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赤’*い’  花

俺は海のそばにいた


硝子が光を飛ばして、俺の影を濃くしている


影は空気に為って、熱を運び、穏やかに流れていく


歯は葉を齧り、肌から腸が溢れ、髪から広がる俺の身体は溶けて温かいセルロイドの血として空から降りた


やがてそれは柱となって森の空間を複雑に構成していく


俺は枝をとってその先が指し示す方向を見つめた


―誰かいる!


かさかさと油取り紙が音を立て、眼の前にあらわれたのは白馬だった


大木の霞がかった間から、はらりと見えた姿は美しい


「この向こうに砂漠があります。案内しましょう」


そんなわけがない。こんなに木が生えているのに!


でも、白馬の言った通りだった


光の射さない森をぬけ、しばらく泳ぐと、砂だらけだった


白馬は砂丘の方へ駆けていく


俺は歩いて、お城に着いた


コーラル色の空が寂れたお城を際立たせている


俺は城壁のレンガを手でなぞった


枯れた蔦の感触を楽しみながら入り口を探す


入り口は堂々と目の前にあった


なんで気づかなかったのだろう?


俺は中に入って、螺旋階段を上った


壁に掛けられた絵画の中で、さっきの白馬が殺されていた


それが過去の記憶であることが分かっていたので、俺にはどうしようもなかった


最上階のドアを開けたら、小さくて丸い机に、透明なプラスチックのドームに入った花があった


俺は花に近付いた


鮮やかな紅の花は俺を釘付けにして離さない


幾度、頼もうが離さない


何度、懇願しようが離さない


俺は諦めてずっと見つめた












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