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辺境の異剣使い  作者: 無依
学園編
8/13

第8話

 

 翌日の朝。

 学園に入ると昇降口前にクラス分けの紙が貼りだされていた。


 クラス分けはキング、クイーン、ビショップ、ナイトの4クラス30人、計120人が一学年のようだ。上から順に実力の優劣が分かれている。

 俺の名前を探すとクイーンクラスとあった。念の為、王女様の名前を探すと、良かったキングクラスのようだ。王女様の機嫌を伺っての学園生活なんてごめんだ。


 平民と貴族は実力でわけられるので基本一緒のクラスになるが、相当なことがない限りキングクラスにはならない。よって平民が混じるのはクイーン、つまり俺のクラスからになる。クラス表の下の方に数人の平民が確認できる。ビショップやナイトになるともっと多くなる。


 実力あるものなら来るもの拒まずの精神で、魔法や剣など一定の才能を持ったものなら平民も入学することができる。テレサもこれで入学した。


 クラスに着くともうある程度集まってるようだった。そしてもうグループ作りが始まっている。たとえ貴族だとしてもこれは前世と同じか。平民は平民で自分に目に付けられないように静かにしている。何しろクイーンは数も少ない。

 俺も俺で自分から話しかけられないタイプなので、静かに気配を消して後ろのほうにある自分の席にそっと着いて教師が来るまで待っていよう。

 そんな決心をしかけたときに、こんな俺にも救いの手が入る。


「レーベアス君だよね?」


 隣の席の人から話しかけられた。金髪のゆるりふわりのロングウェーブのおっとりとした彼女。名前は、確か...


「あ、私はエミル・イレイナル。ほら、同じ辺境伯家どうし仲良くできたらなって。」


 そう、辺境伯家はレーベアス家一つじゃない。王国を中心に東西南北それぞれに辺境伯家がある。東がアストール家、西がレーベアス家、南がサウソレア家、北がイレイナル家といった感じだ。つまりエミルはイレイナル家の令嬢である。ほかのアストール家とサウソレア家はこの学年にはおらず、上級学年にそれぞれ一人ずついるようだ。来る前に辺境伯家と王族の名前だけは覚えておいた。


「こちらとしても願ってもないことだよ。よろしく、イレイナル嬢」

「よろしくね。でも私のことは名前で呼んでくれると嬉しいな。私もリオン君て呼ぶからさ」

「わかった。エミル...でいいの?」

「うんっ」


 その笑顔が眩しい。エミルが手を差し出してくるので俺もそれに応えて友好の握手を交わす。入学早々から友人関係を築けたのはなかなか良い出だしと言えるのではなかろうか。

 エミルと適当な世間話をしつつ時間を消費していると担任が来た。

 簡単に学校の概要を説明する。


 1つ、完全な実力制度ということ。昨日の試験の様に結果を出せば平民でもキングクラスへと昇格できる。前例は少ないけど。


 1つ、この学園内では権力行使の禁止。いくら身分が高くても、下級貴族や平民に家の権力を使ってはいけないとの事。学園はあくまで平等である。


 1つ、学園生の義務(ノブレスオブリージュ)を果たすこと。力ある者は力なき者のために力を発揮すること。これは貴族に限らず、学園の生徒全体のことを言う。困っている人がいるなら助けろということだ。生徒同士でも、一般の国民でも。


 そんなことが説明され、早速授業に移る。


 1学年は魔法、剣はどちらも学ぶ。一般教養みたいなものだろう。学年が上がるな連れて、専門的にも学んでいける。


 1時間目は座学で魔法理論だ。もう家で勉強していたが、復習として、というか初日の授業から寝るわけにはいかない。


 この世界には至る所に魔力が存在する。濃度は場所によってまちまちだが空気中にもある。そして生きとし生けるもの全てが宿しているものだ。

 更に貴族は平民よりも多くの魔力を宿す。平民に魔力を持った者が全く生まれないわけでなく、ただそういったものが少ないのだ。

 貴族と平民との関係に生まれた子供も少なからずいる。けれど平民同士の子で魔力持ちも確かに存在する、例えばテレサ、両親はどちらもうちで使用人をしている。

 だから貴族の子が魔力を多く持つ傾向にある、としか言えないのが現状だ。


 この学年での貴族と平民の割合はおおよそ4:1ぐらいだろう。


 魔力を多く持つと、は一般の人たちと比べた時の話で、それぞれの魔力量は人によって何倍、何十倍の差も生まれたりする。

 例えば王族の血統は魔力量がほか貴族たちともと比べ物にならない。昨日のシャリア様はこの国でも一二を争うぐらいの魔力量を持っていると言っても過言ではない。使いこなせるかはその人次第だが。



