偽聖女が追放したら
あるパーティの場所でこの国の王太子が一人の緑の髪をした美女を傍において、ある一人のライトグリーンの髪をした美少女を睨みつけていた。
「サラナクよ。よくも、我ら王族を憚ったな」
「殿下、どうゆうことでしょう、私にはわかりません」
サラナクと呼ばれた少女は顔色を変える。
「偽聖女だと、予言者とお前の姉から聞いた」
そのことを聞いた彼女は王太子の傍にいる美女を呆然と見つめた。
「あなたが、偽聖女だったなんて、何を考えているのですか」
信頼をしている姉からそんなことを言われるなんて、彼女は思いもよらなかった。
「お姉様、どうゆうことですか?」
「黙りなさい、お父様やお母様も呆然としていましたよ」
そのことを聞いたサラナクは愕然なる。
「あなたには、今後、我がリマルキの名を使うのを禁止します」
「そんな、お姉様」
姉のさらなる言葉に彼女は驚いた。
「サラナクよ。お前には国外追放を命ずる」
王太子がそう言うと、姉は頷く。
「そう言われると、思っていました。メリス、その女を連れて行きなさい」
彼女がそう言うと、一人のメイド服を着た茶髪の少女が不機嫌そう顔をして現れた。
「はい、アリアス様、今まで、ありがとうございます」
「あなたには、迷惑をかけますけど、この女の監視を含めて、暇を出します。から、連れて行きなさい」
メリスと呼ばれたメイドは顔を顰めて、サラナクの腕を掴んで、アリアスに頭を下げサラナクを引っ張って行く。
「止めて、メリス」
サラナクが彼女に声をかけても、メリスはそれを無視する様にパーティ会場から出ていった。
その様子を、陰からある一人の不気味なローブをまどった男が笑って見ていた。
「本当に、愚か者達だな、これで、忌々しい、あの結界を崩すことができる」
「あら、予言者様、どうなさったのですか」
赤毛の少女が彼に近づいて来る。
「いえ、今、王太子と婚約者によって、偽聖女が国外追放となりました」
そのことを聞いた。赤毛の少女は笑い出した。
「そうなの、あの姉なら庇うかと思っていたけど、我が身がかわいいのね」
「そうですね、結局、誰も自分が、大事ですね」
予言者が笑う。
「ところで、あの女が偽者だとすると、本物の聖女様は何処に」
赤毛の少女が訊ねると、予言者は目を閉じて暫くブツブツと呟いていた。
「すいませんが、まだ、わかりません」
「そうですか、わかりましたら、殿下へ知らせた方がよろしいかと思います」
彼女がそう言うと、予言者は頷く。
「はい、そうします」
「お願いします」
赤毛の少女は頭を下げて、その場を離れた。
それを冷ややかに予言者は見つめ、呟く。
「じつに、愚かな者達ですね、その追放した彼女こそ本当の聖女なのに」
そう予言者はサラナクを国から追い出す為に、王太子に彼女が、偽聖女であると、吹き込んだのだ。
「さて、新しい聖女を選ばないといけないな」
予言者はさらに呟く。
一方の王太子とアリアスは迎え合っていた。
「ダニエル様、ところであの件はどうなりましたか」
「あの件は、そのままいくそうだ」
ダニエルと呼ばれた王太子は笑って言う。
「私は、お止めくださいと、何度ももうしましたけど、アレを手放すのは危険ですと」
「だが、アレを売れば、国費も潤う」
ダニエルは笑うと、アリアスは顔を顰めてしまた。
「きみは、あの伝説を信じているのかい」
ダニエルが訊ねると、彼女は頷く。
「あの予言者は、そんなことは起きないと言っているじゃあないか」
アリアスの顔を見て、ダニエルが言うと、彼女は静かに言った。
「ダニエル様、たった数回当てただけで、あの予言者を信じるのは危険です」
アリアスが訴えたが、ダニエルは笑う。
「その数回が、重要なのだよ」
「ダニエル様、アレは魔王を封じる為に必要な魔法石です。それを売るなんてなにを考えているのですか」
アリアスは再び訴えたが、彼は笑うだけだった。
その様子を見て、アリアスは呆れてため息を洩らす。
数日後、学園の中庭でアリアスは多くの令嬢に囲まれていた。
「あなたの妹さん、偽聖女だった様ですってね」
「あの娘と、我が家はもう関係はありませよ」
アリアスは彼女達に平然と言う。
「そんのは関係ない、あの子があなたの妹だったのはまぎれもない事実」
令嬢達の一人がアリアスを睨みつけた。
「貴族委員から、あの娘は除外されていますので、あの娘は貴族ではなく、只の平民ですよ」
アリアスはきぜんと言い放つ。
「貴族委員からの排除ですって」
その令嬢の顔色が恐怖に染まった。
「家を護る為にそこまでやるの」
