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第10話(マッハサイド)

 麗筆のダウジングが終了した。

 ハールの30セルシオが走り去って行った場所に加えて、少し先の未来まで見通せると麗筆は言う。


「まずいですね。このままだとハールは東京と言う場所まで行ってしまいますよ」

「東京に向かってるのか?」


 元々最終的な目的地は東京なので都合が良いと言えば良いのだが、事態が事態だけにやっぱり宜しくない。


「ええ。未来も少し分かりますからあのDのやろうとしている事が今の透視で大体掴めました。Dは優しいハールの事を気に入っています。ですから貴方とぼくに仕返しをしてからハールを操って、彼と一緒に誰か可愛い女の子を捜してその女の子も操るつもりらしいですね。と言ってもこれはあの本に直接聞いてみなければ確証が得られませんので、今はまだ仮定の範囲を出ませんが」

「……何かもう、俺の理解の範疇を超えているな」


 この地球では考えられない事が色々麗筆の口から出て来て、アレイレルは改めて異世界とこの地球の文明だか魔術だか文化だかの色々な違いを感じ取るしか出来なかった。


 一先ずアレイレルは麗筆と一緒に東京に向かうべくソアラを走らせる。

 その途中で、備北ハイランドでDちゃんが自分達に触手を巻き付けた事や耳鳴りを発生させた事をイライラした口調で麗筆に話した後、フーッと溜め息を吐いて高速道路に乗った。


「何だかとんでもない事になったな。備北の時からハールは何だかおかしかったし。全てはあの本が原因らしい……と言う事は、あのDちゃんとか言う本はハールをマインドコントロールしようとしていると言う事か?」


 麗筆は頷く。


「ええ。あの備北ハイランドの時からハールの様子がおかしかったと言いましたね? と言う事はその時にはもう既にDに操られていたと言って良いでしょう。ハールに触手を巻き付けたり貴方がたに耳鳴りを起こさせたのもあの本が原因ですね、ほぼ間違い無く」

「そうか……」


 自分にはファンタジーな世界観の事はさっぱり分からない。

 いや、以前ヘルヴァナールと言う異世界に行った事があるので幾らかのファンタジーの「お約束」と言うのは分からないでも無いのだが、ヘルヴァナールと麗筆の世界はまた違うのだろう。

 だからこそ、前にあのウサギの種族や妖精達が居る様なメルヘンチックな麗筆の世界に行ってそれで終わりではならなかったのが腹立たしい。まさか地球に居てまで麗筆に出会い、そしてまた面倒事に巻き込まれるなんて。

 しかし、こうして起こってしまった事はもう変えられない。麗筆なら分からないが、ただの人間である自分やハールでは「過去は変えられない」と言うのは当たり前の事なのだから。


 しかし、未来は変える事も出来る。

 勿論変えられない未来も存在するが、自分の意思1つでどうにかなる場合だってある。

 今はとにかくハールをDちゃんのマインドコントロールから抜け出させなければならない。

 そしてDちゃんの企みを阻止しなければいけない。

 この世界はDちゃんの世界じゃなくて、地球人である自分やハールの世界なのだから地球代表として自分達が地球を守らなければ。

 映画やドラマのように現実がそうそう上手く行く訳も無いのだが、上手く行けそうな可能性が少しでもあるのならその可能性にすがる必要も出て来る。今の様に。


 昼食を何処かで摂ってから東京まで向かう予定だったのだが、今の状況を考えると食事も摂れないだろう。

 3日位何も飲まず食わずでも人間は生きられると言うのは良く知られている事だが、思考や運動等のパフォーマンスポテンシャルに関しては常態時より大きく低下するのもこれまた良く知られている。

 それでもこのまま東京まで向かうしか無い。

 何故ならあのDちゃんが何を仕出かすか分からない以上、Dちゃんにマインドコントロールされているハールを一刻も早く解放しなければ東京中が大パニックになる可能性もありえない話では無いからだ。


「くっそ……ハールがどうなるか分からないからな。おいお前、最終的な目的地も分かるんだろう?」


 麗筆は少し先の未来も透視出来るとさっき言っていたので、それが分かれば無駄に色々な場所を回らずにハールが最終的に向かう場所に真っ直ぐ向かう事が出来る。


 東京都は日本地図の中でも香川、大阪に続いて3番目の狭さとなっているのだが、それでも「地図上では」と言う話であり実際には車で回るだけでもかなり時間が掛かる。

 だからこそ、麗筆の透視能力でも何でも使えるシステムはフルに活用してハールの居場所を掴むべきだと考えるアレイレル。

 自分が所属している「Master's」のリーダーなのでまだまだ頑張って貰わなければならないのだから。


 そう考えているアレイレルの横で麗筆は地図に手をかざしていたのだが、ゆっくりと顔を上げてその行き先をアレイレルに伝える。


「……分かりましたよ、ハールの行き先」

「本当か?」

「はい。東京の臨海副都心……そこの余り人気の無い何処かに向かうみたいですね」

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