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99.99%の凡人枠から  作者: 草臥☆白処
1/8

ファンタジー物語の開幕は酒屋にて①

[注意]

★誤字・脱字はご愛嬌。

★コメントは何時でもお待ちしております。

★応援とか、別に、欲しくないこともない。いや、欲しい。

★誹謗中傷等の書き込みはご遠慮ください。


☆序盤はともかく、中盤(まだ掲載していない)からはシリアス+激戦が続くので、読みごたえはあるかと。まぁ、ゆっくりしていってね。

 豪快な赤髭店主が、気分がいいのか「祝杯だ!」と、気の向くままに運ばれてくる肉の山に、二人はかつてない豪勢ごうせいを堪能していた。


 だが、仮にも女性客のテーブルなのだということにいい加減気付いて欲しいと、マケルル・ベルモットは口をヘの字に曲げる。

 美味いことは認めるし、おだてたことも確かだ。だが、ここの店主は限度をしらない。

(うぅ……げ、限界かも……)

 それでも皿は次々運ばれてくる。ウエイトレスが頼んでもいない新しい肉料理をテーブルに追加するたびに、ろくな死に方はさせないからな、となかなか陰湿な呪詛を念じていた。


 相席者もげんなりとした面持ちで肉と対峙たいじしている。突き刺したフォークは止まっていた。

 アル・キャスタリアの眼からは光が消えていた。

「……アルさん、ギブアップなら早いですよ。まだ、ほら。こんなに残っているじゃないっすか」

 そっと、傍にある肉の皿をアルに寄せるマケルル。

「……君は、これだけの量を私たちだけで消費しきれると本気で思っているのかね」

 仕返しとばかりに、肉の皿を束にして送り返す。先よりちょっとかさ増しする辺り、底意地の悪さと、浅さがうかがえる瞬間であった。

「じゃあ、残す?……ここの店主、怒ると思うけどなぁ」

「……ルルの昇進祝いなのだから、ルルが一人で怒られるべきだ。南無サン、あっちの世でも元気でやれよ」

 アルは見捨てる気満々であった。ルルとはマケルルの愛称である。マケルルと親しい仲の人間は、彼女をそう呼んだ。

「そんな、謙遜けんそんなさらないでくださいよ、アルさん。私とアンタの仲だ。金版昇格だって、アルさんが居なけりゃ到達できなかった偉業。ほら、もう、ぜんぶ食べちゃってください」

「殺す気かね?……この量を一人でだと、もう気力とかは度外視しても物理的に無理だろう。キープは出来ないのかね?ワインみたいに」

「アル、ワイン飲むの?」

たしなまないな。味の付いた水に落とす金はない」

 洒落た言い回しをしているものの、単に下戸なだけである。酒の美味さがわかるのは大人になってからだとあおられて以来、飲めますが?的なポジションを取り続けていた。なお、彼女は現在19歳である。マケルルは16歳。

 よくよく考えてみると、肉料理がワインみたいにキープできるもののはずもなく、泣く泣く肉の欠片を頬張った。美味かったはずの一口目は何処へやら。今は親の仇のように憎いまであった。



 この世には冒険者と呼ばれる職がある。

 建前上はこの世に跋扈ばっこする魔物から市民を救う職、ではあるのだが、実質は何でもござれの何でも屋としての気風が主流だ。魔物退治はもちろん、探索、調査、護衛とその裾野すそのは広い。

 冒険者は自称する職ではない。冒険者ギルドに登録した者に配られる『鉄版てつばん』が彼らの社会的地位を表していた。門は広く、金を積めば最低ランクの『銅版』は難なく手に入れられる。

 色があるのだ。順に、銅、銀、金である。

 銅版は、ギルドに登録後、初めに受け取る鉄版てつばんである。入手するのが容易な分、初年度を除き税が課せられるため、持て余す事例はあまりない。

 冒険者全体の約八割は銅版冒険者である。冒険者の特権としてギルドからのクエスト受注をすることができ、それが主な収入源となっていた。

 銀板は、年に一度、ギルドから試験が設けられるのだ。その合格者のみが、銀板を入手できる。

 全体の約二割である。銀板からは銅版で払っていた税が免除されるため、こぞって銅版は試験を受けるが、倍率は三桁と笑うしかない数字であり、その過酷さが伺えた。

 そして金版。王によって選定された者のみが授与される栄誉。金版だけは冒険者に限らず、騎士や傭兵からも選ばれる。ミッション等、義務が生じる階級の反面、国から多大な給与を得られるそれは、国家公務員の扱いと近似していた。

 現在、金版の数は現在22人。

 つい昨日、《《マケルルもその名簿に名を連ねる者の一人》》として数えられるようになったばかりである。



 とはいえ、人間をやめられるわけではない。辛いものは辛い。時間を重ねるごとに、ナイフの通りが悪くなった。

「……いっそ、魔法で、ドカンと」

 ぼそりと聞こえたアルの独り言。マケルルは聞こえないふりをした。ここでアルがひと悶着もんちゃく起こせば、その間に自分が逃げられる。もうこれは必要な犠牲だと、マケルルは目を閉じた。

「……あ、でも目撃者が……いっそ、皆殺し」

「コラ。それはダメでしょうが」

 ついツッコんでしまった。

 アル・キャスタリアもまた、《《金版の一人である》》。マケルルと揃って冒険者であり、彼女は魔法使いだ。国一番といっても差し支えない技量の持ち主ではあるが、性格に難があり、たまにこうして制御が利かずに暴走する。

 それを知るマケルルは口走っていることがあながち冗談ではないことをさとった。

「止めるな。これは戦争だ」

「酒場で癇癪かんしゃくを起して暴れまわった挙句、戦争起こしちゃう金版冒険者なんて恥でしかないから。しかも素面シラフで。笑い話を通り越して、怪奇の類に発展するわ」

 後の王都クラメス七不思議の正体が私の相棒とかイヤすぎる。酒場でね、戦争起こすっつって暴れまわった女がいたんですよ。そいつ、冒険者でね。でもね、その女、酒、入ってなかったんですよ……。きゃー。

 叫びたいのはマケルルであった。

まず、第一歩、です。

ストックは沢山用意していますので、見せられる代物に推敲次第、ばんばん公開予定です。

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