたしは・・・お父様と、お母様が愛しあって生まれてきたのだと。

 お二人の娘として生を受けた事、誇りに思っています・・・っ!」




 011-3


 

 こんな、こんなはずではなかったはずだ。

 今頃、小娘は打ちひしがれてわたしに傅き、

公爵はその光景をみて、無力感に苛むだけの愚者に成り果てるはずなのだ。


 それが、なぜ・・・なぜこのようなことに・・・

 

 ・・・くく、そうか、貴様らがそこまで私を虚仮にするというのであれば

いいだろう、命まではとるつもりはなかったがもう容赦はせん。


「・・・陛下、まだ言って無いことがあります。

 よろしいでしょうか?」


「・・・申してみよ」


「ははっ・・・陛下、公爵夫人の実子が、王家の血筋特有の星を持って

 生まれた事はご存知でしょうか?」


 今度こそ、小娘も、公爵の顔が驚愕で歪む。

 ククク、後悔するといい、貴様らは尽く創造主の代弁者である

私を侮辱したのだ。

 その罪を、命を持って償うといい!!


「・・・王家に伝わる双子星の伝承じゃな・・・」


「その通りでございます・・・陛下、星は一つだけであれば王家の栄光を

 象徴する吉兆でございます。

 ・・・ですが、その星がもう一つあるとなれば、いかがなさいますか?」


「・・・どういう、事なのじゃ?」


 くははは!!公爵め、これで貴様らは終わりだ!!

あの時、私の話を聞かず虚仮にした報い、見せてくれる!!!


「はっ!星を持つものが、公爵家にもう一人いるのです!!

 それが、そこにいる小娘、魔種であるはずのそいつに星が出ているのです!!

 双子星は、王家にとって凶兆の証!!

 その事実を、王家に黙っているなどと、これこそが謀反の証拠と

 なりえましょう!!」


 あははははは!!言ってやった、どうだ言ってやったぞ!!!

みっともなく許しを乞え!!跪け!!ふはははははは!!!



「・・・なんでテメェがそのことを知ってるんだ?」



 はははは・・・は・・・・え?

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