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チーム語劇  作者: ガンベン
結びあう離れた光たち
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本番直前の練習

 広川は、次の日朝7時半に大学の会場に到着すると、何人の後輩や同級生が来ていて、練習をしていた。よく見ると、展示部門の人たちやレセプション部門の担当者もそこにいた。その真ん中に、広川の同級生の高本祐輔がいて、大きな声で周りの人と話をしていた。

 高本は、広川を見ると言った。

「おー、広川。久しぶり。おはよう。今、ビデオ撮影の確認をしていたところだったんだ」

 高本は、当時の中国語劇の時に、手伝いでビデオカメラを撮る係を担当してくれていたが、間違ってビデオカメラのレンズキャップを付けたまま、撮影してしまい見直したら真っ黒な画面にセリフと観客の動作音しか映っていなかったという大きな失敗をしてしまっていた。ただ、高本の性格とキャラにより当時は反省の素振りもなく、「みんなの心の中に語劇があるから、見える記録なんて必要ない」と開き直っていた。ただ、本心では、ずっと後悔していたらしく今回の同窓会で中国語劇をすると聞いて、ビデオ係をすると快く引き受けてくれていた。

「今回は、ばっちり撮るから安心してくれ」

 明るい性格の高本は、後輩にも慕われていて、そう言うと、後輩たちも笑いながら言った。

「本当に、今回は間違えたら、しゃれにならないですから」

「任せとけ!」

 また、そこに笑いが起こった。そうしていると、中国研究会の先輩たちが到着し始めた。そこに、広川が1年生の頃の3年生だった比嘉勉もいた。長い間会っていなかったので、広川は二度見してから、比嘉に話しかけようとしたが、その前に比嘉が声をかけてきた。

「久しぶりだな。浩司。元気そうでなによりだよ」

「どうもお久しぶりです。比嘉さんこそ、元気そうな感じで。ところで今日は、何か担当されるんですか?」

「俺はこの同窓会の幹事をしてるんだ。」

「そうだったんですね」

「時間がない中だったけど、なんとか今日を迎えれて良かったよ。語劇の方は、上手くいきそうか?」

「はい。大丈夫です」

「そうか、楽しみにしてるからな。じゃあ、また後でな」

 そう言うと、比嘉は会場を出ていった。その光景を見ていた恵子が広川に話しかけた。

「比嘉さんって、広川さんの先輩でしたよね」

「ああ、そうだよ。僕が1年生の時の、中国語劇の運営委員長だった方だよ。その時、中国語劇っていいなって思って、3年生の時に中国語劇をしようと思ったんだ」

「そうだったんですね。そういえば、同窓会の打ち合わせの時、広川さんのシナリオの事で話をしたら、とても気に入ってくれていて、私の後押しをしてくれた一人でした」

「そうだったのか。ありがたいな」

「なんか、広川さんにも先輩がいるってすごい不思議な気分ですけど」

 そう言うと、恵子が笑った。

「僕からしたら、奈須さんに後輩がいるっていうほうが不思議な気分だよ。ところで、奈須さん、同窓会の幹事と語劇も劇員としてやってくれて、ありがとう」

「ええ、大変でしたけど、広川さんたちとまた、こうして中国語劇ができるなんて、本当に夢のようです。今日も宜しくお願いします。監督!」

「こちらこそ。そういってもらえると光栄だよ。よし、あと少しだけど、みんな頑張ろう」

 広川が、そう言うと恵子も笑った。しばらくすると、8時になり、みんな会場に集まってきた。相変わらず、和史は来ていなかったが、リハーサル時間と本番の時間を再度確認して、発声練習を行った。本来は、昨日と同じ青空広場で発声練習を行う予定だったが外は若干雨が降っていたので、屋内で行うことになった。観客席で、円形になり発声練習を行うと、皆の声が会場中に響いた。

 発声練習が終わると、いよいよ衣装を着て、シーン練習を行うことになった。皆、最後の練習だと思い、セリフの確認やお互いの動作の確認を行い、9時からリハーサルを行うことになった。広川の挨拶も含めて最後まで行うことになっており、自分の挨拶を舞台の袖で練習しながら、リハーサルを見ていた。袖から見ると皆、真剣な眼差して練習をしていた。

 後少しで本番かと思うと、胸が熱くなり涙が出そうになった。ただ、これから本番で広川自身も最後の挨拶をするという緊張感で一杯だった。

 その間に、リハーサルは順調に進み、クライマックスの場面になった。主人公たちがタイムマシーンに乗り、おじいさんの手紙を読んだ後に、ナレーション役の摂山浩紀が出てきた。摂山は、圓谷と同級生ではあったが、年齢は広川より2つ上だった。年齢的な不自然を感じることもあったが、その間の事は当時も、特に触れることはなかったが、少し謎めいていた後輩だった。

「まだ見ぬ21世紀に心弾ませ、おじいさんの手紙を持ってタイムマシーンに乗っていった主人公。彼らが、21世紀で見るものは何でしょうか?明るい時代、それとも悲惨な時代でしょうか?この話の続きは、ここから始まります。そう、ここにいるあなた達が、主人公になって21世紀を創っていくのですから!」

 摂山がそう言うと、舞台が一度暗転し、舞台のモニターに観客席が映し出された。そして摂山が最後に改めて大きな声でこう言った。

「ここにいる人たちが、22世紀に続く世界を切り開いていくのです」

 そう言うと、モニターが消えて、暗転し、摂山が左側の袖にはけていった。そして、モニターにエンドという文字が映し出されると、悦子が劇員の名前を呼んで、その劇員が出てきて、挨拶をする。皆が呼ばれると、最後に運営委員長の広川の名前が呼ばれて、挨拶をした。それで、一通りリハーサルが終わった。

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