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プロローグ②

外へ着くと、私以外の三人が窓から見たらしい人が木に登っていた。

呆然とする私と美雪先生。

そして、しかめっ面をする瑞希とほぼ睨んでいるに近い目でその人を見ている澪。


「えーと…なんで木に登ってるの?」


四人を代表して私が木に登っている人…少年に聞いた。

少年は顔だけこちらに向けた。

そこで私は声を上げた。


「ああっ!どっかで見たと思ったら……」


「木に登って落ちてまた登るバカはお前くらいだからな…」


「俺…お前等に何かした?」


この少年、松宮(まつみや)(りゅう)は澪と私の幼馴染。

灰色の髪に紫の瞳が特徴的。

ちなみに龍が美雪先生や瑞希と知り合ったのは学園に入ってからだった。

なんかテンションが合わないとかで瑞希は龍が苦手であり嫌いでもあるらしい。


「それにしても何で木に?」


瑞希が目を細めて嫌そうに聞いた。

それを気にせず龍は明るい笑顔で答える。


「小鳥が落ちてたから人の臭いが付く前に戻してやろうと」


「あっそう」


自分が聞いといてすっごい冷たい!!全く関心なさそうにしてるし!無いのか!

しかし、龍はそんな事よりも美雪先生に釘付けだった。

それにしても…なかなか下りない程、釘付けになってるなんて…。

澪はイライラしながら言った。


「おい、龍。早く下りろよ」


「どうせ姉しか見えてないんだろうなー」


何の気なしに瑞希は呟く。


「え?どう言う事?」


呟きを聞いて首を傾げている美雪先生に瑞希が教えようとしたので私は瑞希の口を塞いだ。

そう言うのは他の人が言っちゃ意味がないのに!

すると、瑞希は私を見上げた。

私よりも身長が低いので瑞希は私を見上げる形になる。

そして言った。


「そっか…言っちゃ面白くない!」


「あ…うん……もういい……もう諦めた……」


「?」


瑞希は首を傾げてクエスチョンマークを浮かべている。

そんな瑞希を放っておいて私は話をしている龍と澪に近づいた。


「何の話してるの?」


「いや、美雪さんの話を「もしかして…澪も美雪先生の事……」


私は龍の言葉を遮って澪に聞く。

澪は首を傾げながら言った。


「俺はこいつの話に相槌してるだけだ」


「ちゃんと聞いてるかと思いきや?!」


信じられないとでも言いたげに龍は目を見開いて驚いた様子で言った。


「それに話の十割も聞いてない」


「それ全部じゃねーか!」


言い争いをしている二人は放っておいて私はフリーズしている瑞希を見て首を傾げた。


「どうしたの?」


「ん?どした?」


私が声を掛けた事で龍も気づいて瑞希に声を掛ける。

しかし、瑞希からの応答なし。

心配になったのか近くに美雪先生がいたからなのか、龍は瑞希の肩を掴んで揺すった。

それをうざったそうに瑞希は龍の手を叩く。

案の定、龍は叩かれた手を反対の手で擦り痛そうにする。

ここはいつも通りなんだけど…。


「…ない…」


「ない?何がない?」


「どうしよ…」


龍の問いを無視して瑞希は言った。

いきなり焦りだした瑞希に私はどうする事も出来ない。

他の三人も一体どうしたのかと心配そうにしている。

……澪は例外だけど…。

けど、普段冷静な瑞希がここまで焦るなんて…。

とりあえず私は聞いてみる事にした。


「焦る程、大切な物を無くしたの?」


「う…うん…まあ…」


なんかハッキリしない言い方をする。

いつもは傷つく程キツイ言い方をするのに……。

気になりながらも質問続行。


「誰かに貰った物?」


「え…うーん…えーと…ええー…うー」


少しの間、瑞希はこの繰り返し。

まさかずっと言葉を濁し、続ける気!?

