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V.異世界転生モノのド定番!

 冒険者ギルドの建物に入って、真っ先に私達が耐えるべきことはひとつ。


 奇異なものを見る人々の視線だ。まあ身長高いほうは周囲を軽く警戒しながら、低いほうは堂々と入ってきてるし、何よりこの見た目が派手なのだ。赤髪赤目と全身白ローブ。目立たないほうがおかしい。まあどうせ目的を果たしたら二度と来ない街、気にするだけ負けだ。

 アレンくんに適当に話しかけながら、受付のカウンターに向かう。


 受付嬢は黒髪をポニーテールにした女性だった。異国語でペラペラと説明がはいる。



「ここに名前と、チーム内での役割を、と」

「はいよ」



 いやあ通訳いるってだけでも全然違うね!えっと名前は……偽名でいいか。『ヴァイス・F・ルーラー』とかでいいか(適当)。


 役割?うーん、特に思いつかないな。強いて言えば偽物劇場の館長だけど、流石に冒険者として登録する以上そんなことは言えない。そうだなぁ、じゃあとりあえず射撃手でいいかな。未知の技術(拳銃)を用いて魔物の頭を撃ち抜くガンマン(マン?)。


「じゃ、アレンくん書いて〜」

「はいはい、ちゃんと書きたい内容申告してくださいね、俺は別に心読めるわけじゃないんで」



 さて、一応冒険者カードはもらった。身分証にもなるので、失くさないように、と釘を刺されたので気をつけよう。失くしても多分偽造すりゃバレないだろうけど。


 これで晴れて私たちは、立派な冒険者だ! まあ、最初は簡単なクエストからだろう。

 まずは薬草採取、とかかな。



「…で、アレンくーん?君さっきからすっごい目で見られてる気がするんだけど、どういうふうに書いたの?」

「名前はアレン、役割はあんたの護衛、あと悪魔」

「そこまで書くなああ!?」



 そりゃすっごい目で見られるわな!自称悪魔とかふつーにやべーやつだわな!私が生きた時代の厨二病でもそんなん書かないぞ、公的文書だからねこれ!?


 



「…とりあえず、薬草採取のクエスト受けますねって言ってきて…」

「はい」



 そう言ってカウンターに向かうアレンくん。

 胃痛を抱えながら彼が翻訳してくれた説明を聞く限り、やっぱり強い魔物退治とかはしっかり「このくらいの強さはありますよ」と周囲に知らしめるために、上級ランクの人と直接バトルするランク試験があるらしい。戦闘慣れしてない初心者がそれなりの魔物と対峙できるわけもないからね、まあ妥当なしくみ。


 そう、この世界においては、「冒険者」と銘打っているが「冒険」はしないのだ。

 アレンくんに教えられて初めて知ったんだけど、どうやら冒険者は、未開の地の調査や街から街への移動の際の護衛や、少なからずの危険があるところでの簡単な物質の採取(場所によっては土や石を持ってきてくれ、なんて依頼もあるらしい)など、要は肉体労働専門のなんでも屋。

 だからこそ管理はされど門は広く、多少の内輪もめも規則さえ守っていれば許される。イメージが先行する魔物退治も、素材集めやその生態の調査が目的の場合が多く、むしろ数は少ないらしい。ダンジョンみたいなモンスター大量リスポーンで経験値も素材もウハウハみたいな場所も無いんだって。へー。


 まあ私に関しては、魔物退治が目的じゃないからね、人との関わりによる情報と金銭の確保が目的だからね。なので、今日受けるのは超初心者向けの薬草採取。雑草と間違えて持ってきちゃっても、ギルドのほうで仕分けてくれるんだって。まあ初心者が見たやつを持ってくるわけですからね、期待するだけ無駄なんだろう。わあ現実的。

 アレンくんが受注手続きをしている間、私は掲示板の前に立つ。



 うーん、これは……ダメだ読めない。知ってた。

 これは比較的弱めの魔物なのかな?こっちはなんかゴツいし強そう。これは葉っぱを集める依頼で、こっちは花を集める依頼なのかしら。写真(正確には絵だけど)付きって助かるわあ。



 アレンくんが戻ってきた。

 彼の手には、数枚の紙切れが握られている。


 それを受け取って確認する。うん読めない。翻訳してもらう。


 内容は簡単、地図が描かれていて、そこにある薬草を全て摘み取ってきてほしいというもの。依頼主は街の薬屋さん。なるほど、確かに簡単だし、街道からも近いところだから何かしらのハプニングがあっても安全だ。他の植物掴んで手が荒れないように手袋も支給されるらしい。

