親の幸せは、子供の幸せです 〜現代恋愛のスクールラブ好きな人向け〜
私の名は瀬戸朝。妻を亡くし高校生の息子と2人で暮らしているサラリーマンだ。
実は今再婚を考えている、相手は同期の古伊万里紅葉さん。
「瀬戸さん、近所で美味しいって評判のバウムクーヘンを持ってきましたよ。」
「前も貰ったけど…うん、やっぱり美味しいねぇ。ありがとう古伊万里さん。」
紅葉さんも旦那を亡くしていて高校生の娘と2人で暮らしている。
再婚をするとなれば子供たちは同世代の異性と暮らすことになるのが最大のネックだ。高校生になって突然同い年の家族が出来るなんて絶対に一波乱あるだろう…
だがしかし、これから大学進学なども考えればシングルファザーとシングルマザーより子供たちも生活がしやすくなるはずだ。
私と紅葉さんの方は再婚する意思がある。後は子供たち…近いうちに顔合わせをしておきたい…受け入れてもらえるだろうか?
仕事が終わり電車に揺られ家に帰る。ドアを開けると心当たりのない女物の靴があった。ここ…我が家だよな?
困惑していると息子の瀬戸夜と…どこか見覚えのある女性が現れた。
「父さんおかえり!あの、こちらは俺の彼女です!」
「お父さん初めまして!私、夜くんとお付き合いをさせていただいています古伊万里楓です!」
こいまり?古伊万里さん?とても珍しい苗字だ。私が人生で会った古伊万里さんは2人目だよ。
「あの、良かったらどうぞ。近所で評判のバウムクーヘンです!」
「バウムクーヘン…」
状況証拠が揃ってしまった。まさかなぁ…
「古伊万里さん、君のお母さんってもしかして古伊万里紅葉さん?」
「母を知っているんですか!?」
「あ、あはは…会社の同期なんだよ。もう遅い時間だから夜、送ってやりなさい。」
父さん、ちょーっと1人になりたいかな。
「父さんに紹介したくてこの時間まで居てもらったんだよ。じゃあ彼女を送ってくるね!行こう楓!」
「うん夜!お父さんお邪魔しました!これからもよろしくお願いします!」
いい子そうだなぁ…紅葉さんの子だもんなぁ…
再婚しようと思っていたら先に子供たちがくっつくとかとんでもない事になった。しかも高校生カップルなんてふとした拍子に破局してもおかしくない。一緒に暮らしてもし別れたら…ずっと辛い家族になってしまう。紅葉さんに相談せねば…
TRRRRR
『紅葉さん今大丈夫かい?緊急だ。』
『朝さんどうしましたか?何がありました?』
『私たちの子供たちが付き合い始めた。今日ご挨拶されたよ。再婚して別れたら家庭内の空気地獄待った無し。』
『……ちょっと信じたくないので娘が帰ってきたら聞いてみますね。』
『娘が彼氏を紹介してくれました。朝さんが20年若かったらこんな感じかなぁって彼氏を…』
『再婚、ちょっと様子見しましょうか。』
『うう…来月にでもお互いの家族で顔合わせの予定だったのに…』
『先に顔合わせしていたらそれはそれで子供たちが大変だったかもしれませんし…あ、でも破局後に再婚も気まずいんですよね…』
『なるほど。少し考えますね』
一旦紅葉さんからの声が止まる。しばらくすると案が纏まったようだ。こういうデキる所が素晴らしい女性だ。
『子供たちが幸せになるパターンはA子供たちが結婚後に私たちが再婚する。 B子供たちが破局して大人になり、それぞれが結婚後に私たちが再婚する。 C子供たちが破局して大人になり、お互いが家族になっても気にならない年齢になってから再婚する。 の3パターンでしょうか。』
『子供たちの幸せを第一にしつつ再婚は確定なのが嬉しいよ。ありがとう紅葉さん。』
『私も朝さんと結婚したいですからね。』
しかしまあ、この3パターンとなると…
