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チーム語劇  作者: ガンベン
転換期
13/32

明日やること…。

 越野が自分の部署に戻ると、いつもと変わらず広川が仕事をしていた。先程のやり取りの後でかなり緊張感があった。

 越野は広川に話しかけようかと、躊躇した。部署の皆に話すべきか、自分の机の前で立ち止まりしばらく考えた。だが、やはりやめておこうと思い、そのまま椅子に座った。

 そして、皆に仕事の進捗状況を質問して、的確に指示を出して行った。そして、最後に広川にも状況を確認した。

 広川は、いつものように、下を向いて答えた。「今日中には終わらせるようにします」と答えた。越野は冷静を装い、「そうか。じゃあ、皆仕事を始めてください。また何かあれば相談して頂いて結構ですのでよろしくお願いします」

 課員が「はい。わかりました」といって、自分の席に戻って行った。越野は、広川が自分の席に座る姿を横目で見届けると、自分も机に座り、パソコンの電源を付けた。

 いつものように流れる時間が今日も同じように流れていた。時折、越野は広川の方を見た。

 昼休みが終り、午後からの仕事が始まった。

 それなりに、その日も忙しい一日だった。そして、定時になると、広川はいつものように帰って行った。

 越野は、その後ろ姿を見ながら、大きく息を吸った。そして、周りを見渡しながら、すぐそばの席の古戸に話しかけた。

「朝、広川が一人で戻ってきた時に、何か広川が言ってなかったか……」

 古戸は首をかしげて、隣の立花と顔を合わせながら、越野に向かって答えた。

「いえ、特に変わりはなく、静かに仕事してましたよ。いつもの様にね」

 そういうと、他の課員同士が顔を見合わせて、くすっと笑った。越野は、小さく「そうか、いつも通りか…」とつぶやいた。そして「それなら良かったよ。いや、変な事聞いて悪かったな。今日は私も疲れているから、もう帰ることにするよ」と普段のトーンに戻りパソコンの電源をきった。そして明日やることを軽くメモに書きとめようとした。明日やることっか。ふいに越野は、立ち上り広川の席の周りで立ち止まった。他の課員が不思議そうに越野の行動を、パソコンを見ながらうかがっていた。そして越野は、一人呟いた。

「あいつは、いつも何を思って会社に来てたのか……」

 そして、また歩き出して、自分のジャケットを取った。いつもより時間をかけてジャケットを着ながら、自分に気合いをいれるように「よし」っと小さく声に出し、玄関のドアをあけて、「それじゃあ、先に帰るから。お疲れ様。」と言って少し足早に退社していった。

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