マンドラゴラ
パンツで作ればファンタジー
今現在、マルトさんの住んでるお社と言うのは、実家から2分程歩いた所にバブル期に建てられた比較的新しい物なんだけど、建てられた理由が、お金が余って仕方ないからとか、当時の人達のお金の使い方ってとんでもないって思い知らされる。
実際に建築業に携わった事があったので、この規模のお社を令和の時代に建てたら3〜4千万円くらいかかりそうなんだけど、バブル期だとその2倍〜2.5倍くらいはかかってそう。
人口約800人くらいしか住んでない所に無駄に豪華だなと感じてしまう。
そんな事を考えながら歩いていたら、ジーパンにスニーカー、オシャレな感じのジャケットにインナーにタートルネックのシャツを着てハンチング帽を被ったマルトさんが、お社の前の道路で、おはようございますって言ってくれた。
「おはようございます。今日は、よろしくお願いします。色々とご迷惑をお掛けしてます。つまらない物ですが、帰ってきた後にでもお知り合いと食べて下さい。」
そう言って、あっちの畑に生えていた曲がりくねった人参(マルトさんって兎だから好きかなと思った)と、チェシャ菜っぽい奴と、最長老の真ん中の幹に生えてる若返る実を1つ入れたダンボールを渡した。
「ちょっ!これは種のある仙桃じゃないですか!こんなもの怖くて受け取れませんて、何時もの種無しでも受け取るのが気不味いのに……
と言うかニノさん……」
なんかマルトさんが変な事を言ったから鑑定してみたんだけど……なんだこりゃ……
「まったくもう、こっちで鑑定したの初めてですか?この若返る効力の付いた仙桃とか神界の女神様達の奪い合いになりますよ、現代に神界大戦でも起こさせる気ですかね?」
知らんかった……
「それに、このマンドラゴラとか、世界樹の葉とか貰ってどうしろと?片や賢者の石作成の肝心な材料で地球では絶滅してますし、片や死んでさえいなければどんな傷も治してしまうチート薬草で、こちらも地球で絶滅してる物とか……受け取った瞬間インベントリの肥やしになりますって。」
「あちゃーですね。」
ここは、笑って誤魔化そうとしたら。
「笑って誤魔化されると思います?」
そう言って微笑むマルトさんがちょっと怖かった。
でもちゃんと受け取ってインベントリに収納してくれたのは嬉しかったりする。
「でもマルトさん、今日はオシャレな格好ですね。やはりジャージじゃ不味かったですかね?」
「だって新幹線に乗るんですよ。私みたいな土地に縛られてる土地神だと遠出するのは一大イベントなんですから。だから張り切っちゃいました。」
確かにそうだなと考えていたら、似合ってます?似合ってます?と自分の姿を気にしているマルトさんが。萌えないな……
「ちょっと現地に向かいながら着替えますね。」
そう言ってタブレット操作でアバターを変化させながら2人で交差点まで歩く。
「今回もお金を入手してからの方がよろしいですか?」
そんな事をマルトさんに聞かれたので、所持金7円の神様としてハッキリと答えた。
「ちょっと色々散財してしまって、財布の中身7円なんですよ。いちおうガンモ用貯金を1万円持ってきてるので、それを資金に使うつもりですよ。」
そう言うとマルトさんが、自動販売機の所で100円確保して行きましょう。確か先日自動販売機の前の溝の穴に100円落とした不幸な若者が居たはずなので。なんて言って自動販売機の方に歩く。
透過ですり抜けて頭を溝の中に入れたら……100円玉が4枚も落ちてた。
「400円落ちてますね。ここから100円有難くお借りしますね。」
そう、拾ったお金は後でちゃんと同じ金額を元の位置に戻さないといけないんだよ。人の国と神の国の決まり事でね。
「今回は少し入り用でしょうから、10万円ギリギリを攻めるんですよね?」
「電車の切符とレンタカー代と別にガンモの食べ物とカツオ出汁を買うだけなので3万円もあれば十分だと思うのですが?10万円必要そうですかね?」
「二人分で6万円、それに現地に到着するまで何も購入しないで大丈夫ですか?」
「あ〜確かに。プチ旅行ですもんね。確かにお土産とか必要かも……」
言われた事に超が付く程納得した。
見えないおっさん神2人が、少し小洒落た格好をして軽トラの荷台で仁王立ちして会話をしているなんて運転手さんは気付いていないんだろうな。
朝が肌寒く感じる季節の午前10時、昼の日差しはまだまだ暑い季節だった。
仙桃、マンドラゴラ、世界樹の葉……
ファンタジーでしょ?でも自宅の畑に生えていたり、知り合いの近くで少し漏れるだけで貰える物だったりするんですよね。だって惑星パンツですから。
パンツに生えたらファンタジーです。
くだらない後書きまで読んでくださった皆さん。
今日も1日疲れない程度に頑張りましょう。
読んで頂けて感謝します。




