エマージェンシーwww
フゥ
鬼の人達を自宅の方に誘導するために先頭を歩いているのだが、真後ろに居る1番体躯の良い鬼さんと話しづらいので、普段より高めに浮いている。
と言っても1mくらいの高さだが。
「これくらいの高さなら話しやすいですよね?と言ってもこれ以上高く浮けないんですけどね。」
と苦笑いしながら体躯の良い鬼さんに話し掛けるが、こっちを睨み付けるだけで返事が無い。
手に持っていた棍棒は、背中に装着してるようだ。どうやって付けているのか気になるから後で教えてもらおう。
背中に数本の矢がつき刺さったまんまだけど痛くないのかな?って俺も矢を抜き忘れてた、まあ痛くないから後で抜くかな。
でも棍棒って言っても良いのか?太い所で直径50cmくらいあるぞ、普通に丸太じゃん……
あんなので殴られて、あれくらいの傷で済むとか、この体ってチートだなぁ。
そんな事を考えながら、森の中の下草や草原の雑草達に。
「生き物が沢山通るから、いつもより広めに道を開けてね、踏み潰されないようにね。」
と指示を出すと、地面から根っこを引き抜いて別の場所に埋まってくれる。
その際に美味しい霧雨が欲しいですって言われたから明日の朝にでも気象操作で霧雨にでもしとこうかな。
ちなみに後ろでコソコソと会話している内容なんかは神の耳にしっかり捉えられていたりする、内容はこうだ。
「あれはなんなのだ、人間が空を歩く等と聞いた事が無いぞ。」
「頭に生えている触覚を見てみろ、あれは魔族じゃないのか?」
「魔族でも異常な再生力だったぞ、だいいち頭が潰れていたにも関わらず再生するなど魔族であっても有り得ない。それに魔族にしては、貧相だ。」
「災厄の獣ナインテイルを従えていた、災厄の獣の中でも特に厄介なキャットナインテイルだったぞ。あんなものを従えているんだ抵抗すればどうなることやら。」
「せめて子供達だけでも逃がさないと。あんた達、命を懸ける時が来たみたいだよ。全員死ぬ覚悟が出来てるかい?これだけ豊かな森なんだ、子供達だけでも生きて行けるだろうよ。だから心配しないで死んで行こうじゃないか。」
「植物を操作しているな、エルフなのか?エルフにしては不細工だが。」
「エルフじゃないだろう。耳も尖ってない、肌も日焼けして茶色だ。エルフなら透き通る白い肌のはずだ。それにあんなに不細工じゃない。」
「ダークエルフじゃないのか?だが、ダークエルフだったとしてもあんなに不細工じゃないな。」
「しかし我々の怪我を治してくれたな、死にかけていた俺までだ。あんな怪我を負えば神殿の大神官の神聖魔法でも治しきれるか分からんぞ。」
「しかしクロの背中の矢は、抜いてくれてないな。」
「自分の胸と左足の矢も抜いてないね、気にならないのか?」
「立派なナメッコの巨木だな、果実もたわわに実っている。こんな事が有り得るのか?」
「あのナメッコの巨木、エントだったぞ!しかもエントと会話していたように見えた。そして会話の後に大人しくなったぞ、魔物を従えている?従う物なのか?魔物だぞ?」
などなど色々コソコソと会話をしてくれてるが、聞こえてますからね!不細工って何回も言ったな!エルフと比べたらそりゃ不細工だろうよ、でもアジア人としては中の中くらいだ!
それに基本的に彫りの深い白人系の顔をしている魔族と比べたら貧相なのも分かってるけど、言わなくてもいいじゃんか!
それにしても許せないのが、ガンモを災厄の獣とか言ってる事だな!最長老の事なんかどうでもいい。
あんな癒しの塊のような可愛いガンモが災厄とか何考えてんだこの世界の住人は。そこだけは、訂正しとかないとな。
そう思い背中に矢が刺さったまんまのひときわ体躯の良い鬼さん、クロって呼ばれてたな。
「えーと、クロさんと呼んでもいいでしょうか?少し訂正しときたい事がありましてね。さっき現れた九本の尻尾をしている猫ですが、あれって神獣ですからね。けっして災厄の獣とかじゃ無いですよ。あなた方の怪我を治したのもあの子ですから、怖がらないで下さいね。」
そう言うと、後ろから着いてくる鬼の人達全員が黙ってしまった……
コソコソ会話している中に混じっているこの鬼さん達の情報を得ようとしていたのに、失敗したな……
草原に出る前に乗ってきた椅子を回収して、家の方に向かい鬼さん達を引き連れて空中を歩く。
家の屋根に突撃すずめが沢山止まっている。
鬼さん達の周りを囲むように、ネズミやキツネやタヌキなんかもこっちを見ているし、皆気になってるんだなと思った。
その中で、いみしかトンビが上空を旋回しながらエマージェンシーwwwエマージェンシーwwwと叫んでいる。くそ!あいつ!別に警戒なんてしなくても大丈夫なのに。よく見たらにやけながら叫んでやがる、絶対におちょくられてる!ぐぬぬ。
いざとなったら透過してタブレットを操作して消し炭に変えてしまうなり、どこか遠くに飛ばすなり、元の場所に戻すなり出来るんだからな!
そう考えていたら、鬼さん達がまたコソコソ会話をしだした。内容は、こうだ。
「あんな所に建物があるね、家とか言ってたけど掘っ建て小屋じゃないか?横にある三角の草の建物も家なのかねえ?」
「人間のサイズを考えたらあの大きさで十分なんだろう。しかしあの屋根に乗っている鳥をよく見てみろピアスバードじゃないだろうか?あんなに大量に発生しているなど聞いたことも無いぞ。」
「それだけじゃ無いぞ、既に我々は、囲まれている。気配を探っているがミスティフォックス、ブラインドラクーン、マーダーラット等が集団で草むらの中に隠れている。」
「上空を旋回しているのは、雷鳥じゃないのか。あんなのが襲ってきたら一瞬で全員黒焦げだぞ!」
「しかしなんで椅子を持ってるんだ?あれが武器なのか?」
「椅子を武器に使うなんて街の中の喧嘩じゃあるまいし、なんか意味があるんだろうよ。」
「こりゃあれだね、あの霧の中で私ら皆死んじゃったんじやないか?あの世ってやつなんだよここは。」
「ここがあの世なのか?言い伝えと全然違うぞ?こんなに長閑な場所なら死んでしまうのも悪くない事なのか?」
「長閑なって言うけど、周りを魔物に囲まれてるんだよ。いつ襲われるか分かったもんじゃない、やっぱりあの世なんだよ。」
基本的に攻撃的な意見、否定的な意見は、女の鬼さん達から出てくるな。まぁ子供を守るために警戒していると取ればダメな事じゃ無いな。
男衆なんかは、戦いに備えてそれぞれに警戒しているが。うちの子達は、そんなに野蛮じゃ無いですからね!
あと一生懸命作った家に対する評価が超絶に低い!掘っ建て小屋とか酷い……
ゴリゴリ精神力を削られながら、やっと家に辿り着いた時には、ガンモが缶詰を咥えて早く開けろと視線で訴えて来ている所だった。
一度に沢山キャラが出てくると書き分けが大変ですね。こんな時は三人称で書けば少しはわかりやすくなるのでしょうが、そうなると文書が長くなる……
まあ、こんな感じでいいかな?と思いながら書いて投稿します。
ここまで読んで貰えて感謝です。




