龍と鳳
龍?鳳?
どうやらカンタ君も聖域の事に少し興味を持ってくれたようだ。なので残りの三体の聖獣について話を進めようと思う。
賢明なる読者の皆さんは覚えているはずだと思うけど、俺が初日に出会ったうなぎ……
なんか納得行かないけどアレも聖獣だったりする。そして……
「先程から聖獣の話をしていて皆さん気付いた事は有りませんか?」
俺の問いに対して、既に理解しているチャさんとパンさんの2人の老人以外の鬼さん達が考え込んでいる。カンタ君は鼻に雑草を詰めて鼻血が流れないようにしていて質問所では無いようだが耳だけこちらに向けてくれている。
ポケットティッシュくらい持って来とけば良かったなと思いながらも、鬼さん達が静かになるのを待ってみた。
「伝承で得た知識ですが、亀、龍、鳳、虎の四体だと思うのですが違うのでしょうか?」
そう答えてくれたのはアイさん、アイさんに目を向けてから、鬼さん達とカンタ君を見渡して。
「亀、鳳は合ってます。でも残りの二体のうち龍はうなぎです。皆さん既に会っていますよね?南の甘い海と聖域の南方を守護する大きな角を持ったうなぎ、すぐそこの海岸で遠目に見る事の出来るアレです……。」
ニカラの皆さんが大騒ぎしている、と言うのも甘い海を煮詰めまくって作る飴の材料の甘い海水を汲みに行く時に毎回出会っているからだ。チャさんとパンさんが、外界で出会えば命は無いぞなんて脅している。そんなわけない。
「あーっと、チャさんパンさん、お二人の認識も違いますね。基本的にあの鰻って平和主義ですもん。自分から襲い掛かる事なんて無いですよ。」
チャさんとパンさんが、昔旅をしていた頃に殺されかけたと言っているが訂正しておこうと思ったら……来ちゃった……
そう、角うなぎが!と言うのも海岸まで2kmちょいくらいの場所で話してたのが悪かった……
「来ちゃいましたね、こんな見た目ですけど優しいんですよ。」
そう言って頭上に来たうなぎを見る。
体長が約50kmある超絶長いうなぎが、体のほとんどを海に浸かりながらも先っぽだけで俺達の居る広場の俺達の上に来てしまった……なんというか上から覗き込まれている。
「おやおや、私達聖獣の話題が出ていたので気になって来てみれば懐かしい顔ぶれが。その節はどうもです。」
そう言ってチャさんとパンさんに頭を下げる聖獣・角うなぎ……どう見てもこの広場に居る全員を飲み込もうとしているようにしか見えない……
「いやあ、前回お会いした時は、この角を見ても引いてくれなくて仕方なく上半身を出しましたけどね、あれで方向転換してもらえなかったら私が直接咥えて外界の何処かの大陸に運ばないといけなかったので助かりましたよ。」
流暢に喋る人間の下半身に見える角が付いたうなぎ……ファンタジーだろ?でも凄い丁寧な紳士なんだぞ。
カンタ君なんか鼻に詰めた雑草を鼻息で吹っ飛ばして興奮してる。そのせいで鼻血が迸ってるよ。
ちなみにこの角うなぎさん、聖獣じゃないつの鰻と少し違って聖域の他の生き物と同じくエーテル素粒子(魔力っぽいやつ)を食べて生きているから、まず微生物を漉して食べる事も無い。
付いている人間の下半身を模した角もある程度自由に形を変えられるのだが、現在の形を保っているのも。
「ひっくり返った下半身が遠くから近付いて来たら、船乗りさん達皆が驚いて方向転換してくれるんですよね。」
なんて海岸で自宅の束石にする岩を選んでいる時に教えてくれた。
興奮し過ぎたカンタ君が空中を駆け上がってうなぎに触りまくって、ヌルヌルしてるー!なんて全身でヌルヌルを感じている……子供の行動力恐れ入る。
「カンタ君、降りて来て!次の聖獣の事を説明するから。」
そう言うと角うなぎが頭を地面に向けてくれて、カンタ君がローション滑り台の要領で滑り降りてくる。他の子供達も目をキラキラさせて羨ましそうに見ている。
ダメだよそんな年齢の頃からローションプレイに目覚めたら!教育に悪い!そんな物に目覚めたら、ある日突然都会に出ていって汚れちゃうんだ!だからダメだよ目覚めたら!
閑話休題
ちょうど良いタイミングでもう一体の聖獣も飛んできたから皆に紹介しておく、と言っても賢明な読者さん達は既に気付いているはず。
そうだ、いつも俺をおちょくってくる、いみしかトンビ。悔しいけど奴も聖獣の一体なんだよ。
「私も含めた皆さん既に被害に合われたと思いますが、今上空から優雅に降りて来ている皆さんが雷鳥と呼ぶアレも聖獣です。」
羽を最大に広げると2mくらいのトンビが優雅に旋回しながら陸に降りてくる。なんかムカつく!
「皆さん雷鳥と呼びますが正式な種族名は、いみしかトンビです。皆さんをおちょくるのが趣味なんですけど聖獣なんですよ。雷を操ったりしますが基本的に悪戯しかしない鳥ですね。」
チャさんとパンさんは、生態を知っていたようで警戒していたので悪戯されてないけどアオさんなんか、かなりの被害にあわれている。
「俺に乗るな!俺の角に止まるな!くあっ!くあっ!」
ほらねまたアオさんが……
カンタ君やニカラの皆が笑っているけどあれってシャレにならんのよされてる方は、と言っても本当に嫌がっていたらやらないんだけどな。
つまりアオさんは、あんまり嫌じゃ無さそうだ。
俺は工具を咥えて飛ばれたり布を咥えて飛ばれたりを本気で怒ってしまったから直接悪戯をされる事も無くなった、羽毛の手触りが良いから偶にわしゃわしゃやってやりたいんだけどな。
なんかアオさんって来た時のイメージがどんどん崩れて行くよな……
いつも眉間にシワを寄せていたけど、ほんと良く笑うようになった。
なんか今の時間って幸せなんだろうな。
こんなのじゃダメなんだけどな……
うなぎさん出てるよ!いみしかトンビも出てるよ。そして次回は……
あまりネタバレもなんなので今回の後書きは次回予告を書きません。
読んで頂いて感謝します。




