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おっさん家!  作者: サン助 箱スキー
2章 隣人が出来ました。
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ネズミ

聖域で人型生物に初遭遇


 霧の中を子供ですら一言の言葉も無く南に向かい進む集団の中から、脱落者が出ようかと言う時がついに来た。


「ここまでだ、少しでも時間を稼ぐ。少しでも長く。」


この部族の中では、比較的痩せ型で背も低い男が言うと。


「何を言う、部族一の拗ね者のお前が、自ら犠牲になるような馬鹿な事を申し出るなんて。明日は、空から麦の雨が降ろう。子供でも歩いているのだ、立て……立って歩け……」


集団の最後方を歩くひときわ体格の良い大男が、背に数本の矢が刺さったままで。腹の大きな傷から臓物がはみ出てこぼれ落ちないように手で抑えているが、その傷からとめどなく血を流し続けている。そんな男を鼓舞する、既に立てる状態じゃないのくらい分かっているのだが。


それでも幼い頃から拗ね者と罵られ部族の中でもはみ出し物と言われた男が、村に襲撃を仕掛けられた際に、棍棒を片手に真っ先に迎え撃ったのを知っている。

平和と調和を理念とする部族の中で、荒くれ、ガサツ、捻ね者とどんなに部族の者達から罵られようと、常に部族の事を考え人間の国を警戒し続けた男だからこそ出来た行動だと言うのを理解しているからこそ、置いていく事など出来ない……

出来ないのだが、それも無理だと分かっている……


「もう無理だ、目が殆ど見えんのだ。置いていってくれ。ここで1人でも多く共連れとしよう。甥の事は任せた……」


「任される訳が無いであろう、それはお前のやるべき事だ。まだ諦めるな……」


頼みを断った体躯の良い大男に棍棒を持った手で先頭の集団を指しながら。


「麦の雨か……降るなら争いも無くなるな……麦の雨を降らせる為にも置いて行け。もう何も言うな……」


後ろに向かい半眼に閉じた目で霧の中でも辺りを見渡すように警戒しながら先に進めと置いて行けと皮肉を言う……既に心は決まっているようだ。

しかし、その頃に先頭を歩く集団の1人が霧の終わりに辿り着いた。


「なんだここは、森の中なのか……馬鹿な……幻でも見ているのか。」


活火山地帯を歩いていた筈であるが、いつの間にか人の手が入った痕跡のある森の中に辿り着いていた。

後続が霧を抜けて来る。全ての者が同じように戸惑うだけだった。




 コオロギの触覚から伝わってくる感覚が。

大人が25人、子供が6人、そのうち数人が怪我をして血を流している、最後尾に居る2人のうち片方は瀕死の状態のようだ。


「うーん、これって話が通じる状態なんだろうか?」


呟いてみるも誰も答えを返さない、と思ったら。


「警戒した方が良いですよ。先頭の4人は、武器を持ってますから。」


と、下草の中から大きな野ねずみが答える。


「そっか……でも瀕死の人も居るみたいだし、助けると言えば、話くらい出来るよね?」


「どうでしょう?危険じゃありませんか?」


そう言う野ねずみに向かい。


「透過してなくても、元々死なない体だからね。何とかなるでしょ!相手が武器を持ってるって言うなら危ないから離れておいて。」


そう答えたら、野ねずみは下草の中を平野部の方に向かい走って行った、去り際に気を付けてと言いながら。心配してくれて少し嬉しかったりする。


「さて!聖域に入って来た外界の生き物との初遭遇イベントだな!ってイベント扱いしたらダメか。いちおう俺の星の一員なんだもんな。」


そう言って気合いを入れるのに軽く両頬を叩く。


その瞬間2本の矢が胸と左足につき刺さった。


あれ?って思う間もなくデカい何かが頭に振りかざされる。コオロギの触覚を付けているので、近付いたら気付くと油断していた。


デカい何かが棍棒だと気付いた時には、既に避けられる状態じゃ無くて、頭から棍棒がくい込んで来る。

そして、頭を潰し胸の中ほどまでくい込んだ棍棒を引き抜きつつ。


「こんな所にも人間が!先回りされたか!周りを警戒しろ!既に囲まれているかもしんぞ!」


そう叫んだ男は、緑の肌で人間の二倍を超えるほどの身長をしていて、頭に二本の角がある鬼だった。






読んでくださってありがとうございます。

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