II.作者様のぉ、ありがたい解説ぅ!
うーん、私が作っといて(転生させといて)あれだけど、これ多分あれだな、人間じゃないな。
「ご明察!」
「うおわぁっ!?」
後ろから唐突に声がして肩が跳ね上がる。ぐるりと振り向けば、作者のアバターが立っていた。
「何してるんですかあんた!?作者が物語に直接干渉しちゃダメでしょ!?」
「だーいじょうぶだって。君が作ったアレンくんもまだ意識ははっきりしてないし、何より多少の説明係は必要でしょ!」
「それでいいのか作者…」
いーのいーの、なんて言いながら、彼女は私に白い布を手渡した。
「…なにこれ」
「隠し要素見つけてくれたご褒美♡」
軽く広げてみれば、それは真っ白なローブだった。肩から足先まですっぽりと覆えそうなローブ。試しに軽く着てみると、サイズもぴったりで違和感がない。その場でくるりと一回転。…なにこれ、マジでぴったりサイズなんだけど。ちょっと怖い。
「それねー、ちょっと特別なやつ。ついてる機能はねー、えっとたしか、『魔法無効化』『物理攻撃透過』『自動カウンター』『温度・湿度調整』『使用魔力減少』『身体強化』…あとなんだっけ、『千里眼』に『念話』?あ、それと『サイコキネシス』と『自動洗浄』もあるね」
ちょっとってなんだっけ。ツッコミどころしかないんだけど。まあいっか。とりあえずありがたく受け取っておくことにする。着心地めっちゃいいし、制服ドロドロになっちゃったし。
「あ、制服に関してはこっちで直しておくから後で出しといてね」
「『後で』ってあたりに若干の慈悲を感じる」
「さすがに異性の目の前で着替えろなんて言わないさね」
当たり前だよ。いくらなんでも恥ずかしいわ。
「さて、話を元に戻すとね、彼…館長さんが作ったアレンくんは悪魔です」
「はあ」
「ちなみに、この場合の悪魔は『神に反する者』ではなく、『自身が信仰するものではない神』に対する蔑称、邪神と同じような扱いとなります。つまりは神です」
「ルビのが長いんですが」
「しかも、歴代の魔物の中でも最強レベル」
…………。
はい?
「だから、最強レベル」
……はああああっ!!!?? 思わず叫んでしまった私の反応に満足したらしい。作者アバターはふふんと鼻を鳴らした。
待って、ちょっと待ってよ。なんなの? 最強の悪魔()を作って私にどうしろと? この世界の魔王でも倒せと? 無理ゲーなんですけど。そもそも魔王とかいないし。彼を作ったのも「通訳欲しいな〜せっかくだし優秀な人がいいな〜」っていう軽いノリだったんだけど? それがどうしてこんなことに……! 頭を抱える私を尻目に、作者のアバターは楽しげに口を開いた。
「まあさすがに確定で最強ってわけじゃないけどね。頭脳で秀でているわけでもなし、魔力も過去最高のレベルが高すぎて超えられない。…あれ?別に全然最強じゃないか」
「『最強』の上限がインフレしまくってるんです!異常性に気付け!!」
「いやまあさすがに大丈夫でしょ、館長さんもいるし!じゃ、あとは頑張ってね〜♪」
そう言って手を振って消えてしまった。
え、嘘でしょ。まじかあいつ。まじかあいつ。本当に必要最低限、いやそれすら足りないような説明して帰りやがった。いや、作者が物語に干渉するわけにもいかんから正しいけど!けど!それにしてももっとこう、あるじゃん。なんか、そういうのあるでしょ。チート能力とか。最強になれる方法とか。ほら、あの有名な、主人公にだけ使える伝説の剣的な。……うん、ないよね。知ってる。知ってましたとも。私がそれを手にしたら本格的にチート+チート=超絶チートの地獄絵図だもんね、真面目に。
…………。
「いやこのローブかよ!?」
あったよ!私にチートを足すク(ゲフンゲフン)バグみたいな方程式!総合力で既に尖りまくってる私に更に防御だの無効化だのバフをつけまくるヤバいブツが!!!!
ため息をつく。諦めよう、あいつに普通のGame Master、いやStory Masterを求めることすら不毛だ。私は気を取り直すように頭を振って顔を上げた。