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異世界転生しようとしたけど無理だったので現世で無双したい  作者: ゆーえぬおーえん


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2017年夏-2

試験が始まった。私が最初に受けたのは2時限目の現代社会。現代社会は、現代の社会について述べているらしい文章の穴埋め問題に選択式で答えていく形式だ。私には倫理も主義も何ひとつピンとこないけど、もとから4割取れれば合格はできる程度の試験のようだし、気楽に答えていく。問題に集中しているときは声も聞こえないし。


一応は埋まった答案用紙を見直しているうちに2限目のテストが終わり昼食の時間になった。昼食は試験会場内で食べてもいいらしい。参考書を片手にコンビニのおにぎりを頬張る試験者の姿が目に留まった。私もそうするべきだった。私にも母親が作った昼食があるし、何より勉強量が圧倒的に足りないことは痛感したし。


でもやめた。ここにずっといたら息が詰まる。周辺の地形を調べ、会場近くの川辺の公園で昼食をとることにした。

罪悪感を感じながら公園に向かって歩いていると前からワイシャツ姿の3人組が歩いてきた。休憩中の社会人だ。私は迷惑にならないように視線を左下に向け、できるだけ端を歩く。人とすれ違う瞬間が一番緊張する。私の悪口を言っているかもしれないから。彼らは私をただの通行人のように扱い、多分、仕事の話をしながら去っていった。まあそれが当たり前だけどね。いつものように道路を歩き、いつものように仕事をする彼ら。私がこの試験に合格したとしても、その先、彼らのように当たり前のような顔で世間に溶け込む人間になれるのだろうか。


会場を出て5分も経たないうちに公園に辿り着いた。川辺の傾斜の着いた芝生に座り込んで鞄を開く。今時土手の芝生で昼食を取ろうとするなんて気取り屋のすることだし、川の向こうの人々に笑われている気がしたけど、新涼の風がそれを忘れさせてくれた。母親が持たせた昼食はおにぎりで、具は唐揚げのマヨネーズ和えだった。これは私の好物だ。手間のかかる昼食を用意してくれたこと、試験会場までの送り迎えをやってくれること、私にもう一度チャンスをくれたこと、私はこのすべてに感謝すべきなのだろう。しかし、この苦労を産んだのも私の両親ではないか。私への対処がもう少し早ければドロップアウトもしなかったのではないか。放任主義だと言っていたくせに結局私の人生に介入するのであればもっと早い段階で─。両親の庇護のもとで暮らす私に恨み言を言う資格はきっとない。


考え事をしているうちに昼食を食べ終わったし、休憩も一時間しか無いので試験会場に戻ることにする。こんな世界でも心地よい風と肌触りの良い芝生の上で昼食をとれる場所があることには感謝を述べたい。空は曇っていたけれど、それはだれが悪いわけでもないから。


午後の試験は3限目の国語から始まって英語、数学、そして6限目に科学を受けた。どの教科も勉強が足りなくて、中でも数学はひどい出来だったけど、最後まで冷静にはいられた。ほんとは悔んだりするべきなんだろうけど、問題を解くことに集中するのは楽しかったから。


試験を終え会場の外に出ると母親の姿があった。何を言われたかは覚えていない。ただ、帰りの車の中で試験はどうだったか聞かれたから、

「まあまあかな。」

とだけ言って寝た。


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