エリザベート・フィリッピーヌ・ド・フランス
エリザベート様です。
転移する程の事も無いと思って、時間を遡ってから歩くニノ、足の調子を気にしているようだが、今の時間は夕方の5時、エリザベートがギロチンの刃に首を落とされる1時間程前である。
21世紀ではコンコルド広場と呼ばれる、当時は革命広場と呼ばれていた広場に集まる、処刑を見物する群衆を掻き分けて処刑台へと近づいて行く。
「くそっ!痛いし……辛いし……」
誰かとぶつかるたびに痛みが走る足や腕や背中、そんなものは関係無いと人を掻き分けるのだが……
「透ければいいのか……って……なんで?」
何故か透ける事の出来ない体に違和感を感じて、タブレットを開いてステータスを見てみる。
「嘘だろ……状態異常【呪い】ってなんだよ……」
アポロの弓から放たれた矢の効果で透ける事が出来ない。必死に群衆を掻き分けて、処刑台の元へ辿り着いた時は既に処刑直前、エリザベートが処刑台に縛り付けられる所だった。
「神力【時間停止】発動……良かった止まってる!」
大急ぎで処刑台に上がるニノ。エリザベートの周りだけ時間を動かしのだが……
「礼儀を守りなさい、ムッシュー!ショールを……」
「エリザベート様。しばしお静かに。縄を外しますので。」
処刑直前に突然掛けられた言葉に困惑して言葉が出ないエリザベート。
「その声は……」
「ええ。ニノです。もう少しです……くそっ……外れない……」
左手が思うように動かないせいで上手く縄を解く事が出来ないニノ。
「エリザベート様、手を握って使うと考えて頂けませんか?」
エリザベートの右手にスキルオーブを握らせてスキルを付与した。
「半分くらいに縮めと思って頂けませんか?」
懐かしい声に従うエリザベート、頭の中で縮めと考えたら身体が半分くらいに縮んでしまった。
「服が脱げないように首枷や縄から抜けて、元に戻れと考えて下さい。」
その通りにするエリザベートなのだが……
「ニノ……ショールを。未婚の女性に肩を晒させるつもりですか?」
目に涙を浮かべてニノを見ているエリザベート、ショールを手に取りエリザベートの肩に掛けるニノ。
「ねえ、ニノ。本当に貴方なの?周りの人達はどうなってるの?遅かったじゃない……」
そんなエリザベートの問に……
「色々説明したいのですが、そんなに力を使えないんです。大急ぎで準備しますので少し待って……」
答えようとしたニノだったが、突然……
ぶちゅーっとエリザベートの唇が自分の唇に襲いかかって来た。
「ぷはっ!あ〜もう!遅いっ!すごく遅いっ!来ないかもって心配したでしょ!マリーお義姉様から全て聞いて知ってるの、ずっと待ってたんだから!」
唖然とするニノ……
「昨日も女市民とか言われちゃってさ、知ってる?私って市民になっちゃったの。だから孤児の貴方に何を言っても許される立場よ。ニノ、抱き締めなさい!」
抱き締めろと言われてもエリザベートがニノの胸に埋まって背中に手を回しているのである。
「エリザベート様……なんと言えばいいのか……はしたないですよ?」
「あら?こんな時になってまで従者のつもり?ニノったら相変わらずめんどくさいわ。」
めんどくさいと言ってもう一度ニノの唇を奪うエリザベート。
「ホントに火傷の痕が無くなってるのね。でもニノったら若いまんまだわ!私は30越えてババアなのに……」
口の悪いエリザベートだが、素はこんなもんだったりする。普段は作っていたらしい。
「全然お若いじゃないです……ほうれい線が目立ちますね……」
その言葉に突然右足を上げるエリザベート、ニノの右足と左足の間に入っていた右足なので……
「ぐふぅ……エリザベートさま……」
直撃してしまった。
「ほうれい線は気にしてるの!ほらニノ、若返る奴を寄越しなさい。持ってるんでしょ?美肌になるアレもちょうだい胡桃だったかな、そんな感じのやつ。」
既に色々と知っているようだ。
「それで何処まで救出したのよ?後はお義姉様とお兄様だけ?」
もがきながらも、はいそうです、と答えたニノ。
「タンプル塔に幽閉されてる間に、貴方を殺した奴とか、貴方を虐めてた奴とかを謀略で沢山嬲ってやったわ。だからフランス国民は許してね。私が貴方の代わりに罰を与えたんだから良いでしょ?許せるでしょ?」
やっとの事で立ち上がったのだが……
「エリザベート……大好きだ。」
立ち上がって直ぐにエリザベートを抱き寄せて告白した。
「今更なのよ。ずっと待ってたんだからね。お兄様は情夫にしようとしても許してくれないし。市民に落ちるしか無かったわ。貴方を手に入れようとしたらね。」
軽く引いているニノなのだが……
「今はまだ色々あるんです。告白の答えはいずれまた。兎に角急いで下さい。私の体がもつか心配ですが、エリザベート様は若返れますし、肌も綺麗になりますから。」
インベントリからエリザベート型の料理を取り出すニノ……
「それは私が1番太ってた時の見た目でしょ!なんて物用意してんの!もっとマシな時のを要求します!」
ギロチンに料理をセットしようとしているのだが、なかなかセットさせてくれない。
「エリザベート様……本当に少しだけ待って……」
「エリザベートと呼びなさい。そしたら待ってあげるわ。」
顔を真っ赤にしながらエリザベートにそんな事を言われたニノ、こちらも顔が真っ赤である。
「エリザベート、少しだけ待ちなさい。」
ニコリと笑ってエリザベートは静かになった……
「ちょっと!でもホントに1番太ってる時のは止めてよ!恥ずかしいじゃない。」
料理を縄で縛り終えて、コピースキルで転写するまで、ニノに文句を言い続けるエリザベートであった。
何とか1話で終わった!
明日はマリー様と、ルイ16世……まで全部終わるかな?って感じです。
読んで貰えて感謝です。