 その魔力を媒体にして、どのような効果を生むか創造し、具現化する。これがこの世界の魔法だ。そのイメージを簡単にすべく詠唱、威力や永続付与のために魔法陣を使ったりもする。

 前提としていくら魔力があっても具体化出来なければ弱いものになる。逆もまた然り。


 魔力が媒体とは、つまり魔力が火、水、氷、雷、風、土、光、闇といった属性の色に色付く。俺の場合は雷と水なので魔力が黄色や青といった感じに。

 そしてこれに意味を与え、想像し、創造することで形ある魔法として完成されるというわけだ。この2段階で魔法は出来ている。さらに言えば自分が使える属性は決まっており、その色にしか魔力は色付かない。


 これは仕組み、理論を解説したらこうなっているのであって、実際魔法を使う時はその属性の色の魔力が一瞬で現象化しノータイムで魔法として現れるので細かく考える必要はない。もっと大事なのはその威力を決める、魔力量や魔力の使い方なんだから。魔法には基本的に難易度や威力によって初級、中級、上級などの階級分けがされているが、同じ階級でも魔力の使い方次第で威力は変わってくるのだ。




 まあ、そんなこんなで授業を受けていたらお昼時だ。


「リオン君、お昼一緒にどうかな?」


 授業が終わって早速声をかけてくれたエミル。ありがたく、ご相伴(しょうばん)に預かろう。


「いいよ、ほかに食べる相手もいないしね。」

「ちょっと距離感じちゃうんだよね。」

「そうそう、俺の場合中央に来る機会もなかったし。」


 彼女の性格を考えて、馴染めるようになるのは時間の問題だ。俺もそうだったように自然に振舞える笑顔にきっとみんなが惹かれていくだろう。


 談笑をしつつ、目的の食堂へと向かう。

 学園には食堂があって生徒ならだれでも無料で料理を提供している。そのため平民にも優しい。いいとこの貴族とかなら自分の料理人に作らせていることもあるだろうけど。


 食堂へ着くとおいしそうな匂いが鼻孔を刺激する。食堂は結構多くの人が集まっていた。もちろん貴族だけだが。平民は料理だけ受け取って違うところで食べているのだろう、あるいは弁当とか。

 料理人から注文した食事をを受け取り、どこか二人が座れる場所がないか探していると...。


「ん?」

「?」


 じー。


 どこからか視線を感じる。その在りかを探す...と会いたくなかったお人と目が合う。何も見てません、一瞬で視線を逸らす。


「王女様!私と一緒にランチはどうですか?」

「シャリア様、私とも!」

「え...ええ、そうね。」


 あの人ははお忙しいのだ。こんな田舎者を気にかけてる暇はありゃしない。次々とほかの貴族たちに巻き込まれていく。だんだんと王女様が遠くなっていく。ちらっ、ちらってこっちを振り向かないで?

 一連の様子を見ていたエミルが疑問に思わないはずもなく。


「王女様だよね?リオン君何か目を付けられるようなことでもしたの?」

「んー、とりあえず座ろうか」


 立ったまま話すものでもないし、何しろ料理が冷めるし、お腹もすいた。食べながら話すとしよう。頼んだパスタを一口パクリ。うん、美味いには美味いが普通。贔屓目かもしれないがテレサのほうが美味しいと思う。


「えっ、入学試験で王女様と手合わせしたの!?」

「まあね。」

「もしかしてリオン君...めちゃくちゃ強いとか?」

「ざんねんだけどそんなことないよ。王女様には負けてるし」

「本当に?」

「う、うん...」


 彼女、変なところで鋭い。こんなおっとりしてるのに。不思議に思って見つめていると、笑みを返された。そういうとこだぞ。実以て端正な顔立ちをしている。これで靡かない男はいないだろう。


 こうして友人と楽しく食事を取っているとあっという間に昼が過ぎていった。



魔法って難しい...

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