『一番良いのは子供たちがこのままゴールインする事かな?もちろん本人たちに結婚する意志があればだけど。』
『大学卒業を経て就職と結婚もしてからが私たちが再婚する一番良いタイミングかもしれませんね。』
『そうだね、孫が生まれる前に再婚しておいた方が子供たちも預け先に困らないだろう。現状では共働きだけど再婚後は紅葉さんは家に居てくれる予定だったし。』
『娘夫婦に頼られながら孫を見つつ、朝さんの帰りを待つ日々が今から楽しみですよ。…何年先の話かわかりませんが。』
『まあ、親に出来るのは…子供たちが上手くいくように立ち回ることだね。』
『ええ、合わないなら仕方ありませんがすれ違いや横やりはガンガン潰しましょう。』
私と紅葉さんは色々やった。
子供たちの趣味からオススメのデート先を探しそれとなく教え。子供たちを別れさせようとするクソおn…恋に振り回された悪女に路上で説教をし。サプライズを仕掛けあって浮気を疑うお互いを「相手の事を想うなら疑われてまでサプライズをするな」と諭し。大学のテニスサークルに入ろうとする娘を全員で引き止め。就職も決まってからはさっさと結婚しろと背中を蹴り続けた。
そして今日、息子と娘が結婚する日だ。
結婚前から私と紅葉さんは子供たちを自分の子供たちだと思っていた。世話の焼き方がもうどっちも我が子のような扱いだったもの。
私たちの再婚は予定よりずいぶんと遅れてしまった。5年かな6年かな?でもそんな事より子供たちが幸せなのが親の幸せだ。今日を無事に迎えられて良かった。
「紅葉さん、再婚が遅れても後悔なんて無いよね?」
「もちろんです朝さん。親の幸せは子供の幸せですから…私は今日、とても幸せです。」
結婚式は洋式、黒いタキシードと白いウエディングドレス。
見ろよあの幸せそうな2人。私たちの子供たちなんだぜ。最高に幸せだよ。
誓いのキス、ケーキ入刀。幸せそうな2人を見て本当に…私たちが親で良かった…紅葉さんと肩を寄せ合い泣きあう。涙が止まらない。
結婚式の最後はブーケトス。
だが、来客が外へ出る前に司会が止める。
『ブーケトスを期待された皆さん申しわけありません。新婦新郎からメッセージがあります。新郎、マイクをどうぞ。』
「結婚式に来てくださったみなさんすみません。ブーケは投げません。渡したい人がいます。」
「お父さんお母さん、私たちのために。夜と楓のために再婚をずっと待っていてくれてたんだよね?いままでありがとう。2人も結婚してください。」
どうして……なぜ、きづいた…
「実は何かサプライズでお返しできないかなって父さんの部屋に入ったときにね、見ちゃったんだ。父さんと母さんの名前が入った婚姻届けを。」
「どうして今まで再婚しないのか、私たちのために我慢してくれてたんだろうなって。」
「だからもう、俺たちは就職して結婚もして家庭のある大人になりました。お父さんお母さん。俺たちはもう大丈夫です。」
「私たち結婚出来てとても幸せです。今までありがとう、お父さんお母さんも結婚して幸せになってください。」
「「親の幸せは子供の幸せだから。」」
なに、も…ことばが もう 泣くしか、できないだろう、こんなの
子供たちに私と紅葉さんは手を取られ、4人の手が集まり。ブーケを手渡された。
ありがとう朝、楓。2人が子供でお父さんとお母さんは幸せです。
後日、紅葉さんと籍を入れて結婚式はいいやって言ったら夜と楓に家の中で泣きながら祝われてみんなして泣いた。幸せだった。
最初の「お父さん」は「夜くんのお父さん」
結婚式の「お父さん」は結婚相手の親じゃなく「私のお父さん」
そう思っているので本作ではお義父さんお義母さんという表記がありませんでした。