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第12話(マッハサイド)

 ハールやアレイレルが所属しているチームメンバーも参加する「仲間内ランク付けバトルテスト」と言うものがある。それは彼らの仲間内で、年に1回行われている世界選手権でもある。

 ハールはカナダ代表、それからアレイレルはアメリカ代表で参加しているが他にもオーストラリアとニュージーランド、タイ、中国、韓国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、イギリス、インド、ブラジルと言った様にそれぞれ色々な格闘技を身につけている選手達が総勢35人で参加する。

 普通にクジ引きでトーナメント戦が組まれ、5分1ラウンドでKOありのバトルとなる。

 2015年に行われた第1回大会ではハールが7位、アレイレルが4位と言う結果になっている。

 第2回大会が行われた2016年はハール11位でアレイレルが6位まで落ち、去年の2017年第3回大会ではハール16位、アレイレル10位まで更に落ちた。


 しかしランクが落ちてしまったとは言え、2人とも実力者同士でありお互いの強さを分かっている。

 だからこそアレイレルは、ハールがDちゃんに操られていると言っても手加減する気は無かった。Dちゃんは恐らくハールに手加減しない様に言っていると読んでいるからだ。

(あの本は何をするか分からないけど、だったら俺がやるしか無いだろう)

 ハールを止められるのは自分だけ。ならば全力で止めに掛かる。遠慮は要らない。

 これでも過去3回の大会では全てアレイレルの方がハールより上の成績である。例え「Master`s」のリーダーがサブリーダーより弱くても、ハールがリーダーなのは彼のメンバーの纏め方や引っ張り方等も考慮しての上での話なので、純粋にランクだけが全てでは無いのだ。


 そんなアレイレルはハールに向かって駆け出す。

 隣ではDちゃん相手に麗筆が何やら魔法を使い始めているが、今はそんな事に構っている暇は無い。自分が倒すべきなのはこの操られているハールだけなのだ、と集中して。

 まずはハールがアレイレルに右のハイキックで先制攻撃。

 それを屈んで回避して少し間合いを取るが、ハールはDちゃんに操られているせいだろうか普段よりも攻めて来る。


「くっ!」


 アレイレルはそのハールのキックの速さとトリッキーさに驚きを隠せない。

 一緒に戦った事はお互いにあってもここまでの動きを見た事は無い。

 何せ、仲間内ランク付けバトルテストで戦った時よりもキックのスピードが速いし手数も多いのだ。

 繰り出されるキックの嵐を必死で避け、ギリギリで身体を捻ったり後ろにバックステップで下がる事によってハールの足から逃れるアレイレル。


 しかし、その中でアレイレルはハールのキックに下段攻撃が余り無い事に気がついて、攻撃を避けた後に屈んでハールの足に腕を絡ませて一気に地面に引き倒す。

 更にそこからハールに対してマウントポジションを取り、振り解かれる前に素早く組み付いた。


「らっ、だ、だああ!」

「ぬおおおおっ!!」


 ハールは何とかアレイレルの組み付きから逃れようとするも、アレイレルも腕どころか足もハールの足に絡ませて絶対に逃がすまいと踏ん張る。

 それでもハールは何とか立ち上がって反撃に出ようとした。


 が、アレイレルに片足を掴まれたまま今度は身体を支えている方の軸足の関節を勢い任せに蹴りつけられバランスを崩す。


「ぐっ!」


 そこは何とか踏ん張ったが、体勢を立て直し切る前にアレイレルの前蹴りがハールの腹に命中して彼は後ろへと転がる。


「ぐはっ!」


 だがその転がったハールは、自分の左手に何かが当たる感触に気がついた。

 それは埠頭に無造作に置かれて転がっていた鉄パイプ。

 その鉄パイプを右手に取り、追い討ちをかけようと走り寄って来るアレイレルの足目掛けて横薙ぎで殴り付ける。


「ぐぅっ!?」


 見事に右の太ももにクリーンヒットした鉄パイプだったが、その1発だけでは致命傷にならずアレイレルもまだ戦闘続行可能。

 これでバトルは武器持ちと素手の戦いに。


 今度は鉄パイプによる攻撃も積極的に使い出すハール。

 アレイレルは次第に追い詰められて行き、横薙ぎの攻撃を避けたまでは良かった。

 しかしハールはその薙ぎ払いの勢いを利用して、アレイレルの側頭部に回し蹴りをクリーンヒットさせる。


「ぐっ!」


 倒れ込んだアレイレルは頭を押さえて悶え苦しむ。そんなアレイレルを無表情で見下ろしつつ止めを刺そうと思ったハールだったが、その鉄パイプが振り下ろされる前にアレイレルは一気にタックルをかまして起死回生の一手に出る。

 彼の鉄パイプを持つ右腕を封じる為に、自分の右腕をハールの右腕のわきの下から通して首に前から巻きつけてハールの首を締め上げつつ、彼の頭の後ろで左手を使い自分の右手首を掴む。

 こうする事でヘッドロックが決まり、鉄パイプを振り下ろそうとしたハールの右腕と首を一緒にロックする事に成功した。


「ぐが、はがぁ……っ!」


 懸命にロックから逃れようと足掻くハールだが、脳に酸素が行かないので苦しい。

 鉄パイプも振り回せないので何とか足をバタバタさせてそばにあるコンテナの方へと移動する。

 それを見たアレイレルはロックを解除してハールの右手をコンテナに押し付け、右手の手の甲を思いっ切りグーで殴りつけて鉄パイプを文字通り叩き落とす。


「がっ!」


 そして今度はハールのその左手首を右手で掴み、強烈な左アッパーを彼の顎に下から上へ振り上げた。


「げっ!」


 ハールはよろめくが、今度は彼のジャンパーを胸の前から左手で掴んで逃げられない様にしながら、空いている右手で顔や腹にパンチを叩き込むアレイレル。


「ぐっ、あがっ!」


 4発程パンチを突っ込んで、左手でジャンパーごと彼の側頭部をさっきのお返しとばかりにアレイレルは全力で殴る。


「あがっ……」


 ハールがそのパンチでよろけた所でアレイレルのローリングソバットの右足が胸に飛び込んで来て、彼は後ろのコンテナへと激しく頭から背中にかけてぶつかって崩れ落ち、倒れ込んで気絶してしまったのであった。

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