紙切れ物語 ー猫のきもちー
紙切れ物語第2弾。
意味が無いようで意味のある話です。
読んでみて損は無いかもしれません。
もう、誰とも会うことはないのだろう。
私はひっそりと、ここで息を引き取る。
廃墟と化した街に取り残された私は、淡々とそう思った。
埃っぽいにおいのする半壊した家の片隅に、私は身を丸くして空を眺める。
私はこの部屋から見る空の景色が好きだった。
下の階から聞こえてくる騒がしく笑い合う子供の声、それを時たま注意する大人の声。あの時はうるさいと思ってたけど、今ではそれも楽しかった思い出になっている。
目を閉じれば、あの平凡でいて楽しかった光景が映し出される。
これでも私は、みんなからモテていた。綺麗だと言われ、雑誌にも何度か採用された事もある。
「みゃぁあ.......」
気まぐれな猫も、1匹で鳴けば虚しくなるものなのだ。
つまり、今私は酷く寂しい。
こんなことになると知っていたなら、あいつはどうしていただろう。
全てに目を瞑って諦めただろうか?
それでも皆を連れて立ち上がっただろうか?
いや、きっと1人で立ち向かったはずだ。
誰も傷つけないように、それでも未来を変えるために。
まぁ、私は所詮猫だから見てることしか出来なかったわけだけど。
どうせなら、私も一緒に消えてしまいたかった。
「..........................................」
あと、2年は生きてしまうだろう。
餌となるものがある場所も、飲み場所も知ってる。そこが尽きない限りは私は生きる。
生きることに希望を持っていなくても、餓死なんていう苦しいのはもっとゴメンだ。ここは、相変わらず気分屋でわがままのままなのは、誇らしいことでもある。なんてね。
生きてしまったのなら、燃え尽きるまで抗うしかないのだ。
さて、もう少しだけ眠りにつこうか。
今夜も1人私は眠る。この部屋で。
紙切れ物語は、湯賀レイとして活動していた時に書いたものです。
超編小説に絡んでくることなので、これで興味持った方は長編の方も、時間があれば読んでみてください。