 でもこれ、本当に全部採ってもいいのか? 生態系崩壊しません??…根っことか種くらいは残しておこうか。



 とりあえず、私はアレンくんと一緒に、その地図の場所へと向かうことにした。



***


 結論。楽勝すぎワロタ。


 だって、普通に歩いてても生えてるんだもの。一歩歩けば5本見つかる。しかも葉っぱ一枚で普通に薬になる。こんなんでお金貰えるなんてちょろいぜ! 報酬は葉っぱ十枚辺りで銅貨1枚。私らが稼いだのは銀貨50枚。銅貨一枚がだいたい100円、大銅貨一枚が500円、小銀貨一枚が1000円、銀貨一枚が10000円。その上に大銀貨、金貨、白金貨と並ぶのだ。ちなみに、10円単位の小銅貨もあるのでお釣りとかにも安心。

 いやあ、にしても葉っぱ見せたときのカウンターのお姉さんの顔すごかったな。どんくらいが正解かわからなくてとりあえず山盛り持って帰ってきた私に対して「皮袋(コンビニで渡されるビニール袋と同じくらい)ひとつ分でいいんですよ!」って叫んでたらしい。アレンくん談。


 


 とりあえずもう夕方だし、宿とって休むかあ。この街の名前は確か……そうだ、アルンの街。アレンくんと名前似てるね、もう少しひねればよかった。



***


 さて、次の朝。


「今度は魔物退治でもしてみたいねえ」

「そのためにはある程度の実力見せる必要がありますけど」

「げっ」


 そんなことを話しながら街を歩いていると、後ろから声をかけられた。振り返るとそこには昨日の受付嬢。

 どうしたんですか、と尋ねると、彼女は少し困ったような顔をしながら言った。

 曰く、最近この辺りではぐれ魔獣が出るので討伐してほしいとのこと。それさあ、まだ薬草採取しかできない私たちでいいの?そういうのってスズメバチ駆除みたいに専門家…というか実力派の冒険者に頼んだほうがいいんじゃ?


「=___#$%&"+'()?>~」

「…昨日魔の森に行ってきたんじゃないか、と」

「うそお!?なんでバレてんの!?」

「…俺の靴に、魔の森の草がついていたらしくて…」

「確認しとけ!!」


 アレンくんのせいだったわコノヤロウ!

 ちなみにその受付嬢曰く、その魔獣、好戦的なのに素早く、隠れる技術もいっちょ前でギルドが手を焼いてるんだとか。でも実力のある冒険者は常に指名依頼で引っ張りだこで、そこまで大した被害が出ていないそれの為にわざわざ時間を割いてもらうのも忍びないらしい。

 あーなるほど、わざわざ一日時間作ってもらって、姿が見つからずに「成果も進退もなしです」はたしかに申し訳ないわな。テレビ番組一発撮りとかならそれでもいいけど、こちとら市民の生活と冒険者の名誉の両方がかかったそこそこな事件だ。時間返せって言われてもどうしようもないもんなぁ。


 ……まあ、そういうことなら仕方ない。ちょうどいいしやってみるか。

 そう思って、私は受付嬢についていった。







 まあ、ぶっちゃけると余裕で倒せましたよね。


 私が「あ、あそこ」って言った瞬間にアレンくんが素手でぶっ飛ばし、蹴り飛ばし、最終的には相手がくたばりました。いや〜、アレンくんは強いなぁ! さすが歴代最強クラスの魔物!「最強クラス」ってだけで最強ではないけど。ただ強いだけ。でもあの反応速度はちょっと引いたぞさすがに。


 受付嬢はこちらにペコペコ頭を下げている。一瞬あまりの早業に呆然としてたけど。いや、むしろこっちこそごめんなさい。まさかあんな展開になるとは思わなかった。うん。


 ちなみにアレンくんが倒したので、ギルドの中でアレンくんの評価(評定?)が上がった。つまり、あくまでアレンくんの強さを測る基準はアレンくん自身で、私を測るのも私の実力ということですねわかります。




 ……で、だ。

 アレンくんが「私の護衛以外やらない」と言い切ってたので、私達はペアなら魔物退治OKになりました。私は最低のGランク、アレンくんは高めのBランク。Bの上にはA、S、SSと続くわけだ。うーん、たしかに、アレンくんはDとかCとかなら瞬殺できるんじゃないだろうか。


 …いや、あれか。私の実力も加味したら、AランクやSランクも余裕で倒せる気がする。怖いわ〜。

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