アレが世話になるな
聖域に帰って来ましたよ。
お魚〇ンター近くの公衆トイレから実家近くのホームセンターのトイレに転移して、ガンモ用品をしこたま購入した後に。マルトさんをお社まで送ってから聖域に戻って来た。
出発した時間の直後に戻って来たので、まだ皆は寝てる時間だ。
外に出て空を見上げると、新しくなった青い月が他の月と共に明るく輝いてた。
こんな時は、甘い珈琲が良いなと思った。お湯を沸かす、いつもより少し砂糖多めの珈琲にしよう。
マルトさんが言っていた、命が云々……
やはり神の視点から見ると、食べないで生きていけるなら、わざわざ生命を奪わないで食欲を棄てた方が良いのかと考えてしまう。
「あれ?ニノにい、お帰り。早かったな、楽しんできた?」
答えの出ない考え事をしながら、お湯が沸くのを待っていたら、雑草ハウスからカンタ君が声を掛けてくれた。
「ただいまカンタ君、もちろん楽しんできたよ。」
そう答えたら、カンタ君が少し頭を傾けて。
「なんか悩んでる感じがしたけど、楽しかったならいいや。もう一度寝るよ、おやすみなさい。」
おやすみって答えて雑草ハウスに戻って行くカンタ君を見ながら沸いたお湯をカップ(木製)に注ぐ、もちろん珈琲はインスタントだ。手軽だろ?
草むらの中にポツンと1軒、木造平屋の収納まで入れて8畳しかない我が家が月の光に照らされて、ぼんやり輝いていた。
ぼ〜っとしながら独りで月を眺めていたら、ガンモが夜の草むら警備から帰ってきたようで。
「ニノ!何の匂い?美味しそうな匂いと、美味しくなさそうな匂いがする!ニノ、美味しいの?」
家の中に置いてある、買ってきたカツオのタタキのさくの匂いを嗅ぎつけてやがる……美味しくなそうなのは酒盗だな。
「あのままじゃガンモは食べられないから、朝になったらちゃんと焼いてあげるからね。もう真夜中だから寝ようか?」
そう言うと、猫扉から家の中に入って行く。
ガンモの後に続いて俺も家に入り、アバター操作でジャージに着替えてベッドに横になる。
横になって毛布を体にかけたら、ガンモが俺に乗ってきて、毛布を噛みながら俺のお腹の部分をフミフミしてきた。喉をゴロゴロ鳴らしながら。可愛い…………
悩んでるのがアホらしくなってくるくらい可愛かった。
その頃の日本でマルトさんは
「どうであったマルトうじ、粗相などなかったでござるか?」
和装イケメンがマルトさんに心配そうに聞いている。
「粗相とか全くでしたね。天満天神様が監視に来ておられたので、ほぼ全ての九州の神々が遠慮してくれたようです。」
なんと!天神様が!なんて和装イケメンが驚いている。
「しかし今回も、えらい物を貰ってしまいましたよ。種有り仙桃とマンドラゴラと世界樹の葉と酒盗ですよ……どうしましょう……」
「酒盗とは、マルトうじ苦手だったのでは?それ以外の3つは……なんと言えば良いか……
あれでござるな。神界大戦のきっかけになりそうとしか言えんでござるな。」
酒盗の事を心配されたが、この酒盗だったら私でも美味しいと思えましたと熱く語るマルトさん。
それを見て他の3品より酒盗が大事か?と思う和装イケメン。そんな時間を過ごしていたら……
「おい、ウサギ!久しぶりだな。アレが世話になるな。」
少年とも青年とも言えない、大人とも子供とも、男かも女かも分からない、あやふやな存在が2人の傍に来ていた。
「全ての動物神の大いなる主様!お久しぶりです。」
「あわあわあ……」
マルトさんとイケメン男子2人が土下座スタイルになりそうだったのを。
「かしこまらんで良いよ。面倒臭いだろそんなの。それでな、今回アレが置いて行った土産だけどよ。いつか必ず役に立つ時が来るから大事に残しとけよな。」
マルトさんを見ながら、あやふやな存在が声を掛ける。
「は!はいっ!仰せのままに!」
「アレが、もうしばらく迷惑掛けると思うけどよ、我慢してくれや。それとよ、お前の権能って、見る聞く癒すだったよな?」
「迷惑だなんて滅相もない。こちらも楽しませて頂いているので。それと権能は、その通りでございます。」
「そっか、それなら良かった。あとよ、コレを渡しとく、使っとけ。」
そう言って、あやふやな存在がマルトさんにビー玉のような物を渡す。受け取った直後に、何もそこになかったかのように、あやふやな存在は消えていた。
「マルトうじ!初めて会ったでござるよ!あれはエグいでござる!あれはエグいでござるよ!」
「でしょうね、我々動物神と言うか、人間以外全ての神ですからね、テューポーン様は……」
あれがテューポーン様でござるか!なんてイケメン男子が冷や汗を流しながらブツブツ言っているが。
「あの御方の本当のお姿を見たら、もっと驚くでしょうね。あんなもんじゃ無いですから。」
とマルトさんがイケメン男子に言ったのを聞いて。
「あれで義体でござるか?あんなの反則でござろう……
それでマルトうじ、何を貰ったでござるか?」
「どうやらギフトオーブのようですね……」
ドン引きした顔をしているイケメン男子がマルトさんを見ながら。
「最近になって、物の価値観と言うのが崩れてるでござる。ギフトオーブとか簡単に渡せるものではなかろうて……」
使っとけと言われたのでギフトオーブを吸収するマルトさんと、大きなため息をつく和装イケメン男子を静かに月が照らしていた。
マルトさんに融合したギフトの名前は、画竜点睛を知る、見る事に特化した最上級のギフトであった。
話は進まないですけどね。でもマルトさんが手に入れたギフトは、とても大切なフラグなんですけどね。
読んで貰えて感謝します。




