もどき
自転車もどき作ってます足早に。
皆で饂飩を啜った昼食も終わったので、カンタ君を後片付けに残して1度家に帰る。もちろんガンモの昼ご飯用カリカリを補充する為だ。
と言うかハルちゃんの分も用意してある。食べてくれてたら嬉しいよ。
ついでに墨壺と墨差しと板と曲尺を持って鬼さん達の集落に向かう。何するか?って自転車もどきの設計図を書くんだよ、皆と相談しながらな。
戻ってきたら、後片付けも殆ど終わっていた。さらに煮詰めた海水の結晶を砕いた各種調味料も冷めて瓶に移すところだった。手伝いたかった。
自転車もどきを、どんな形にするかを鬼さん達と相談してると、荷駄を付けて欲しいと言われ、実用的な物も作ろうとなった。
とりあえず子供達用の物から設計図を書いていく。
アオさんとチャさん以外の男の鬼さん達は、木工なんて出来て当たり前らしかったので、鬼さんサイズの大工道具を用意するのも金銭的問題で無理だから、スキルで縮んで貰って、俺の大工道具を貸し出す。
どうだ!日本が木工のために長年培って来た大工道具は、凄いだろ!
鑿や鉋や鋸の切れ味に驚き、皮剥き、釿の使い方に関心して、素材の鉄に驚いて。日本人として生きた時間が誇らしかった。
アオさんとチャさん以外って、なんでだと思う?
実は、アオさんもチャさんも無茶苦茶不器用なんだよ、木工なんてある程度出来て当たり前、石組みなんてある程度出来て当たり前、農業なんてある程度出来て当たり前のニカラの鬼さん達の中で、2人だけやたらぶきっちょなんだな。因みにチャさんも戦闘と歌以外がぶきっちょだったりする。
背の高さと言い、体格と言い、似てるんだなアオさんとチャさんって。
まあチャさんの血が混じってるんだから当たり前かな。
チャさんの方は、老人が邪魔をするもんじゃ無いと言って他の2人の老人を連れて女衆と一緒に子供達の事を見てくれてる。
アオさんの方は、ひたすら臼を回して1人だけ小麦粉を引いている。
なんか饂飩を作るのが琴線に触れたようだ。
黙々と回している。少しだけ話そうかなアオさんと。
「アオさん、饂飩作るの楽しかったですか?」
気になって聞いてみた。
そしたら、声を掛けられてやっと俺の存在に気付いたアオさんが。
「初めてだった。皆と同じように、いや……
皆が上手いと褒めてくれた。初めてだった。」
嬉しそうにしみじみと言葉にしている。
「どうせなら料理人にでもなりません?スキル生えてますよ?」
そうなんだよ、アオさんって料理スキル持ちなんだ。表示が灰色になってたから発動してなかったみたいだけど、饂飩を練ってる途中で発動したんだよ、料理人スキル上級が。鑑定で確認済みさ。カンタ君も見てくれたし、間違い無い。
「俺が料理人?なれるものなのか?スキルが生えてる?そうか、俺でも誰かの為に何か出来そうなのか。」
「いやいや、これまでも十分やってたでしょ。それは神である私もカンタ君も認めていますよ。」
ちゃんと見たよ、ニカラの皆さんがどうやってここまで辿り着いたのか。アカシックレコードを参照してさ。ニカラの皆さんだけじゃなくて襲ってきた人間の方の視点からもね。
「俺は嫌われ者だったはずなんだが……」
「本当に嫌われてたら、ここに居ませんよ。皆と一緒にここに居る、それが貴方が嫌われてない証拠ですよ。」
黙々と臼を回すアオさんと、他の皆さんが自転車もどき構想に集中している中で二人で話してみた。
アオさんは、聖域に来た時よりずっと顔付きが柔らかくなった事に気付いて無いみたいだ。
「そうです。自転車もどき作り終わったら、臼を回すのを水車や風車を作って自動で出来るようにしませんか?そして空いた時間で料理のレシピでも教えますよ。」
そう言った俺にアオさんが驚いたような顔をして。
「良いのですか?神の国のレシピなのでしょう?今日作った饂飩と言う物も、質素に見えて贅沢な食べ物でしたが……」
「神の国のレシピなんかじゃないですよ、人の国のレシピです。だから教えても大丈夫ですよ。」
お願いしますと言ったアオさんの顔が、凄く良い笑顔だった。
閑話を書くので、アオさんとの会話シーンを書かないとと思いまして、自転車もどきを作るのを短くしました。次が3章本編ラストです。
3章エピローグの後に閑話を書きますね。
ここまで読んでくれてありがとうございます。




