3章エピローグ
3章エピローグですよ。
大慌てでオロオロしているカンタ君と一緒に森の麓の少し背の高いアルラウネさんが生えている場所まで走って来た。
どうやらキツネ夫人が産気づいたようだ。
柔らかいアルラウネさんが身体を折り畳んでキツネ夫人の負担にならないように配慮してくれてる。
俺がスキルで聖域全体にガンモ呼び出ししたり、俺やカンタ君が大慌てで走ったりしたせいで、近くに住んでる全ての生き物達が集まってきた。
もちろんニカラの鬼さん達もだ。
お祭りの準備もほったらかして。
「なあ!ニノにい!どうなっちゃう?どうなっちゃうんだよ?血が出てるぞ大丈夫なのか?オイラどうすりゃいい?なあ!ニノにい!」
「カンタ君、野生を舐めたらダメだよ。何もしなくていい、何かあった時はガンモが居る。だからカンタ君は落ち着きなさい。こんな時にどうなっても対応出来るように、普段から平常心を養わないとな。」
慌てて掴みかかってくるカンタ君の頭をグリグリしながら、俺も心の中で焦ってるけど、我慢して目の前の出産を見届ける……
角うなぎやハルちゃん、いみしかトンビも見に来てる。スッポンですら首を伸ばして見に来てる。
草原や森に住むアルラウネさんやエントさん、動物達……虫も微生物も……土中の生き物達も……
魚さんや水棲さん達も来たかっただろうな。
「新しい我らが主よ。久々に、この聖域に新たな生命が産まれますなあ。かれこれ500年ぶりでありましょうか。」
最長老が500年ぶりだと教えてくれた。
「一大イベントですね、そんなに時間が空いてたのなら。」
そう俺が最長老に答えると。
「緑鬼達が仙鬼になり、聖域の一員になって間もないと言うのに祭りまで出来るようになって。更にこうやって聖域の生き物に宿った新しい生命も産まれる、素晴らしい出来事が続くのは良い事です。」
角うなぎが良い事言ってくれる。スッポンも頷いている。
キツネ夫人がいきみ出す。横にキツネ旦那さんが着いていて、頑張れ!頑張れ!と言って励ましている。
でも、いきんだ瞬間にヌルッと……
ヌルッと出てきた。なんの抵抗もなく……
まあそうだよな、尻尾含めて体調2mくらいあるキツネ夫人から子供の手のひらより小さいくらいの赤ちゃんが出てきた所で……
そりゃ引っかかったりするわけないよな。
それでも、生命が誕生する瞬間とは良いもので、
周りを囲んでいる全ての者達が感嘆の声を上げている。
「うわ、やった!ゴン!ゴン!オイラだよカンだよ!」
「やめなさいカンタ君、まだ聞こえても見えてもいないから。それに名前を付けるのはカンタ君じゃないでしょ?」
飛び掛かろうとしたカンタ君を、グリグリしたまんまの手に力を入れて鷲掴みで無理矢理止めて、キツネ夫人にガンモとハルちゃんにお願いして癒し魔法を発動して貰っといた。使う程の事もなかったみたいだけど神獣と聖獣の合体癒し魔法なんて。
「新しい主様、我々夫婦の子として宿った時に浮かんで来たんですよ。この子の名前はゴンだって。」
「そちらの螻蛄のカン様に名付けて頂けたら、この子も喜びそうなので私達夫婦からもお願いしてよろしいでしょうか?」
そう言われてカンタ君がテンションマックスに跳ね上がって鷲掴みしてた手を振り切って、小さな体に細い9本の尻尾の全身金髪の産まれたばかりのキツネの赤ちゃんの前に行き。
「お前の名前はゴン!オイラの大親友のゴン!」
そう言った瞬間、カンタ君から神気がごっそり抜けて、赤ちゃんキツネに宿って行った。
鑑定で確認したら、名前がゴンになっていた。
もちろんカンタ君は白目をむいてぶっ倒れた。
倒れ込む前に俺が支えて、小脇に抱えておいた。
「さあ皆さん、今日はニカラの皆さんのお祭りですよ。神降ろしの大祭って言うんでしたっけ?こんな日に新しい生命が産まれたのもちょうど良かったじゃないですか。食べ物とか飲み物とかあんまりないですけど、騒ぎましょうよ。もちろん赤ちゃんをビックリさせない程度にね。」
そう言って祭りでもやろうかと言う雰囲気がここに居る全員に伝わる。
祭りをする場所を砂浜に変更して水棲生物さん達もお祭りに参加して貰おう。
聖域は今日も平和です。
この回を掲載してから2日ほどお休みを挟んで、閑話を書きますね。
次回、閑話 鬼の目に涙・エピソード1 人の手に刃
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