第18話 褒めたくて
私は休憩を終えて、仕事を再開していた。
そんな中、執務室の扉が再度叩かれる。
「はい」
「失礼します」
「あ、リンドラ様……」
戸を開けて入ってきたのは、リンドラ様だった。
恐らく、雪かきは終わったのだろう。いつも通りの服装に戻っている。
「雪かきは、終わったのですか?」
「ええ、なんとか終わりました。少々、時間がかかり過ぎてしまいましたが……」
私が聞いてみると、そのような答えが返ってきた。
確かに、結構時間が経っている。かなりすごい量の雪だったのだろうか。
「そんなにすごい量の雪だったのですか?」
「あ、いえ、雪かきの他に見回りもしていましたから、少し時間がかかってしまったのです」
「見回り?」
私の質問に、リンドラ様はそのように答えてくれた。
しかし、その発言の中に気になることがあった。見回りとは、なんなのだろう。そこが、少し気になったのだ。
「どこかに行っていたのですか?」
「ええ、周辺の住人の様子を見に行っていたのです。何かあったら、大変ですから……」
「そうだったのですね……」
どうやら、リンドラ様は周辺住人の様子を見に行っていたらしい。
それなら、これ程までに時間がかかっていたのもわかる。周辺を回っていれば、かなり時間はかかるだろう。
むしろ、午前中までに帰って来られたことがすごいのではないだろうか。
「リンドラ様は、住人にも優しいのですね」
「いえ、領主として当然のことをしているまでです」
「それができる人は、中々いません。だから、リンドラ様はすごいのです」
リンドラ様は謙遜するが、そんなことはない。
住人を気にかけるのは、領主として当然のことだ。しかし、それができる人は少ない。
自ら足を運び、住人を気にかけるリンドラ様はすごいのである。
「そんなに褒めても、何も出ませんよ」
「何も出なくても、褒めたいのです。リンドラ様は素晴らしい人ですから、そうしたいのです」
よくわからないが、私は無性にリンドラ様のことを褒めたかった。
私がリンドラ様のことを好きだから、このように思うのだろうか。
「それで、住人達の様子はどうだったのですか?」
「皆慣れているからか、特に問題はありませんでした」
「そうですか。それは、何よりですね」
「ええ」
どうやら、周辺の住人達も特に問題はなかったようだ。
それなら、安心できる。何もなかったのなら、それが一番だ。
「そういえば、サフィナ様のことを聞かれましたよ」
「え?」
「私の婚約者がどのような人なのか、住人達も知りたいみたいなのです。今度、私と一緒に見回ってもらえますか?」
「ええ、もちろんです」
リンドラ様の提案に、私は力強く頷く。
すっかり忘れていたが、住人達への面通しは重要なことだ。これを行わないなど、あり得ないことだろう。




