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―SAKURA―  作者: あおい
3/7

(1)

基本は主人公の視点で書いていきますが、今回はオレンジさん視点です。



この世界は2つの大陸から出来ている


1つの大陸には人間が住み、

その半分ほどの大きさの大陸には魔人種と呼ばれる人々が住んでいる


魔人種とは人よりも高い戦闘能力を持ち、寿命も人間の五倍はあるといわれている種族だ


そしてこの2つの大陸の間には大きな海があり、

その海を渡ることは禁じられている




今から200年ほど前、

この世界は滅びかけたという


長年に渡る人間と魔人種との激しい戦争により、

この世界に存在する魔力が減り、バランスが崩れ、

世界から色がなくなった


端から内側へ段々と暗闇が侵食していき、

1年後には世界のほぼ全土が黒く染まってしまったらしい



そんな時一人の救世主が現れ、

人間と魔人種との戦争を永久的に凍結させるのを条件に、世界に光を取り戻してくれた


再び暗闇が襲ってくる時、

救世主もまた復活し、この世界は救われる




そんな言い伝えが昔からこの国にはある


だが誰もそんな言い伝えなんて信じてなかった。

もちろん俺も


色がなくなるってなんだよ。

なんて馬鹿にして、よくあるおとぎ話ぐらいにしか考えてなかった




今から2週間ほど前

この大陸が急に暗闇に覆われるまでは――




「それ」はまさしく、色がなくなるとしか言い表わせないような


何の前触れもなく、突然視界が黒く染まった


どこを見渡しても黒い物体がうごめく姿しか見えず、人はもちろん建物や空までもが黒一色となった


まだ色がなくなった土地は狭い範囲のようだが、偶然その場に居合わせた俺はひたすら馬を走らせた


恐怖と混乱に駆り立てられるようにただ馬を走らせ、暗闇の世界から抜けた時の安堵感は今まで感じた事のないものだった


急に視界が明るくなったかと思ったら、光の眩しさに目がくらみ、自分が前と同じようにきちんと色を持っている事が信じられなかった




それから国を上げて必死で原因究明や対策方法を探しているが、「それ」については全くの謎のまま、段々と広がる暗闇に怯えることしか出来ずにいる


そんな時に誰もがすがるようにして言い出したのが「救世主」の存在だ


あの言い伝えは本当だったのだ―

だとしたら救世主も現れるに違いない


人々はその言い伝えを僅かな希望として、救世主の到来を待ち望んでいる




だが俺はそんな言い伝えに頼るわけにはいかない。

なんとしても原因を探り出さなくてはいけない


もし本当に200年前に同じ事が起こったのだとしても、戦争により資料などは何も残ってないに等しいのが現状だ


戦争が終わってからの歴史しかこの国には存在しない


ああもう、

救世主とやらが本当にいるんなら頼むから早く出てこいよ…





―――――――――――





「ルディ、何か感じるか?」


「もう少し近づいてみないと何とも…」




今俺達が向かっているのは「春の神殿」と呼ばれる、一年中桜が咲き続けている神殿だ。

2、3年程前に突然桜が満開に咲き、それから今まで散らずにいる


何らかの魔法によって咲き続けてるんだろうが、そんな魔法はこの国には存在しない


それにその神殿には誰も入れないように結界が張られている


春の神殿は古代の歴史の謎の建築物として、今まで数々の学者が研究をしようと試みてきた。

だが分かった事は、結界を張った人物と桜を咲かせた人物は別人である…と言う事くらいだ


ダメでもともと。

半ば自棄になりつつも、それでも何か情報が得られればと、幼馴染であり直属の部下であるルディ、サイラスと共に視察にきた






神殿が見えるくらいにまで近付いた時


突如神殿を覆っていた結界が消えたのを感じた


何が起こったのかわからず、緊張が走る


ルディ、サイラスが身構えるのと同時に、俺も背中に担いでる太刀に手をのばす




それから数秒か数分か


神殿の扉が勢いよく開かれた


そして中から出て来たあいつを見た瞬間……




時が止まった




腰まである黒い髪は、風になびいて銀色の光りを放ち


眩しそうに目を覆ったその白い腕も、僅かにしかめられたその顔も、今までに見た事がない、圧倒的な美しさだった




段々と開かれていくその瞼に釘付けとなり、

完全に開かれた瞳を見た時、息をのんだ


あの瞬間、俺はあいつに捕われた




剣を構えてるサイラスが何か言ってる


「何者だ」だって?


そんなの決まってるだろ




あいつは自分に向けられた剣には目も向けず、ただ空を見つめていた


……桜に見惚れてるのか?




確かにこの美しい光景はなんて絵になるんだ


満開の桜の中に立つあいつ




「うるさい」と言ったその不機嫌そうな声に聞き惚れていたら


サイラスが吹っ飛ばされて俺は我に返った



まずいっ…


サイラスとルディがあいつに攻撃をしたら、間違いなく傷をつけてしまう


あの二人の連携攻撃にまともに戦えるやつなんてまずいない




動揺しながらも、どんな時も冷静にと教え込まれた成果なのか、俺はあいつの動きを見逃す事なく追えた


信じられない


あいつは二人の攻撃を軽くあしらった


この程度は全く問題ないとでも言うようなその動き


これが救世主ってやつか


あんなにも美しい女がそんなに強いって……反則だろ


最高だ




あいつと目があった


ああ、話しでもなんでも聞かせてくれよ


俺にもっとお前の声を聞かせてくれるのなら大歓迎だ





今までは与えられた仕事や責任をこなし、これからもそうやって生きていくと思ってた


それが俺の運命だと


でもどうやら…

お前に出会って俺の運命ってやつは動き出したらしいな






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