いつまで経ってもずっとこの調子だし……。


「あっ!もしかして……」


美雪先生は分かったようで、腰を屈めて探し始める。


「何?何なの?」


「ブレスレット!昔、私が初めて買った物なの。あまりにも瑞希が羨ましそうな目で見つめるから…あげちゃった」


「そのブレスレットを無くして、瑞希は落ち込んでる…って訳?」


「ええ、でも…私があげたブレスレットを無くしただけであんなに焦るなんて……ちょっと嬉しい」


そう言って美雪先生はまたブレスレットを探し始めた。

ハァ…もしかしたら想い人に貰った物だと思ったのに…。

面白くないなー…って面白がっちゃダメだね。

私も美雪先生と並んで探す事にした。



数十分経った…のに…。


「見つからないってどういう事さ!」


「由梨、それ私が言いたい」


焦りながらもちゃんとツッコむ瑞希。

学園の中と外…全部隙間まで探したのにないって……。


「ポケットに入ってるとか?」


冗談半分で私は言ってみた。

瑞希はYシャツの上にカーディガンを着ている。

なんか時々寒そうに見えるけど…カーディガン着てるのに。


「入ってる訳な……」


カーディガンのポケットに両手を入れたまま瑞希は言葉を切った。

まさか…MA・SA・KA…?


「…あった…」


「そんな…それじゃあ…私達の苦労は…一体…?」


私は膝から崩れ落ちた。

他の三人も呆然としている。


「…ごめん…」


顔を逸らして瑞希は申し訳無さそうにする。

そんな暗い雰囲気を振り払うように美雪先生は手を二回叩いた。


「み…見つかったからいいじゃない?ねっ!って事で…この話おしまい!」


「美雪さんがそう言うなら…!」


龍は完全に美雪先生の言いなりか!

ツッコミたいのを心の中で留めていると、どこからともなく少女が駆けて来た。


「皆で溜まって…何してるの?」


「あっ桃花」


こちらへと駆けて来たのは中川(なかがわ)桃花(ももか)

まあ…言うなれば学園のマドンナ…かな?

薄桃色の髪にピンクの瞳。

バレバレなんだけど…


「あっ龍!龍もいたの!」


とても嬉しそうに頬を赤く染めて桃花は言った。

龍が好きなんだよねー…ハァ…恋する乙女って可愛いな…。

っと、そんな事思ってる場合じゃない。


「どうしたの?何か用事?」


「ああっそうだった!」


私が聞くと桃花は顔の前で手を合わせて満面の笑みを浮かべた。

私達(瑞希以外)は首を傾げるばかり。


「ゴーレムがね…檻から逃げ出したんだよ!」


「「「「「………」」」」」


「えーと…桃花?実は…」


「もうゴーレム捕まえて元に戻したけど」


私の言葉を遮って瑞希はハッキリと言った。


「人がせっかく傷つけないように言おうとしてるのに…なんで何でもかんでもハッキリ言っちゃうのかな?」


「人間、正直が一番」


「確かにその通りだけど、言い方って物があるんだよ?」


そんな言い合いをしていて、ふと桃花を見る。

すると、桃花はキョトンとしてから赤くなった頬を両手で包んだ。


「うわ…知らなかったの私…だけ?」


「俺は、なんとなくだけど気づいてた」


龍が空気の読めない発言をした。


「龍…空気を読め…」


透かさず澪が言った。

澪でも空気を読んでるのに…。

それにしても…全員が集まって来てる…。

約一名、いない人がいるけど…。


「あれ?今日はいないの?彼」


周りをキョロキョロと見回して桃花は“彼”を探す。


「うん、今日はいないみたい」


桃花の問いに私が答える。


「結局一人を除いて全員集合だね?」


周りを見回しながら私は言った。


「確かに…由梨ちゃんの言う通りよね」


そう言って隣で美雪さんが頷いている。

なんだか色々あったけど…どうか明日は何も起こりませんように――――……。



プロローグ...and

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