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第11話(マッハサイド)

 そう言えば……と記憶を手繰り寄せるハールとアレイレル。


「俺達、確か九州に居たよな?」

「ああ。大分県のオートポリスレイクサイドコースの走行会に参加していた筈だけど、確かあの時は目の前を走っていた180SXのスピンをアレイレルが避けようとしていたのが見えた。だけど……」

「そこにハールが止まりきれずに突っ込んで来たんだったか、確か」


 そうだ、自分達は九州のオートポリスサーキットにいたのだ。お互いの愛車であるUCF30セルシオと、UZZ40ソアラで雨の中のドリフトを楽しんでいた筈なのに。

 クラッシュを回避しようとして、気が付いたら何故かあの秘密の花園の様な場所に居た。


 本当にそれだけだったのに。


 でも、それしか記憶が無いと言うよりも他に言い様が無いのでこの世界のテクノロジーになるべく置き換えてハールとアレイレルは説明を始める。


「えーっと僕達はその……競技会の練習に参加してたんだよ。集団でやったり、1人でやったりする様な。その競技会って言うのは結構危険なものでね……。だから安全対策でも色々騒がれているんだけど対策としてはまだまだだと言わざるを得ないかな。まぁ、それは一旦置いといて僕達はその競技会に出る為の練習会に参加していたのがここに来る前の記憶だよ」


 しかし、さっきまで空中に浮いていた魔法使いの男はいまいち良く分かっていない顔つきである。


 これでは地球に帰して貰えない可能性がどんどんアップしてきた。


(まずい……このままじゃ僕達、死ぬまでこの世界で生きていかなきゃならないかも知れないな。それだけはやっぱり嫌だ。いや……メルヘンチックな世界も完全に嫌いって訳でも無いんだけど、でもやっぱりこう言う世界で僕達今まで生きて居ないからなぁ!?)


 ハールが頭の中でパニックを起こしているその横で、アレイレルがハールに変わって説明を続ける。


「つまり俺達は、その練習会に参加している中でアクシデントに遭いそうになっていたんだよ。俺達はその競技に参加してもうかれこれ20年以上になるんだけど、それでもやっぱりそう言うアクシデントって言うのは発生する。そもそもその練習会って俺達だけでやるんじゃなくて、他にも参加する奴が居て一緒のフィールドの上でやってるんだ。だから俺達に原因が無くても、他の奴が原因で大怪我をしたり使っている道具が壊れたりする事なんて日常茶飯事だ」


 そこで一拍置き、息継ぎをして少し考えてから再びアレイレルは説明する。


「その競技会って言うのも色々ジャンルがあってな。単純に速さを競う一般的なものもあれば、何処までスピードが出るのかを測定し合う競技もある。集団で追いかけっこをして誰が1番になるのかを決めたりするのもあるし、直線でかけっこをしてどっちが速いかを決めるシンプルなものもな。……で、俺達がやっているのはテクニックの美しさを競うんだ。道具を使って、その道具を人間が操って操り方の美しさで順位を決める競技なんだが、実を言うとこれは俺達がやっている競技の中で1番危ないと言われている競技かも知れない」


 そこまで説明をすれば、何となくこの魔法使いも理解はしてくれた様だ。


「つまり貴方達はその危険な競技の練習をしていて、何か危機的状況に巻き込まれたと言う事ですか?」

「ああ、そうだ」

「となれば直前の記憶も先程の説明の中に含まれていると言う事で宜しいですか?」

「そうなるね。僕達はその競技会に参加していて、そして2人揃ってアクシデントに巻き込まれそうになった。車って言う乗り物がこっちの世界にあるんだけど、それを使った競技なんだよ。鉄の塊……そうだな、君の体重ならそれこそ20人分位になるのかな? あ、でも僕達の車はかなり重いから30人分……場合によっては35人分くらいになるのかも。とにかくそれ位に重い鉄の塊を、この手と足とそれから動体視力と目と耳で操るんだよ。だから少しでも操作をミスしてしまうと、一瞬で何処にすっ飛んでいくのか分からないのがこの車って言う乗り物の恐ろしさなんだ。まして、僕達のやっているのはその車を右に左に振り回してその美しさを競う競技の話だからね」


 アレイレルもそのハールの長い説明に同意して、補足情報の様に続ける。


「その競技は俺達だけじゃなくて、他にも沢山練習に参加している人間が居るんだ。一緒のコースで一緒に走って、そして不安定な動きをわざと車にさせる。それがこの競技の怖さであり難しさで足、そして面白さなんだ。だけど不安定になった上でそれをコントロールしなきゃいけないから、コントロール出来なかったらあっと言う間に車ごと人間もクラッシュさ。それで、俺達は前を走っていた別の車のアクシデントに巻き込まれて……と言ってもそのアクシデントは日常茶飯事なんだけどな。で、まず俺がそのアクシデントを回避しようとした所に後ろから止まりきれずにこのハールが突っ込んで来て、思わず目をつぶって気が付いてみたらあの花畑に居た。これが俺達がここに来る前の記憶の全てだ」

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