いない人③
一体どこへ行く気なのか分からずついて行き、着いた場所は……。
「猫……?」
そう、着いた場所は猫!!と言う、意味不明な場所ではなく私達の教室だった。
そこに偶然、猫がいた…と言う訳だ。
それにしても何故教室に猫が?
「なんで猫が教室にいるのよ?」
私が疑問に思った事を美雪先生が質問してくれた。
「迷子」
猫の頭を撫でながら瑞希はそれだけ言った。
「つまり…この猫が迷子なの?」
「違う、この猫の子供が迷子」
「まさか、その迷子の子猫が親と間違えて新城君について回ってるとでも言うの?」
少し笑いながら美雪先生は言った。
随分長くて、ありそうなまさかだなー…と思っていたら。
「そのまさかだけど?」
まさかのまさかだった…。
しかも瑞希は不思議そうに首を傾げながら言っていた。
結局、裕に付きまとっている子猫は迷子だっただけか…。
それにしてもまさかの事を言い当てた先生…なんか凄いなーと感心していると、瑞希は猫を抱えた。
そして教室を出ようと、出入口へと向かって歩いて行く。
「猫の親を合わせてあげたら、子猫離れるかな?」
瑞希を見ながら私は言ってみた。
「さあ?私、予知能力ないから」
「そうだったね」
「でも、新城君のいる場所知ってるの?」
その美雪先生の言葉で教室を出ようとしていた瑞希の足が止まった。
「えーと…もしかして…裕の居場所知らない…の?」
私が恐る恐る聞いてみると…
コクンッ
と、小さく瑞希が頷いた。
「なんで知らないのに行こうとしてんの!?」
「歩いてれば会えるかと…」
「奇跡!それ奇跡!今まで会えてないのに歩いてて会うとか奇跡に近いわ!」
「まあまあ、由梨ちゃん落ち着いて……」
苦笑いを浮かべながら美雪先生が止めに入る。
「ふう……で?どうやって裕の居場所を見つけるの?」
「歩いて「だからそれ奇跡だって言ってんじゃん?」
少しイライラしながら私は瑞希の言葉を遮る。
すると、隣で美雪先生が目を見開いて教室の黒板がある方向のドアを見ていた。
私も首を傾げながらその方向を見る。
「……奇跡だ…」
「………」
瑞希も予想してなかったのか、無表情のまま固まっている。
もちろん、その方向にいたのは疲れた顔をしている裕だった。
「……久しぶり?」
「……お久しぶりです?」
美雪先生がまず挨拶をして、次にそれに答えるように裕が挨拶をした。
二人共、挨拶が疑問系だった。
しばらく固まっていた瑞希も子猫を見て、猫を抱えたまま裕のいる方向へと歩いて行く。
案の定、猫から逃げる裕。
「ミー?(お母さん?)」
「ミャー(今まで何やってたのよ!ぶつわよ!)」
「ミー!ミィー!?(ええー!再会していきなり!?)」
「ミャー…(そんな訳ないじゃない…無事でよかった…)」
「ミー…(お母さん…)」
こうして猫親子が再会を果たしていて、感動する場面。
しかし、括弧内の瑞希のアフレコがその感動を台無しにしている。
しかも、なんとなくそう言ってる感じもしてしまう。
なので私は吹き出してしまった。
隣に戻って来た瑞希の背中をバシバシと叩く。
「痛っ、だって感動って面白くないし」
「面白くなくても、ここは邪魔をしないであげればいいじゃん!台無しだよ」
「はいはい」
全然反省していない瑞希にこれ以上言っても無駄と判断した私は溜息を吐いてから、久々に会う友人の元へと駆ける。
「いやー、大変だったね?苦手な猫につきまとわれて」
「散々でしたよ…」
かなり疲れているようで裕は近くの椅子に腰掛けながら言った。
「部屋にも付いて来て…」
「部屋にも……ん?」
ここで、ある事に疑問を感じた。
裕は寮で暮らしてて…寮で同じ部屋なのは…?
「ねえ…裕と同じ部屋って…誰だっけ?」
「え?龍ですけど…」
「そう……」
私はそう言ってから瑞希の所まで行き、腕を掴んで引っ張っていく。
されるがままに瑞希はそのまま私について来た。
後ろで美雪先生と裕が首を傾げながら私達を教室から見ていた。
けれど、説明するのは後にしよう…。
学校を出て、再び庭へと戻って来ると相変わらず鳥が澪に擦り寄っていっていたけれど、今は嫉妬している場合ではないのでベンチに座ってボーっとしている龍の元まで一直線に叫びながら走って行った。
今、私はすごい形相をしているのだろう。
龍が私の顔を見て驚いている。
「りゅーーーう!!」
「なっなんだよ?」
「どうしたの?」
首を傾げながら桃花がこちらへと歩いて来る。
「裕と相部屋でしょ?なのになんで裕の事、言わなかったの?裕が猫苦手なの知ってたくせに!」
「だって猫が可愛かったんだ!飼ってもいいだろ?」
「捨て猫拾ってきた子供か!」
「しかも言わなかった理由になってないし」
隣で瑞希がキッパリと言い放った。
「面白かったんだよ、青ざめて猫を向こうへ!って言ってる裕が……」
「分かる分かる」
頷きながら瑞希が共感する。
「分かっちゃダメでしょ!?瑞希だって、自分が嫌な事されたら嫌でしょ?」
「別にいいよ、後で倍返しするから」
「本当にしそうで怖い……」
「話が脱線してるよ?とにかく、良かったよね…ね?」
桃花が私達それぞれの顔を微笑んで見回した。
「まあ…そうだな」
「うん!そうだね」
「おなかすいたー」
ここでも瑞希のマイペース発動。
そこで私は提案する。
「じゃあ、食堂行こうか?」
それに龍と桃花と澪と瑞希が賛同した。
「あっ俺も俺も」
「私も行くよ」
「俺も行く」
「早く行きたい」
私は瑞希について行くみんなを見ながら、コッソリ笑うのだった―――――……。
いない人...and