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ちょっとした小話:「この世界における領域概念の話」

「ねーアレンくん、あの人たちなにしてんの」

「はい?」


 私が指差す先には何人かの人が居て、私が出した船の甲板にあるポールに冒険者ギルドの旗を掲げていた。


「ああ、冒険者ギルドの旗を掲げているんですよ」

「見りゃわかるよ。なんであんなことしてんの?」

「そりゃ複数国の領海を通過しますからね、遠目から密漁船やスパイ、他国の軍隊でないと証明する為に必要になるわけです」

「あーーー……そっか、世界連合の下の冒険者ギルドがあるから、世界情勢があるのも当たり前か」

「はい」


 この世界にも領域――領土・領海・領空の概念があるのなら、あのとき空を飛んで行く選択肢取らなくて良かったわ。大犯罪者になるところだった。地中海のみならず全部つっきってく選択肢だしね、あれ。

 ――ん?


「アレンくん、この世界って空を飛ぶ技術はまだ科学的にはなかったように記憶してるけど」

「? はい」

「領空の概念はあるの?」

「あ゛ーーー…たー、しか…あったはずです」

「あ、あるんだ」

「ほら、空を飛ぶ方法は無いわけじゃないんです。実用的じゃないだけで」

「え、嘘ぉ!?」

「実際、魔法以外には熱気球が存在しますよ。人が乗せられるようなサイズではありませんが…」


 アレンくんが描いたイラストによると、この世界の気球は、あの、空飛ぶランタンがあるらしい。たしかアジアらへんのどっかのお祭りで大量に飛ばすやつ。行灯(あんどん)だっけ、天灯(てんとう)だっけ?名称忘れた。

 へー、あ、それにくっつけて麻薬の密輸とかされたらどうにもなんないかんね。実際に過去の世界ならともかく、この世界は一時期現代と同様かそれ以上の技術を持っていたからその発想も出てきちゃうわな。


「それと、通らせてもらってる領海の保持国から手荷物や人物検査を受ける可能性が考えられます。密輸入や違法入国、要人の違法での輸送を防ぐためですね」

「『彼女』、その辺の悪意も作為もしっかり作ってるからなぁ…」

「だから、荷ほどきして部屋を散らかしっぱなしにしてるとただ恥をかくだけで終わります」

「後で片付けするか」


 そうだよな、普通検閲が入りますわな。そもそも国境を越える段階で、手荷物検査が行われないほうがおかしい。そうじゃなきゃ、冒険者にそう秘密裏に依頼すればいいだけの密輸祭りになって、市場が根本から瓦解する。冒険者はあくまで入国検査を簡易的にするだけでなくす権限はない。

 たしか、冒険者カードを出して本人確認して、入国の目的を答える。期限の提示はしない、突発的に移動するのが冒険者なのだ。

 …あれ、工程だけ見ると一般市民と大して変わんないな、手荷物検査もあるし。あくまで冒険者は出入国の敷居を下げるだけ、って認識を改めるほうがいいかも。


「あと、個人営業の船って認識なので、普通だったらご主人が入国の際に税を払います」

「え、ちょ、え!?マジ!?」


 や、ヤバい!!そこまでのお金あったっけ!!?


「あ、いや、今回はあくまで、この旅の最高責任者はムーティヒさんなので、彼にこの船を移譲する――手段として冒険者から雇用者へ提出する、というかたちにすれば、税は彼が払うことになります。勝手ながら話を進めておきましたんで、後はご主人の監視の下で俺にサインさせてくだされば」

「うわああああアレンくんありがとおおおおお!」


 良かった!私の補佐超優秀!!アレンくんバンザイ、転生させてよかった!!


「最後に、無事Shelkerを退治できた暁には多額の報酬が出るので、そのお金でこの船を買い戻していただければ。もちろん、文句の一つも言えない正当な値段で」

「あーうんそうだね、そこは気をつけよう」


 現実にも歴史上にも、土地や会社の水面下での取引の下、不正に安く売買する、なんて事件あるからね。私達は清く正しい一介の冒険者なんで、綺麗な市場の中でたっかい買い物をさせていただきましょう。


 や、本当にアレンくんがいてよかったわ。こんな、倫理とご都合主義で作り込まれた世界を、言語もわからぬまま一人旅とか無茶振りすぎる。

 …やっぱ『彼女(作者)』ってかなりイカれてるよね。

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