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―SAKURA―  作者: あおい
2/7


寒っ


身を切るような寒さで目が覚めた


200年前となにも変わっていない、殺風景で薄暗い室内。

まあ石で出来たこんな神殿で寝てたら、体だって冷えきるよね。

よく凍死しなかったな…



火の魔法を応用して温かい空気を作り、風の魔法で体の周りにその温かい空気を留める


うん、

魔法の腕は鈍ってないみたい




体温が戻ってきたところで、んーっと全力で伸びて、寝過ぎて固まった体をほぐしていく


ある程度ほぐれたから、

立ち上がって神殿の外に向かって歩き出した


「200年後の世界はどんなかなー?」なんて軽い口調で独り言を言いながら





少しでも油断すると、

深い哀しみと孤独に呑み込まれるって分かってたから


ここにはもう誰もいない


その現実をしっかりと理解してしまわないうちに、歩き出さなくちゃいけない



あんなにも愛していた人を見殺しにしてまで、歩き続けた道だから





神殿の出口に向かいながら、神殿に誰も入れないようにする為に張ってあった結界をとく




出口へ向かう階段を上って、重い扉を両手で一気に開け放つ


すると目の前いっぱいに広がった明るさが眩しくて、思わず目をつぶった


幻…?

今一瞬見えた色が信じられなかった




しばらくして恐る恐る目を開けると、その色は幻なんかじゃなかったんだって分かった




視界いっぱいに広がる桜色




見渡す限り桜の花が咲き乱れている


「絶対に一人にしない」

そう言ってくれた彼の顔を思い出す


………ありがと


桜を残してくれたんだね


この桜は彼が私の為に咲かせ続けてくれたものだと確信し、

彼の想いが嬉しすぎて、

ただその桜色の景色に見惚れていた






………見惚れていたかったのに、あーもうっ


さっきから実はわざと見ないようにしてたの。

視界に入らないようにしてたの。


この素敵すぎる景色を邪魔する3人の人達の存在を。


私に向かって剣を構えながら

「おい、何者だって聞いてるんだ」って低い声で凄んでる体格のいい茶髪のお兄さん。


紺色の袴を着てても、体中の筋肉が鍛え上げられているのがわかる


そしてその紺色の袴の男の人の後ろで、魔法をいつでも発動できるように構えてこっちを睨んでる、紫色の髪のお兄さん。


黒いローブを羽織って眼鏡をかけて、見るからに魔導士ですって感じ。


そして少し離れたところからこっちを見ているオレンジ色の髪の男の人。





「あーもう…うるさいなあ。200年を越えた友情に浸らせてよ」


目の前で剣を構えてる男の人に目を合わす


「なにをわけの分からないことをっ。何者だと聞いてるんだっ」


「そんなイライラしないでよ。最高の目覚めになるはずだったところを邪魔されて、機嫌悪いのは私の方なの」


怒鳴り声にイラっとして、思わず風の魔法で目の前の紺色袴の人を後ろに吹っ飛ばした


それを見た黒いローブの眼鏡さんがすかさず氷の魔法で攻撃してきたけど、氷が私に届く前に風で氷を粉々にする


その間に体勢を立て直した紺色袴さんの剣先がすぐそこまで迫ってたから、今度は私が風に乗って、剣の間合いから外れる所まで高速で移動する




唖然とした表情で私を見ている黒いローブの眼鏡さんと紺色袴さんに向かって、ちょっと気まずいながらも両手を挙げ降参のポーズをとる


「自分から手を出しておいてあれなんですがー…とりあえず落ち着いて話しませんか?ね、オレンジのお兄さん?」


遠くで薄く笑いながらこっちを見ていたオレンジ色の髪の男の人に、わざと声をかけた


この人が一番冷静だし、多分3人の中での立場も上だと思ったから


そんな私の考えを見透かしたかのように、そのオレンジさんは嫌味な笑顔を浮かべながらゆっくりとこっちに近づいてきた


「ルディ、サイラス、もうやめとけ。俺達3人で死ぬ気で戦って、やっとこいつ一人と互角に戦えるかどうかってとこだろーし」


「ですがジェイっ」


「まあとりあえず、話しってのを聞かせてもらおーぜ。またいきなりこいつが手を出してこない事を祈りながらな」


そう言って降参のポーズをしたままの私に、口を片側だけ上げて笑いかけてきた


嫌味かっ…


人の事は言えないけど

このオレンジ、絶対性格悪い




「それはどーも」


とオレンジさんに嫌味な笑顔を返して、3人に声をかけた


「じゃあ立ち話もあれですし、神殿の中にでも入りますか。たぶん長い話になりそうだし」






―――こうして、

私の物語の第二章はジェイ達との出会いから始まった



そしてその第二章のもう一人の登場人物を、この時の私は全く想像もしてなかった―――







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