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第1話(マッハサイド)

 2017年10月6日。九州・大分県オートポリスレイクサイドコース。

 遠くアメリカとカナダからやって来て実に20年以上東京に住んでいる男2人が、こうして九州は大分県の地を踏んだ。


 天気は1日中雨が降っているあいにくの空模様の中でも、彼等2人の走行会へのエントリーはキャンセル出来なかった。


「おーいハール、空気圧変えるぞ」

「ああちょっと待って。先にブースト少し下げるから。上げすぎた」


 UZZ40ソアラとUCF30セルシオ。共に大排気量のエンジンを積むトヨタのマシンに乗って、わざわざ自走で東京から大分までやって来たこの2人。

 30セルシオのドライバーはハール・ドレンジー。カナダからやって来たテコンドーマイスターの男だが、実家が酒屋の為に彼も日本で酒屋を経営している。かなり優しい性格で知られており、そこが長所でもあり時には短所になってしまう。一時は酒屋経営と平行してプロのレース活動の世界へと飛び込んだハールだったが、それももう10年以上前の話だ。


 40ソアラの男はアレイレル・エスイトクス。9歳の時にモーターショーを見に行った時に誘拐されそうになった過去を持っているが、それでも車にはトラウマは無い。むしろ愛しか無いと言っても良い程車が好きなのだ。

 彼も一時期プロレーサーとして活動していたものの、今は外国人キャストオンリーのナイトクラブを東京で経営している。


 デトロイト出身のアメリカ人と言う、まさに車のお膝元で育った彼だがアメリカ車よりも日本車の方が好き、と言う地元民から見るとかなり反感を食らいそうな車種選択をしている。ちなみに誘拐されそうになった時にエスクリマ使いの人間に助けられ、それからその命の恩人であるエスクリマ使いの下で修行をさせて貰った事で彼もエスクリマの使い手だ。

 その他にもエスクリマだけでは養えないアクロバティックな動きを習得する為にXMA(エクストリームマーシャルアーツを習得しており、エスクリマは30年以上、XMAは20年以上、そして今はハールの弟子としてテコンドーを習得しており、テコンドー歴は10年になる。


 そんな師弟関係にある2人は同じチームのリーダーがハール、サブリーダーがアレイレルと言う関係でもあり、今日はこうして2人揃って大分まで「たまには慣れない遠方のサーキットを走ってみよう」と言う事でやって来たのだった。

 元々大排気量のNAエンジンを積んでいるこの2台だが、更なるパワーアップの為にアレイレルはスーパーチャージャー、ハールはターボを後付けしているのでセルシオのセッティングを出すのには一苦労である。

 ただでさえ滑りやすい雨の路面。大排気量の車2台。他の参加者も居るドリフトの走行会。これはクラッシュを待ち望むギャラリーもかなり多い。

 そしてそんな2人にも、雨の魔の手が襲い掛かるのであった……。


 いざ、満を持してコースイン。

 ドリフトをやる人間にとって、雨はアクシデントでは無く逆に恵まれた天候だ。

 タイヤも路面との摩擦が少ないから減らないし、エンジンも気温が低いのでオーバーヒートしにくいし、何と言っても低いスピードでタイヤが滑るのでドリフトの練習にはもってこいだ。

 なのでハールもアレイレルも最初は慣れなく小さいコースに四苦八苦だったが、周回数を重ねるに連れてなかなか上手く走れる様になって来た。

 重い車はかなり向きを変え難いのだが、しっかり荷重移動さえしてやれば何とか向きを変えられる。

 だからしっかりブレーキ、そしてターンイン。急ブレーキに急クラッチ急サイドブレーキは禁物。これが雨の走りの鉄則だ。

 それを頭に入れて走っていた2人だが、他の参加者が居ると言う事はどうしても避けられないクラッシュもある。


 なので2人はツインドリフトを繰り広げたりもしていたのだが、午後の走行ヒートの7周目。

 先にメインストレートを抜けて1コーナーに進入したアレイレルの前で、その前を走っていた他の参加者の180SXがスピン!


「うおお……っと、っと!?」


 そのまま止まってくれるのかと思いきや、何と180SXはアクセルを踏んで体勢を立て直そうとしている!

 このままじゃ止まりきれないと思ったアレイレルは自分もサイドブレーキを引いてソアラをスピンさせる……筈が、後ろからはビタビタに接近していたハールが!!


「え、あ、ちょ、まっ……!?」


 このままでは突っ込んでしまう、避けられない!!

 ハールは目をつぶり、やって来る衝撃に備えた。

 そして先にスピンしたアレイレルもアレイレルで、目の前に迫るハールのセルシオを見ながら後ろで走り去って行った180SXの事を恨みながら身体に力を込めて目をつぶった。


(……shit!!)


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