「そうよ。我が一族は、古くからこの国を護っていたから、出来損ないを抹消するぐらい当たり前よ」
その言葉に令嬢達の一部はなにも言えなかったが、彼女と同格の令嬢達が言う。
「それで、あなたは、どうしたいの、何時まで、殿下の婚約者のつもりなの」
「そうね、このままだと、私が婚約者だと反対する貴族が出そうね」
アリアスはその令嬢達を見て言った。彼女等の父親はアリアスの父の政敵であり、彼女を王太子の婚約者になるのを反対していたからだ。
「それで、どうするのよ」
「そうね、殿下に婚約破棄を申し上げるわ」
その言葉に周りの令嬢達は顔色を変えてしまう。
「ちょっと待って、そう簡単に言わないで」
彼女と同格の令嬢が慌てて言った。
その令嬢はそのつもりではなかったが、彼女は静かに言う。
「それに、お父様は爵位を返上する。予定と今朝おしゃていたわ」
その言葉に令嬢達は驚きしまった。
「それでは」
「そうてすね、私は学園も本日づけで退学ということですね」
アリアスは淡々と笑顔で言う。
一方のダニエルは別の中庭で、側近から苦言を言われていた。
「殿下、あの女は、妃にふさわしいとはいわれません」
「なにを言っている、彼女は国王陛下により選ばれた者だぞ、我らの勝手な都合で簡単に解消できることはない」
ダニエルはその側近に言い返す。
「ですが、殿下」
その側近が言っていると、学園の教師が走ってやって来た。
「ダニエル君、大変です。アリアスさんが学園を去ることになりました」
「どうゆうことですか、先生」
ダニエルが訊ねると、教師はえりをただして、咳を一つをして襟を糺して言う。
「はい、殿下、彼女の父が、爵位を陛下に返上したそうです」
「なんだと、それはどうゆうことだ」
ダニエルが訊ねると、側近が笑いながら言った。
「おそらく、偽聖女と魔法石の関係でしょう」
そう言われたダニエルは、黙ってしまう。
(それはそうかもしれない)
「でしたら、あの女は終わりですね」
その側近は笑い出したが、教師に叱られた。
「君は、人の不幸を笑うのか、それはしてはいけないことですよ」
「ですが、あの女はすでに貴族ではありません」
その側近はその教師を睨みつける。
「貴族上位主義は、世界ではすでに通用しないと教えたはずですよ」
そのことを聞いたその側近は黙りこんだ。
「世界ですか、ですが、あの予言者の予言だと、近くソレは崩壊ってことです」
その側近が言うと、教師は呆れ顔になる。
「それはありえない、世界には我らにも思いも拠らない力を持っている者もいると、教えたはずですよ。クライヤ君」
クライヤと呼ばれた側近は唇をかみ締めた。
「先生、彼女に会ってきます」
ダニエルが言うと、教師は首を横へ振っる。
「それはいけません、もうすぐ授業の゙時間です」
「そうだった」
ダニエルはその言葉を聞いて、諦めてしまった。
その日の授業で、アリアスが学園を去ることが正式に伝えられ、彼女は、教壇に立って挨拶をする。
「では、皆様、ごきげんよう」
そうして、アイアスは笑いながら、去って行った。
その後、彼女の父親も侯爵と領地を王国へ返上したことが正式に伝えられる。
それに対して、喜んでいる貴族は多くいたが、彼の゙領地にはこの王国の経済を支える土地であることをけ失念していた。
彼ら一族は数日の内に王国から姿を消す。
すると、貴族達は、その領地を誰が、継承するか、話し合いがもたれる。その中にあの予言者がいた。
「どうかね、予言者殿、誰があの地を治めるのにふさわしいか」
「そうですね」
予言者は目を瞑りブツブツと唱えて、目を開く。
「観えました。レイナラ子爵があの領地にふさわしいと出ました」
「なんと、確かに、レイナラ子爵なら、領地経営がとても上手いのでやれる」
他の貴族達が言うと、レイナラ子爵は恐縮しながら、頭を下げた。
「わかりました。古墳奮闘させていただきます」
その様子を見て、予言者は静かに笑う。それは、その土地には、魔王を復活させる儀式ができる物が封印されているからである。
(これで、あの男を騙し発掘させれば、魔王様が復活する為のアレを)
「それでは、レイナラ子爵、これから頼むぞ、我が国の発展の為に」
「はい、わかりました」
レイナラ子爵は再び頭を下げた。
その様子を、予言者は冷ややかに見る。
(これで、世界は再び、我らが支配する時が来る)
実は彼は魔族であった。長い時をかけて、調べてこの国に魔王が封印されていることがわかり、予言者と偽り貴族達を騙し、王侯貴族達に信用を得た。
そのことを思い出して、預言者は笑った。